逆鱗病
昨日書いていないのは、気のせいです。幻覚なんですよきっと。(´・3・)~♪
「ガアアアアアッ!!!!」
唾をまき散らしながら叫ぶ龍。ヴァルクたちに気付いたのか、走って向かってくる。
「エレク、ダメだ!!」
エレクは戦闘ができると思い込み、全力で戦おうとする。しかし彼の全力は殺すまで終わらない。エレクを止めるため、フラスとホロムは手が動かせない。そして、ニアンは療養中。戦うことすらできない。
「すまないヴァルク!!あの龍を止めてくれないか!」
「分かってる!!」
そう言って龍化したヴァルクは両手で龍の動きを止める。ただし、龍化は完全なものではなく、第一龍化だ。
「ニアンは、近くの警備員と、救急隊を呼んでくれないか?」
「分かったよ!!」
ニアンは車いすの車輪を手で精一杯動かし、人通りの多いところへと行く。
「グルルラアアアァ!!」
龍は精一杯ヴァルクの腕を振り払い、一歩下がる。息球を二発一気に撃ち込み、ヴァルクに攻撃する。
「どうして突然暴れるんだ!?大人しく龍化を解除しろ!!」
「グウウウウゥアアアアッッ!!」
ヴァルクの言葉を聞く隙もなく、もう一度攻撃してくる。
「ウゥ……ママ……どうして……」
フラスの近くにいた怪我で倒れていた子供が起き上がり、涙を流しながら小声で話す。
「まさか……」
フラスは子供の声を聞き取り、ヴァルクに向かって叫ぶ。
「ヴァルク!!恐らくその龍はこの子の親だ!!あとこれは私の予想だが、‘‘逆鱗病‘‘なんじゃないか!?」
「ッまさか!?逆鱗病は原因を壊滅できる薬が出来ていて予防できるから、最近じゃ発症者は少ないんじゃ!?」
「少ないだけだ!!逆鱗病は薬が出来ていても、種類があるし、変異種だってある!!実際は完全に防げるわけじゃないぞ!!」
逆鱗病。この大陸で生きている者たちにとっては身近な病気。だが最近、抗体が出来たことにより発症者は激減。もともとはストレスにより体に負荷がかかることや、怒りが原因で逆鱗に触れるが如く理性を失い、暴れまわる病。ただここ数十年ではストレスのみならず、アレルギー反応や悲しみ、喜びなどの特定の感情でも発症する人が増え、逆鱗病の発症する平均年齢が六十代から四十代に下がるなど変化の激しい病であった。もともとは発生者ごとに感情やアレルギー反応を抑える薬を処方し、対策していたが、最近になって原因を断てる薬・予防薬が開発され、発症者が激減。しかしそれでも薬を買えない者や薬に耐性を持つ病原菌が出てくるため完全になくすことはできないのだ。
「じゃあ、抑える方向でいくが、第一龍化じゃ抑えきるもんも抑えれねぇぞ!?」
「そこは頑張れ!!私たちはヴァルクみたいなそういうパワー系の種じゃない!!ましてやエレクで援護すらできない!!」
「僕に……!!戦わせ……ろッ!!」
フラスとホロムは頑張って押さえても、それでも動き続ける。フラスの言うとおり、援護なんてしたら、逃げられ、子供の母親と思われる龍を殺してしまうだろう。
そう迷っていた時、龍が突然、空へ飛び始めた。
「俺たちの意図をくみ取って動いてくれたかは分かんねぇけど、あそこなら俺も満足に動ける!」
そう言ってヴァルクは空高く跳び、龍化を完全なものにした。
「ガアアアッ!!!」
龍は息球を数発撃ちこむが、完全に龍化したヴァルクにとっては有効打になりえない。
「もしかしたら怪我するかもだけど、最善を尽くすから、我慢してくれ。」
そう言ったヴァルクは龍の背後に回り、翼を掴み移動手段を封じ、残った翼を使い、降下する。
幸いにも、降り立つ場所に十分なスペースと、龍が暴れなかったことで、怪我するようなことはなかった。
ヴァルクは逆鱗病発症者特有の胸元にある病気の名前通りの逆鱗を探す。
「あった!……でも、なんか変だぞ?」
「どうしたんだ?」
「いや、逆鱗の形が普通は龍の体の鱗の形に沿って形成されるはずだけど、形が全然違うというか……」
ヴァルクが指さした逆鱗の形はその龍の笹のような形の鱗とは違い、先が二つに分かれ、桜の花びらのような形をしているのだ。
「あ!いたいた!」
しばらく逆鱗の形について考えていると、ニアンが警備員に車いすを押されながら救急隊と共に向かってくる姿が見えた。
「患者の容態はどうですか?」
「逆鱗病なんですが、その、逆鱗の形が変で……」
そう言いながらヴァルクが指した方向を見た救急隊は唖然とする。
「見たことない形だ……今までも変な形はあったが、鱗が欠けたり割れたりしていて全部不完全な形の逆鱗だった。でも今回はほら、普通の鱗よりも明らかに大きい。」
救急隊が言った通り、逆鱗は周りの鱗より大きい。
「とにかく、今は救助が最優先だ。君たちも、詳しい状況を聞かせてもらうから、ついて来てくれないか?」
救急隊は龍に注射を打つ。麻酔なのか、龍は先程よりも大人しくなり、龍化も解除される。
「ママ!!」
子供が泣きながら、ママと呼んでいる人に抱き着く。
「ぼく、彼女は君のママ?」
「う、うん……」
「分かった。僕たち救急隊がさ、君と君のママを助けてあげるから、安心してて。きっと元気になるよ!だから君も、ママと一緒に治療を受けようね!」
「うん!!」
傷ついている少年は元気な声を出し、それを見て安心した救急隊は、周辺の怪我人と一緒に病院へと運んでいく。
「あ、そうだ。俺はとりあえず事情聴取を受けるから、行くけど、お前らはどうするんだ?」
「とりあえずエレクが落ち着かない以上、一度家に戻して忘れさせる必要がある。だから私達三人は行けないな。すまない。」
「私は特に問題ないよ?」
「分かった。じゃ、ここで解散だね。また会えたら。」
「うん、またね~」
ここでヴァルクとニアンは、フラス、ホロム、エレクと別れる。そして、病院へと向かって行くのだった。
◆
「―――で、そんな感じだったと。」
「はい、そうですね。俺たちが知ってるのはここまでですね。」
「とりあえず、あの龍は基本種なのだが、通常とは鱗の色が違う。あと、君じゃ分からないが、一応、息球の威力も上がっている。まぁ、後は本人と、怪我人たちに聞くしかないが……」
そういって大きなため息とともに、事情聴取の内容をまとめる医者。今後の逆鱗病対策のために情報をまとめるのだが、今回の発症者は前例のない、特殊なものだったようだ。
「あ、あとそうだ。これは今回の話とは別なんだが……」
そう言って話し始めた医者。
「は!?逆鱗病が意図的に発症させられている!?」
「あ~声がでかい。いや、君たちが止めた以上、今後も増えた時に頼みたいというのもあるんだが……」
そう言って医者は説明を始める。
「最近の逆鱗病患者の逆鱗を見ると、欠けたり、割れている鱗が殆どなんだ。そして、完治によって外れた逆鱗を検査にかけたんだが、どうも、患者の龍の性質と一致しなくてな。それで最近警備員やら警察やらが捜査しているんだが、どうも手がかりすらつかめず、そもそもどうやって意図的に発症させているかが分からなくてな。かといってこの情報をむやみに発信すれば、市民の恐怖をあおるわけだし、犯人が勘付いて逃げられてしまう可能性がある。だからこうして君たちに相談してるんだ。」
「……なるほど。それで俺たちはどうすればいいんですか?」
「雇いたいんだ。治安維持のために。」
「どういうこと?」
「いや、君たちに個名があるのはさっき聞いたが、戦争が終わればそもそも稼ぐ手段がないし、次の戦争がすぐ起こる確証なんてない。それに個名持ちが治安維持に参加してくれれば、犯人も迂闊に手を出せないだろう。どうだ?」
「確かに……こいつは今金欠だから、今後戦争が起きなければ生きられるかも分からないからな。」
「その一言は余計だッ!!」
「まぁ、ありかもな。ただ、俺たちだけだと足りないだろうから、友達も誘っていいか?」
「構わない。ただ、今すぐ決めろというわけじゃない。一週間後、警備員の誰かに、僕の名前を言って、雇われる経緯を説明してくれ。そうすれば出来るはずだ。」
「分かりました。あと、あなたのお名前は……?」
「ヒアラ。よろしくね。」
そうしてヴァルクたちはアストとフレアに説明をするため、一度訓練所へ帰るのだった。
会話シーンを久々に多めに書いたんですが、やっぱり多人数の中でも一対一の会話になってしまいますねぇ~。どうすればいいんでしょうか。誰か教えてください。