釘打ち
最近、忙しいかわかりませんが、なんか投稿頻度下がりまくっていてゴメンナサイ。
一応、活動は頑張っていますよ……
戦場で倒れていたニアンはすぐさま駐屯地へと運ばれ治療された。
ニアンに治療を行ったバンドは、彼女と会話していることからヴァルクへ容態を報告した。
「ニアンさんは我々の方で処置を行い、大事には至りませんでした。それにしてもかなりの出血で、輸血をしたのでもう大丈夫なんですが彼女、あと数分でも遅れていたら死んでいました。あ、あと怪我の位置が急所に多いので、スタブさんが治療しましたがむやみに動くと傷が開いてしまうので一、二週間は戦えませんし、運動もだめですね。」
ここで言う「スタブ」というのはマクマイトの種である者の名前だ。
「……そうなのか。……結構ヤバいな。」
「はい、結構ヤバいです。彼女は戦場で結構いい働きをしていたので、今後押されないか心配ではありますが……」
「ま、何とかなるだろ。」
「えぇ……」
バンドはこの先の味方の状況を心配して放った言葉だが、ヴァルクの「そんなこと知らん」の意味を込めた「ま、何とかなるだろ。」の言葉に「結構ヤバい状況なのに……」と思いながら声を漏らすのだった。
◆
「ニアンが怪我した!?」
「嘘だろ!?」
フレアとアストがファウスの部隊に呼ばれ、合流し、周りが安全なのを確認して全員龍化を解除したときにニアンについて話され、二人はその言葉を大声で放った。
「うるさいうるさい。」
ファウスは耳を塞ぎ少し嫌そうに顔をしかめる。
『ウワァ……』
顔に生えているヒゲとしかめた時のシワ寄せのコンボにより少し……かなりキモく見えてしまった顔は部隊の皆に変な反応をされた。
「……ま、まぁともかく!俺が全員を呼び寄せたのはそれが起きたからだ。これからやるのは、自ら攻撃することじゃない。援護だ。」
『援護?』
部隊に入ったばかりの全員がはてなを浮かべファウスに聞く。
「俺たちの部隊は防御を専門とする部隊だ。何も自分たちだけを守るための隊じゃない。俺たちは今回の戦いでは結構戦ってるが元々そんな部隊じゃない。そもそも防御を専門にするってことは俺たちは援護向けの部隊なんだ。」
はてなを浮かべていた人たちは「なるほど!」と言うような顔に変化した。
「そして、今回俺たちが援護する部隊は完全攻撃特化の部隊だ。ニアンがいなくなったから本部が隠し玉的な意味で俺たちに護衛の命を送ってきた。そして、その部隊の名前はバレッド。部隊長はペイプ。種はストシュード。」
ストシュード。この種は龍の中では珍しい草食の龍だ。この種は攻撃手段が呑み込んだ石や岩を筋肉で押し込み高速で吐き出すというものであり、石や岩を吐き出すと尖った歯が欠けてしまうため、草食の龍特有の平らな葉へと進化したと考えられている。息球は基本連発ができない。フレアのような性質を持っている場合は例外だが、基本的に器官の冷却が必要となる。しかし、ストシュードは伸縮性のある「溜袋」と呼ばれる器官に大量に石や岩を溜め込み、機関銃のように連発することが出来る。しかし石や岩を溜め込む分、体が重くなるため、走ることも困難になり、せっかく持っている翼もただの飾りになってしまう。だから完全攻撃特化なのだ。
「で、俺たちがするのはバレッドの護衛、石と岩の運搬の二つをする。石と岩はあいつらなりのこだわりがあるから勝手に集めない方がいい。ま、早速始めるぞ。」
ファウスは遠くの人影に気付くと、手を振って部隊の方へと呼び寄せる。
「俺の名前はペイプ。ファウスから聞いてるだろうし、早くしないと押されるだろうから自己紹介はしないでおく。早速行くぞ。」
そう言ってペイプは龍化し、そこら辺の石や岩を呑み込む。石や岩が溜め込まれた溜袋はドングリを大量に頬張ったリスのように膨らみ、首元が驚くくらい膨らんでいる。
「まぁ、こんなもんか。よし、あっちに行くぞ。」
息球を吐く龍が息球を放つ際に話せないという特徴があるが、ストシュードは、声を出す器官と溜袋の位置が繋がっていないため、円滑にコミュニケーションを行うことが出来るのだ。
バレッドの部隊を守りながら進むディフェルグの部隊。しばらく進んでいると、敵が隙ありと思ったのか、多くの龍が突っ込んでくる。
「殺せえぇぇ!!」
「ウオオオオオ!!」
多くの龍が大声を出したり、大きく叫び向かってくる。フレアやアストといったこのような状況を初めて見る者は落ち着きがなく、慌てて構えているが、ディフェルグにずっといるような者らはいつも通りの動きでストシュードを守ることだけに専念し、ペイプたちも特に怯えることなく、狙いを定めている。
「全員、発射ぁ!!」
『パン!!!』
ペイプの掛け声と同時に、唾を思いっきり吐くような音が響く。その音に驚きとっさに目を閉じたフレアやアス達だったが、目を開いた時、目の前にいた敵は、全員が頭を大きく抉られ、その場に倒れ込んでいる。
「嘘だろ……」
その状況に唖然とし、目を大きく開く、フレアとアスト達だったが、ファウスとペイプに「先に進むぞ」と言われたため気を取り直し、戦場へと向かうのだった。
またしばらく進むと、今度は本格的に激しい戦闘が起きている場所の近くへと着いた。
「よし、じゃあファウス、護衛は頼んだぞ。」
「ああ、頼まれた。」
距離はだいたい五百メートル程。乱戦を避けるためとはいえ、いくら何でも離れすぎだと、フレアは思ったが、焦っていないあたり、いつもこんな感じなのだろうと考え、気にしないことにした。
「各自、誤射に気を付けて射てェ!!」
ペイプがそう叫べば、みんなが自由に石や岩を撃つ。フレアは少し気になったので、着弾地点の様子を見ていたが、どの射撃も、敵の頭だけを正確に撃ち抜いている。
「凄い……」
ペイプは自己紹介を省いたため、ここにいる者たちではバレッドと元々ディフェルグにいた者しか知らないことがある。個名だ。
ペイプの個名は「釘打ち」。一発撃てば相手が必ず死ぬ様から藁人形に釘を打ち込むことで呪いが相手にかかり死ぬような情景を思い、その意味を込めて名付けられた。ストシュードの射撃は実際、遠距離射撃に向いていない。石や岩の形で方向が変化してしまうからだ。
だがペイプは限りなく球体に近い石や岩を見つけ、それでも形による空気抵抗を考え、射撃の際も、首の筋肉から撃ちこむ石や岩の形を頭に描き、正確な射撃を可能とした。
またペイプは自身の行動を教えるのが上手く、彼らの部隊は、ペイプに教えられた技術を叩き込み、部隊全体が正確な射撃を可能としているのだ。
バレッドの部隊が溜め込んだ石や岩がなくなると探し始める。この時、護衛する必要があり、いつもこの状況で最も隙が多く、味方にとっては援護がなくなりもう一度劣勢を強いられたり、敵にとってはバレッドの部隊の壊滅を狙えるいいチャンスとなってしまう。だが今回は違う。
「これでいいか?」
そう、アストがいるからだ。アストがいるなら地面を掘りだし、石や岩を大量に出せば遠くまで探し回る必要がない。
「いいじゃねぇか。アースダイバー!もっとくれ!!なぁ、ファウス!!こいつ俺らの部隊に入れてくれねぇか!?」
「まだこいつは新入りだから、もう少し待ってやれ。名前だけは教えておく。アストだ。ま、部隊に入れられるかはお前の腕次第だがな。」
「つれねぇなぁ。お前が頑張って入れるように促せばいいだろ。」
「やらねぇよ。というか早く溜めろよ。」
「おっとスマンスマン。」
ファウスとペイプが話している間に状況が少し悪くなってきている。
『撃てえ!!!』
上空から敵の声と共に大量の息球が飛んでくる。
「おっとマズい!」
何とか攻撃を守ることはできたが、大量に出しておいた石や岩が飛び散る。
「アスト!!もっと大量に出してくれ!!そして息球を撃てる者は、迎撃を頼む!!」
『分かった!!』
アストは繰り返し地面に潜り、石や岩を大量に出していく。
息球を撃てる者は迎撃を行い、フレアはその者たちよりも大きな息球を撃ち込むため、準備する。
しかし、状況が整っているのを見られたのか、はたまた直感によるものなのか、迫ってきた敵は一度帰ってしまった。
「ホウ!!ヘッカフヒュンビヒハホヒ!!」
フレアは愚痴を漏らし、頑張って空を飛ぶ。だがフレイミアの特徴的に、飛行能力が低く、少し時間がかかってしまった。
「ウラァ!!」
フレアが叫ぶと同時に、バレッドの遠距離攻撃が主力となっていたはずの状況が、ただの牽制として思われるほどに強力な息球が敵を捉える。
息球を喰らうことで聞こえる叫び声は言うはずの者が一瞬にして灰となり響かず、ただ恐怖で逃げ出す者の声だけが響く。
「なぁ、ファウス、あのフレイミアは誰だ?」
「あいつはフレアだが……どうした?」
「スカウトしたい。」
「……頑張れ。」
「……」
ペイプはフレアの力に魅入られつつも、何か自分の誇りが欠けたような気がしたのだった。
ペイプの部隊名である「バレッド」ですが、英語で「弾」を意味する「バレット」と、ストシュードの語尾の「ド」を使っています。決して私が英語をミスったということではありませんので……ね?
(本当は結構怪しかったけど翻訳してホッとした。)