雇用
今回、結構短めになっています。会話が多くて話の展開を長引かせにくいのと、お話の繋ぎみたいな感じなので、短めになりました。
ヴァルクがニアンと訓練所へ帰った頃、外へアストとフレアが出迎えに来たのだった。
「二人とも大丈夫か!?」
「逆鱗病の人となんかあったって聞いたけど……」
「ああ、問題ない。ただ詳しいことを話したいから、続きは俺の部屋でもいいか?」
「?どうしたんだ突然。」
アストとフレアはヴァルクの話そうとしていることに疑問を抱きつつも、ヴァルクの部屋へと行った。
ヴァルクの部屋はベッドに勉強机、クローゼットに本棚と必要最低限の家具しかなかった。ただ、本棚にある本は、漫画ではなく、龍としての種や‘‘個‘‘に関する本ばかりだった。
例として挙げるのなら、「新血種・変血種となった人への家庭との関わり方」や「己の‘‘個‘‘を示す三の方法」とあるが、よく見るとすべての本は、付箋が大量に張られ、ボロボロになるまで読み返されているほどふにゃふにゃになっている。だが、誰もそこまで使い古された本を気にしていない。
「なんかお前の部屋って整頓されてて、落ち着かねぇ空間だな~」
「アストの部屋が汚いだけだろ。」
「そうか?俺結構掃除してるけど。」
「お前服が散らばってるあの状態を掃除したっていうのか!?」
「ん?そうだけど」
「後で掃除するか……ま、とりあえず、俺の話したいことを話す。それと、この話は誰にも言うな。」
「何だ何だ~?」
「早く早く~!」
「お前ら、働かねぇか?」
「「……は?」」
「いやだから……」
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待」
アストが呪文を唱えるようにずっと「待て」を繰り返し唱えていたが、ヴァルクはそのまま話を続け、アストの声を遮る。
「まず俺が対峙した逆鱗病の発症者は、逆鱗の形が今までと違い、桜型で、鱗よりも大きい。」
「それは単なる逆鱗病の変異種とかじゃないの?」
「いや今までは割れたり、欠けたりしている逆鱗が変異種として取り扱われてきたけど、今回の件も含めて、どの逆鱗も、発症者の鱗の性質と一致しない。」
「……それってつまり、人為的なものってこと!?」
「さすがフレア。この話聞いただけでも分かるんだな。」
「ゥ……ま、まあね!!このくらい、分かって当然よ!!」
「その癖を治してくれればもっといいんだがな。」
「ゥゥ……」
褒められて調子に乗ったフレアはヴァルクからキツめの一言を喰らったせいで涙目になっている。
「それでその人為的という可能性から犯人がいるかもしれないのと、事件防止のために、働いてくれないか。ということだ。」
「お金も入るし、戦争でしか稼げない私たちにとっては都合いいんじゃない?」
「ニアンは金がないだけだろ」
そうアストが笑いながら答える。ニアンはアストを無言で睨むが、アストは笑って挑発する。
「で、ここからは俺の提案なんだが、それぞれで働いて、自分の戦い方に幅を持たせることを視野に入れてほしい。」
「「「どうして?」」」
三人が質問すると、ヴァルクが理由を述べる。
「はっきり言ってお前らは街中での戦闘は不向きだ。高威力の息球、地中からの攻撃、空中からの攻撃。どれも街に被害が出る。だから被害を出さない範囲での力の微調整やら戦闘法の工夫やらを試してほしい。そしてそこから自分自身の‘‘個‘‘に繋がる部分を見つけてほしいんだ。」
「なるほどねぇ~」
「ありかもね。私は息球の威力の調整しないと、戦争で味方も巻き込んじゃうからね。」
「私も前の時、接近戦でギリギリの戦いだったからなぁ~。」
「じゃあ、お前ら全員、参加する方針でいいか?」
「「「おっけー!!」」」
◆
後日、ヴァルクはニアンの怪我の状態の確認のついでに、先日話した逆鱗病の雇用についてヒアラと直接話し合うことにしたのだ。
「とりあえず、ニアンさんが完治して何よりです。それで、先日の逆鱗病の件ですが……」
「ああ、俺含めて四人で働かせてもらうよ。」
「友達も連れて来てくださったのですか。ありがとうございます。では、こちらの契約書にサインを……」
ヴァルクはヒアラに渡されたペンでヴァルク、ニアン、アスト、フレアの名前を書く。
「書き終わりました。」
「はい、確かにお預かりしました。それでは、今回の雇用について、詳細を説明します。」
「んあ?パトロールと発症者の身柄確保だけじゃないのか?」
「ええ、パトロールと身柄確保だけですが、そこの細かい内容についてです。パトロールは基本的に街の裏通りを中心にやってもらいます。個名持ちが街のど真ん中でやったらみんな大騒ぎになりますから。そして身柄確保は出来るだけ迅速にできるよう、パトロール中は常に通信機を持っていてもらいます。もう少し詳しいところまでいくとかなり時間がかかりますし、現場で説明すれば何とかなるほどなので、とりあえずここで説明は終わります。それで、パトロールする日程なんですが……」
「何か問題でもあるのか?」
「いえ、確か、ルイファ様が一部の個名持ちの方々を呼び何かすると聞いていた日がありまして、あなた方は大丈夫なのかと……」
そういってカレンダーを指差す。
「?……あ」
「あ、本当だ。確かにそんなこと言われてたな。」
「じゃあ、その日はアストとフレアだけがやるということで……」
「分かりました。ある程度の日程を手紙に書いて送るので、何か用事などがあれば、私に連絡ください。」
「はい。ではまた今度。」
そうしてヴァルクら四人は雇用されることとなったのだ。
活動報告に書いたことなんですが、私のやる気次第では、別作品と交互に投稿するだけじゃなく同時に投稿する形になるかもしれません。
私のやる気次第ですが。
これは追加で書くことですが、今日は別作品と同時投稿の形になります。是非見てみてください。