夕方の営業(常連客編、その29)
さてさて時計の針はもうすぐ17時に
なろうとしています。
台風の影響で雨風が少しずつ激しく
なっています
アコも広志も夕方の営業に
備えていたその時…
哲男【こんばんは~大将にアコさ~ん】
と毎度おなじみの一番乗りで
傘を折り畳んでから暖簾を
くぐって店のドアをガラガラと
開けて大きな声で
店に入っていく
和邦【こんばんは~】
洋之【こんばんは~】と続いて
入ってくる
アコ【いらっしゃい!嵐の日にまで…
まぁ話は聞いてたけど】と
少し呆れた表情をしている
3人一斉に【すいませんけど、
お願いしま~す】
アコ【お父さ~ん!日替わり3つと
揚げ出し豆腐お願い】と
声をかけている
広志【はいよ~ちなみに風呂は
入ったのか~】そう言って
調理に取りかかる
哲男【みんな銭湯言ってきましたよ~】
と言いながらいつもの指定席の
テーブルに座っていく
アコ【そのまま家に帰りなさいよ~
ケロヨンの桶を置いて
きたんでしょう~】と
話をしながら湯飲みに
お茶を入れてテーブルに
それぞれ置いていく
哲男【家に帰ってもスーパーも
早じまいしてますし、
開いている所はここしかない
じゃないっすか~
それに前にもお世話に
なりましたし、
いや~毎度ありがとう
ございます】と珍しく
立ち上がって挨拶をしている
洋之【ありがとうございます】
和邦【ありがとうございます】
アコ【お礼を言われるような事は
してないわよ】とぼやきながら
手を動かしている
広志【奥の部屋に布団あるからな~
泊まるならそこで寝るように】
矢野【こんにちは~】と強風から
逃れるように
傘を折り畳んでから
暖簾をくぐり抜けて店のドアを
ガラガラと開けて、店の中の
様子を伺っている
アコ【いらっしゃ~い、どうぞ~】
矢野【ありがとうございます】
広志【今日は一人かい、早くも
振られたか~】と
手を動かしながら
声をかけている
矢野【おかげ様で少しずつですけど
上手くいっています】と
ほっとした様子を見せている
アコ【事務所に戻らなくても…
と言ってもこの天気ならね】
広志【ちなみにこの面子は
今日はここに泊まり予定だよ
台風が来るから動けないしな】
アコ【ちなみに布団で良ければ
ありますよ】
矢野【万が一の時は宜しく
お願いします】
アコ【おかげ様で少しは
役に立ってるわね
はい、おしぼり】と渡している
哲男【ありがとうございます】
洋之【ありがとうございます】
和邦【ありがとうございます】
矢野【ありがとうございます】と
それぞれ受け取り
手を拭いたりしている
広志【アコ~、みんなの分
上がったよ】と
出来上がった料理を
盛り付けている
アコ【はい!よっこらしょ】と
おぼんを持ち上げて運ぶ
アコ【はい、おまちどおさま!
めしあがれ】とそれぞれの
テーブルに置いていく
哲男【本当に今日もありがとう
ございます】
洋之【ありがとうございます!
いただきます】と割り箸を
割って手を合わせて
哲男【いただきます】
洋之【いただきます】
和邦【いただきます】
矢野【いただきます】
哲男【今日の日替わりは】
アコ【今日はね
“中華丼”に“鶏の唐揚げ”に
“おからの酢の物”ね…
後は追加の揚げ出し豆腐】
広志【今日はご飯少し多めにして
あるからな~もうぼちぼち
新米が来るっていうから】
哲男【いや~新米っすか~】
洋之【哲男さん、
新米はこれからですよ】
となだめている
和邦【新米楽しみですね~】
矢野【舞菜と2人で稲刈り
行きたいな~】
アコ【ぼやいてないで
早く食べちゃいなさい、
冷めちゃうわよ】と諭される
各々一口ずつ食べ始めている
哲男【うまいっす。
やはり落ち着きますね~】
洋之【ここに来ると1日が終わる
感じですね~】
和邦【本当にそうですよね~】
矢野【何かお袋の味を思い出します】
と食べ進んでいる
哲男【矢野】
アコ【哲男さん】と小声で声をかけて
首を横にふる。
それはまるで詮索しないように
との事の合図でもある
広志【拓海…そういう話は今度に
しときな、未来の奥さんが
悲しむぞ~私にはこんな料理
なんて上手く出来ないってな】
広志【はいよ、揚げ出し豆腐
おまちどおさま】と各々の席に
置いていく
哲男【大将ありがとうございます
今日も名物にありつけました】
アコ【さて、これから夜食の残りを
仕上げなくちゃね】
さあ、嵐が近づいています。