見え始める陰謀
やっと五万文字超えました。
わーい。
交流会を終え訓練所へと戻ってきたヴァルクとニアンは日が沈んでいたこともあって、すぐにそれぞれの部屋で寝て朝を迎えていったのだった。
翌朝、ヴァルクたち四人はまた警備に行くのだが、アストがやる気がなく、現場に行くにも彼の大きくて重い体型を3人がかりで引きずって連れていくしかなかった。
「あー!もうやりたくない!!」
現場についても愚痴ばかり。流石にずっとこの場に縛るのもあれなので、アストだけ雇用を取りやめにしようか悩んでいたその時、
「キャアアアア!!!」
叫び声が聞こえる。アストはやっとやることが出来たと少し楽しげに走り出す。他の三人は周囲を警戒しながら慎重に進んでいるというのに。
叫び声がした方向ではヴァルクが前見たような周囲の人が巻き込まれている光景はなく、近くにいた人が龍の攻撃をなんとか防いでいるといった感じ。ただ、その近くの人は武器もなく、自身の鱗だけで攻撃を受けているので出血こそ多くないものの、かなりボロボロになっている。
「大丈夫か!?」
真っ先に飛び込んだアストが、第一龍化を行い、持ち前の体の大きさでタックルする。
「ありがとう」
「ここからは、俺たちで対処します。あなたは簡易的な治療をして安静にしていてください。」
「ニアン!とりあえず前みたいに人呼んで来い!!」
「ハァ!?また私はお役御免ってこと!?」
「だってすぐ人に伝えられんのお前くらいだろ!」
「はいはい、分かったよ……」
ニアンはめんどくさそうに空を飛び、人を探しに行くのだった。
「ハァ……大丈夫かな……まあいい。アスト、フレア、なるべく傷つけないように制圧しろ!」
「分かったよ!」
アストは先ほどと同じ、第一龍化のまま、フレアは外見は人型のままで変わっていないものの、息球を撃てるように喉の部分だけ龍化しているようだ。
「ハァッ!!」
フレアは息球を何発も撃つ。
ヴァルクは初陣でのフレアが何発も息球を撃つ光景を見ていないので、かなり驚いている。
息球を何発も撃ち牽制しているが、これだけ執拗に攻撃されれば龍の標的はフレアへと向くのはほぼ必然と言っていいだろう。
しかしそれを止めるのがアスト。攻撃の対象がフレアに向けばすぐさまタックルをしたり、抑え込んだりして攻撃の標的を強制的に変更させる。タンクのような役割をこなし、遠距離攻撃の援護をするのだ。
アストはフレアの大量に撃たれる息球と龍の行動を二つ同時に確認してそれらを避けるなり、攻撃するなりして的確に対処していくのだ。
完璧なコンビネーション。それを実現させられるほどの長い期間、アストとフレアは過ごしているのだ。
龍はそれに対抗しようと息球を撃って対抗するが、そもそもの威力が違うので意味を成さない。間もないうちに龍は取り押さえられるのであった。
「そういえば、ニアンはどこ行ったんだ?」
そうつぶやくヴァルク。その時、上空をリジェント二匹が高速で通り抜けていくのだった。
「待ちやがれ!!」
そのうちの一匹の声はニアンだった。
◆
遡ること数分前、ニアンは空を飛び人の多い警備員がいるであろう所へ向かっていた。
だが飛び始めた時、逆鱗病の発症者がいるところから一人だけ逃げている人がいた。
周囲には人がそもそもいない。発症者の周りに人が数人かいたのは、そこに店が一軒あったからであって逃げている人がいるのは路地裏。住宅街に近いがここを通るのはせいぜい盗人くらいだと思えるほど暗く、扉すらもない。
ニアンはヒアラの言っていた「意図的に発症させられている」という言葉と雇用の際に犯罪者を突き止めるという意味でやっているため、一応聞き込みを行うことにしたのだ。
「すみません、とても焦っていますが、どうかしたんですか?」
「ッ!!」
遠くからはそれほどよく見えなかったが、男のようだ。ニアンは男の背後から声をかける。男からしたら人のいないところに突然人が現れたのだから驚くのも無理はないのだろう。
「いや、さっき逆鱗病の発症者がいたもんで、焦って逃げていたんですよ。」
「ふぅん?でも上空から見た時あなたみたいに逃げている人なんていませんでしたよ?みんな男性に助けられていましたよ。というか、なんで逆鱗病って分かったんですか?」
「ハハ、だって突然龍化すれば、逆鱗がある龍なんてそれくらいしかいないじゃないですか。」
「まぁ、確かにね。そういえばだけど、どのくらい前から逃げてるの?」
「三分ほど前からですかね。何せ必死だったので。」
「そうかい。じゃあ、ちょっとそのかばんの中身見せてくれないかな?」
「な、何でですか!?」
男は突然鞄を見せろと言われ驚く。それでもニアンは一歩も引くことなく言葉が続く。
「逆鱗病が発症すればみんな驚いて叫んで逃げるかもしれないが、その叫び声が聞こえたのはついさっきなんだが、三分はちょっと長すぎるから怪しいと思ってな。間違いだったらそのときは謝るだけだ。だから見せてくれ。」
「こ、この中には大事なものが入っているんだ!」
そう男が話し、一歩後ずさりしたとき、鞄から一枚の鱗が出てくる。
ニアンが拾い、男に質問する。
「なんだこれ?」
「う、鱗ですよ!私の鱗です!」
「大事なものか?これ。」
「はい!私のお守りです。」
男はニアンの質問に何か思ったのか、突然キッパリと答え始める。
「そうか、じゃあ、大事なものはなくなったな。見せてくれよ」
「ほ、他にも大事なものがあるんですよ!」
そういってまた後ずさりする。するともう一枚鱗が落ちる。
「これもお前の鱗か?」
「そうですよ。体の様々な部位の鱗を集めてるんですよ。」
「な~るほどね。そうだ、お前の龍の種類は?」
「リジェントですよ。」
そう言った途端、ニアンは鱗を目を凝らして再度見る。
「そんなに欲しいなら、あげますよ!では、私はこれで……」
「オイ、待ちやがれ。」
突如ニアンの声色が変わる。
「この鱗、なんでギザギザしてるんだ?」
「だから、リジェントの部位でして……」
「そうだ言い忘れた。私もリジェントなんだよ。そして私の体の事ならほぼ全て知っている。何なら図鑑も見ている。リジェントの鱗はこんな形じゃねぇ。こんな形じゃ、空気抵抗なんてなくせねぇんだよ!」
そういってニアンは鱗を叩きつけ、割る。
「ちょっと強引になるが、鞄、見せてもらおうじゃねぇか。」
ニアンは男を脅し、鞄の中身を見る。これでもしいたって普通な一般人なら、ニアンはこの後犯罪者としてあの世行きになっているだろう。ただ、ニアンは自分に関することだと熱くなってしまい、嘘と分かった途端に暴れだす少し変な性格があるのだ。
ニアンは鞄の中身を確認する。
「やっぱりか。」
そう言ったニアンの目線の先には、鞄に詰まった大量の鱗。どれも形、色、全てが違う。
「テメェ、やったんだろ?」
「チッ!!」
男はそう言うと龍化し、全速力で逃げる。
「待てや!」
ニアンは鞄を持って男を追う。こうしてヴァルクのいるところを通るのだった。
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