ガチャッの向こうに行こう
わたしは、くるちゃん。
大好きなららお姉ちゃんと、ガチャッの向こうの知らない世界へ遊びに行ったんだけど、そこには、ズドドド、ドンかいじゅうのすみかがあって……。
わたしは、くるちゃん。
何でかって?
みんなが、くるちゃん、くるちゃんって、このお部屋で呼ぶから。
この広い、広いお部屋には、パパとママ、それに、ららお姉ちゃんがいるんだ。
みんな、やさしいんだよ。
このお部屋は、よじよじ登れて遊べるものもあるし、何をしても怒られないし、パパ達に言えば、おいしい食べ物をくれる。
でも、このお部屋には、ちょっと、怖いものがあるの。
ママがそれを持って、ガーって大きな音を出しながら、ゴロゴロってお部屋を転がすんだ。
何してるのかな?
わたしは、そいつに近づいて、ちょん、ちょん触ってみたけど、ガーって言わなかった。
どうしてなんだろう?
でもね、そいつとは違う形の奴は、もっと怖いの!
そいつは、寒くなると、この広いお部屋にやって来る……。
パパがピッて、そいつを触るとね、そいつは、ジーーって、変な音を出してから、ボッって大きな音を出して、わたしをびっくりさせるの。
とても、怖いな。
けど、そいつは、とても温かい風を出してくれる。
もしかして、悪い奴じゃないのかも!
そして、わたしは、そいつに近づいて、友達になった。
ジーーと、ボッは怖いけど、もう、ぬくぬく、すやすやおやすみなさいって、そいつの上でねんねするんだ。
だけど、こんなわたしのお部屋に、偶にかいじゅうが来るんだ!
「……、ズドドド、ドン! ヅドドド、ドン‼」
「あっ! あの音は、ズドドド、ドンかいじゅうだ‼ 逃げなきゃ‼」
「ガチャッ」
「見つからないように、そぉーっと、そぉーっと……。トトッ……」
わたしは、ズドドド、ドンかいじゅうに見つからないように隠れるんだけど、ズドドド、ドンかいじゅうは、すぐに、わたしを見つけちゃうの。
「くるちゃん、発見‼」
「やめれぇ!」
ズドドド、ドンかいじゅうは、すぐ、わたしをつかまえちゃうの。
あっちに行っちゃえ!
「ねえねえ、ららお姉ちゃん! ズドドド、ドンかいじゅうに、また捕まっちゃったよ!」
「ドジねぇ。わたしみたいに、上手く隠れなさいよ」
ららお姉ちゃんも、ズドドド、ドンかいじゅうから狙われるけど、するって、逃げれるんだ。
すごい!
わたしも、ららお姉ちゃんみたいになりたいな!
でも、ズドドド、ドンかいじゅうは、どこから来るんだろう?
あの、ガチャッ、っていう所からみたいなんだけど……。
あのガチャッって所の先って、どんな所なのかな?
「じぃーー」
「どうしたの? 見上げちゃって」
「ガチャッの向こうって、どんな所?」
「そうねぇ、わたしも見た事ないな」
わたしと、ららお姉ちゃんは、この広いお部屋の外に行った事がない。
ママから、このお部屋以外、行っちゃ駄目だって言われてるから。
「トントン……。ららお姉ちゃん、押しても開かないよ」
「そんなんで、開くわけないよ」
「確か、ママ達は、あの上にある棒を触ってたよね?」
「そうね、触ってた」
「でも、あんな高い所、とどかない」
「こうすれば、いいわ!」
ららお姉ちゃんは、ぴょんって、ジャンプした。
「ガチャッ!」
「ほら、開いたでしょ?」
「すごい、ららお姉ちゃん!」
そして、わたしは、そっと、ガチャッの向こうを覗いてみた。
「へぇ、ガチャッの向こうって、こんな所なんだ」
「そうね。何か、面白そう!」
「ママ達いないし……」
「くるちゃん、行ってみる?」
「ららお姉ちゃん、一緒に行こう!」
そして、わたし達は、ガチャッを通って、広いお部屋を出た。
まず、左に行くと、ガチャッがまたあった。
「ここも、ガッチャッ、あるね」
「そうだね」
「ららお姉ちゃん、また、ぴょんしてよ」
「いいよ」
ららお姉ちゃんは、ぴょんって、ジャンプした。
「ガリガリガリ……」
「ガチャッって、言わないね」
「そうね。棒じゃなくて、丸いから、開かないみたい」
「そっかぁ……。ガッカリ」
「他、行ってみよう」
「うん、行こう!」
わたし達は、ガチャッをあきらめて、その先に行ってみる事にした。
「ららお姉ちゃん、ここ、下りていいかな?」
「いいと思うけど、何か、寒そうだね」
わたしは下りてみた。
「冷たい!」
「わたしは、下りるの、やめとくね」
「でも、ららお姉ちゃん、見て、見て! 何か、いっぱい、あるよ! これ、何かな?」
「さあ、似てるのが、二つずつ、近くにあるけど……」
「こっちの暗い所にも、いっぱいあるみたい。ちょっと、探検してくる!」
「気を付けてね」
わたしは、するすると隙間を通って、暗いお部屋に入ってみた。
「暗いな……。でも、面白そう! さっきみたいのが、いっぱいある! あ、でも、行き止まりか……。つまんないから、帰ろっと!」
そして、わたしは、するすると暗いお部屋から戻って来た。
「ただいま、って、あれ? ららお姉ちゃん? どこ?」
ららお姉ちゃんは、いなくなっていた。
「どこ? ららお姉ちゃん?」
わたしは、きょろきょろ探したけど、ららお姉ちゃんはいなかった。
「どこに行ったのかな? 広いお部屋に帰ったのかな?」
広いお部屋にも、ららお姉ちゃんはいなかった。
「まさか、ズドドド、ドンかいじゅうに食べられちゃった⁉ 嫌だよ‼ ららお姉ちゃん‼」
わたしは、またガチャッの向こうに行ってみた。
すると、わたしの前には、見上げても上が全然見えない段がいっぱい重なっていた。
「もしかして、ズドドド、ドンかいじゅうは、この上にいるかも! ららお姉ちゃんを助けなきゃ‼」
わたしは、ららお姉ちゃんを助けに、その段を、駆けあがった。
「待ってって、ららお姉ちゃん。助けに行くから!」
段を、いっぱい駆けのぼると、くるっと、周れ左。
そこには、ちょっと歩くと、また段があったけど、今度は二つしかなかったから、ほいほい上ったよ。
そぉーっと、そぉーっと、足音をたてないように、ゆっくり歩いて、キョロキョロ、ららお姉ちゃんを探した。
「お部屋が三つあるんだ……。でも、一つは、丸いから、ガチャッ、出来ないな。まずは、このお部屋から探そう!」
わたしは、ほいほい上って、ガチャッしなくても入れた、すぐ右にあるお部屋に行ってみる事にした。
ズドドド、ドンかいじゅうに見つからないように、そぉーっと、そぉーっと、辺りを見ながら、ららお姉ちゃんを探した。
「ららお姉ちゃん、どこ? 助けに来たよ!」
わたしが、ららお姉ちゃんを呼ぶと、風がヒューって吹いて、大きな布がバーッてなると、ぽかぽかしていて、明るい所にららお姉ちゃんはいた。
「ららお姉ちゃん、どこに行ってたの? 心配したよ。ズドドド、ドンかいじゅうに食べられたかと思った‼」
「わたしが、そんなドジなわけないでしょ? くるちゃん、見てみて」
「えっ?」
ららお姉ちゃんに言われて、わたしはぽかぽかしている方を見た。
すると、そこには、広いお部屋から見れない世界が広がっていた。
お日さまは、ぴかぴか、ぽかぽか。
ちゅんちゅん、ぴーぴー鳴いてるコが、パタパタ飛んでる。
そして、広いお部屋じゃ、匂わない匂いがした。
「ららお姉ちゃん、きれいだね!」
「そうね。きれいね」
寒いけど、二人でくっついて、ぴかぴか、ぽかぽか見てたら、うとうと眠たくなっちゃった。
でも、ららお姉ちゃんと、すやすやしてたら、ドンドンドン、ズドドド、ドン、ズドドド、ドンって、あの音が近くで聞えたんだ。
「ららお姉ちゃん、あ、あれって、ズドドド、ドンかいじゅうの足音だ!」
「ズドドド、ドンかいじゅうのすみかが近くにあったんだね」
そして、広いお部屋の方から、ズドドド、ドンかいじゅうの声がした。
「あぁーーっ⁉ ドアが開いてる‼ くっちゃん、らら様、下りて来なさい‼」
「マズい、ズドドド、ドンかいじゅうにバレちゃった!」
「じゃあ、わたしはお先に! ピューッ!」
「あっ、ららお姉ちゃん、ずるい‼ ピューッ!」
広いお部屋に戻ると、ららお姉ちゃんは、上手く逃げたけど、やっぱり、ズドドド、ドンかいじゅうに、わたしは捕まっちゃった。
「これっ! 駄目でしょ? 二階に行っちゃ。猫様は、この部屋から出ちゃ、駄目なの‼」
ズドドド、ドンかいじゅうは何か言ってたけど、楽しかった。
ららお姉ちゃん、また、ガチャッの向こうに連れて行ってね。
我が家の悪戯猫達のお話でした! 今日も、彼女たちは、元気に遊んでいます! そして、ズドドド、ドンかいじゅうから、逃亡しております……。
この話に出てくる【くるちゃん】は、先代と、今の【くるちゃん】とを混ぜた主人公です。先代の存在が大きすぎて、耐えれなかった我が家に、幸せな世界を、またくれた【くるちゃん】と、その【くるちゃん】を、優しく、お母さんのように迎えてくれた【ららちゃん】とを見ていて、思いついたお話です。
ですが、プライドが高い【ららちゃん】を、おかあさんとは出来ず、【ららお姉ちゃん】にしてみました。
また、機会があれば、こういう話を掻いてみようと思っております。
最後に、読んでくださった方へ。共感出来る事等があれば、是非、感想を、よろしくお願いします。