死の案内人
めっちゃ投稿遅れました。ゴメンナサイ。
先週と今週なんだかんだで忙しくって(ゲームではない)今週の土日もちょっと投稿できるか怪しいです。
ニアンは死んでいった仲間の事から周囲を警戒しつつ突撃を繰り返すようにした。
だが周りには誰もいないし、そもそも自分の速度に追いつける龍は自分と同じ「リジェント」くらいだろう。それでもニアンは疑問に思う点がある。
一つはリジェントは飛ぶときにかなり大きな音が鳴るため追いかけているのは本当にリジェントなのか
一つは味方が殺されたとき、ほぼ何も音がしなかったということ
ニアンは待ち伏せの可能性もあると考え、無理に動き回って逃げるような動きをして待ち伏せに合わないよう突撃する時以外はゆっくり飛ぶようにした。
そこでニアンが気付いたことが一つ。それは味方の状況も分かるということだ。
「あ!!」
ニアンは敵を殲滅するという意思にばかり気を取られ、味方の状況を見ておらず、敵の多いところにばかり突撃していた。だが、ゆっくり飛ぶことで味方のピンチにも気づくことが出来たのだ。
だが状況は乱戦状態。単なる突撃では味方も巻き込んでしまう。
「仕方ない……一回降りて援護しないと!」
ニアンは地面に着地できる速度の限界まで移動し、速めに駆けつける。
ここでニアンが乱戦状態でする行動は何か。
いつも通りの突撃ではない。翼を剣のように扱うのだ。それも排気嚢から空気を噴出することで威力をより大きくする。
「フッ!!」
突撃程の威力が出ないため敵が切断されるとまではいかないが、それでも充分だ。味方が残りを処理してくれるのだから。
味方と敵の数が五分五分なこともあってか、あまり時間をかけずにその場の敵を殲滅することに成功した。
「ありがとうございます!!」
「頑張ってください!!」
「ああ、頑張るよ。」
助けられた味方はお礼の言葉を述べた後、戦地へと駆けていく――――
はずだった。
戦地へと駆けていく味方は先ほど彼女を庇った味方のように血を吹き出しながら倒れていく。それも地上に止まっていて味方の傷がよく見える。確実に急所を狙われているのだ。
ニアンは逃げるにも先ほどのように待ち伏せの可能性も考え、うかつに動くことが出来ない。
「コオオオオアアア!!!!」
甲高い、鳥のような声を上げた龍の姿はニアンの見上げた斜め上にいた。
その姿は鳥のように羽毛に覆われている。
どうしてこの龍から羽音が聞こえないのか。
フクロウの羽音が聞こえないのはなぜか。それは羽にギザギザの構造があることで空気を拡散し、静かに飛ぶことが出来る。そして体重に対して翼の占める面積が大きいため、翼面荷重が小さい。一般的な龍は胴体や翼部分に鱗が大量にあるため、体重が重く、音が鳴りやすい。だがこの龍は鱗を捨て、代わりに羽毛を得ることで体重を軽くし、静かに飛ぶことが出来るのだ。
「ウラアッ!!」
ニアンは鳥のような龍に向かって思いっきり突撃した。そもそもこの龍を取り逃してしまえば、自分に危険が及びやすくなるし、奇襲の危険性も高くなる。例え彼女が飛行能力で上回っていて逃げられたとしても、後々面倒ごととなってしまうだけなのだ。
だが、突撃程度で簡単に倒せる敵ではなかったようだ。
龍は猛禽類の鉤爪のように鋭くなっている足をニアンに向け伸ばし、自らも突撃することで攻撃を与える。
お互い大したダメージにはならず、すれ違う。
「ふーん。普通のリジェントとは違うね。あんた何者?」
「そっちこそ、何者なのよ?」
「戦場では名前を言うのは私が認めた相手じゃなきゃね。種類だけ言っておくわ。「バロウル」。新血種よ。一応個名もあるから言っておくわ。「死の案内人」どう?怖気づいた?」
「私だって個名くらい持ってるわ。「流星群」。種類は分かってるっぽいし、これ以上言わないわ。」
お互いが一歩も譲らない自己紹介。それだけ戦場では個名の存在が大きいため、自分の個名は誰もかれもが主張するものなのだ。
「私、あなたの戦い方を見て思ったのよ。細かい動きは苦手なんじゃないかって。」
すると鳥のような龍は完全龍化から第一龍化へと、体を小さくした。
「このまま戦ったら格好の的になるだけだからね。私の戦術に付き合ってもらうよ。」
そう言い放ち、近くの森へと身を隠す。
この場所は戦地の中では端の方にある。その近くに森があり、そこへとニアンを誘い込む。
「別に細かい動きくらいなら!!」
ニアンは突撃の際に最高速度で動くため、急な方向転換ができないだけなのだ。
ニアンは挑発にまんまと乗り森へと入っていくのだった。
森は薄暗く、飛ぶにはそこまで支障が出ないくらいの巨木が並んでいる。
「流石にすぐ攻撃してくるわけないか。」
ニアンは森に入ってすぐのまだ明るい場所では来ないだろうと少し警戒を緩めながら進んでいく。
しばらく進んでいくと、入り始めた頃よりも木が生い茂り、木漏れ日すらも許さないほど暗くなる。
周囲を警戒し始めたニアンは少しだけ木が揺れた方向に気づく。
そちらの方を見ると突然、急所に向かって先ほどの鳥のような龍が飛んでくる。
間一髪で避けたため一撃死は避けたが、首元に掠ってしまい血が溢れ出す。
「ウッ!!」
ニアンは痛みにより目を閉じてしまったが、即座に左の翼から空気を放出し反撃を試みる。
しかし敵の攻撃はかなりの速度で行われていたため、反撃は羽を少しむしる程度だった。
ニアンは出血が止まらないことによる焦りが大きくなる。ここで死ぬのではないのかという恐怖と共に。
そのため警戒心が少し薄れていることに本人は気づいていない。
「今だな。」
ニアンに聞こえないように漏れた声はニアンが大きな衝撃を食らう前に聞こえた声だった。
「ガハァッ!!」
警戒心が緩くなったことによる背中への一撃。
龍は翼を動かす時、背中の筋肉を多く動かす。つまり背中への一撃は当たりどころが悪ければ飛行が不可能になる。
「終わったな。」
バロウルはニアンの前へと姿を見せる。
「さ〜て、お前は飛ぶ手段を失った。逃げられないんだよ。さて、お前はどういうふうに死にたい?体の一部を少しずつ抉られていくか?それとも体を滅多刺しにされるか?ゆっくり選べ。お前が死ぬことに変わりねぇんだからな!」
「……だだ。」
「あぁ!?」
バロウルはニアンの力のない言葉を聞き取れなかった。
「まだだ。確かに背中をやられれば飛べない。でもそれは羽ばたくことに対して背中の筋肉を使うから飛べなくなるだけ。私には立派な器官があるんだよ。」
「まさか!!」
バロウルは龍に関する基本的な知識なら持っている。だが、リジェントが器官を用いての高速飛行という知識までは持っていなかったようだ。
「オオオラアアアアア!!!!」
ニアンは器官から空気を一気に放出しバロウル目がけて突進する。
器官だけの飛行があまり慣れていないのか、うまく方向転換できず、木に引っ掛かりながらも少しずつ上へと上がっていく。そうして木の上に上がりきることで、森を上から抜ける。
器官からの空気の放出は息を吐いて肺の中の空気が出なくなるのと同じように、限界がある。その限界でニアンは速度を失い、バロウルを遠くまで飛ばすことができなかったが、それでも充分な距離を稼いだ。
器官からの空気の放出ができなくなり、一度地へと落ちていく。
「ハァ……ハァ……早く、戻って…治療してもらわなきゃ……」
ニアンは吸気嚢から空気を吸い込み、排気嚢からもう一度空気を放出し、誰か味方のいるところまで一度撤退する。
その時、音は小さくも音のない森の中で響く微かな羽ばたく音が聞こえる。
「まさか……援軍?」
ニアンは最悪の可能性を考慮しつつ、今来る対象は何か、警戒する。
そこへ飛んできたのはさっき飛ばしたはずのバロウルだった。
「ウッ……ゲホッゲホッ!……ハァ、してやられたよ。見ての通り、ボロボロさ。多分、肋骨が折れちゃったかな?ゲホッ!!……まぁなんにせよ、今ここで戦う気はない。相打ちになるかもだしね。あ、そうそう私の名前を言うつもりはまだないから。次会えたらその時ね。」
バロウルはニアンの一撃でかなりの怪我を負ったのか、本来聞こえないはずも羽音も聞こえるほど羽もボロボロに、会話するのも少し辛そうなケガを負っている。バロウルは龍化を完全なものにし、その場を立ち去る。
そしてそこに聞こえるのは、バロウルの微かな羽ばたく音と、戦闘の終わりを感じさせるような強くも穏やかな風が吹き、木々を揺らす。
「勝った……いや、引き分けかな。まあ、どちらにせよ、一旦戻らないと。」
ニアンは出血は止まっているものの、それでも失った血の量は意外に多い。今だって少し体がクラクラし、龍化を完全なものにし、飛行するにも安定しない飛び方になっている。
ニアンは空中で空気を放出し、足りなくなったら、少し残した空気を地面に放出しある程度浮遊しながら空気を溜め、放出を繰り返す。
限界にも近かったのか、味方に見つかる時、彼女は気を失っていた。
これ書いたのが火曜日頃からなんですけど、時間がなくって木曜日になりました。
ちなみにこれ書き終わったのは投稿の一時間くらい前(´・ω・)