‘‘個名‘‘を授かる者
みなさんメリークリスマス!
え?もう26日?何言ってるんですか!!これ書いたのは25日ですよ!!
え?じゃあ言うなって?言いたいから言うんですよ!いいじゃないですか!!
訓練所へ帰宅してから数日後、ヴァルクとニアンはピュリティアで同じような個名を持つものと共にルイファからの褒賞を受け取っていた。
「冥界の手よ、此度の戦では怪我により満足に参加できなかっただろうが、それでも初日で進んだ分我々の勝利に貢献したことをここに称える。」
「ありがたく」
ヴァルクは褒賞を受け取り、元の位置へと戻りニアンをルイファのもとへと行く。。
「流星群よ、此度の戦では初陣にもかかわらず大いなる活躍をしてくれたことをここに称える。そして大怪我に巻き込みさらに、完治もしていない中ここに呼びつけたことを申し訳なく思う。だがそれでも流星群によるはたらきは大きい。我々の勝利に貢献したことを改めてここに称える。」
「ありがたく」
ニアンは車いすに乗っているため、体勢的にもお辞儀程度しかできなかったが、それでもニアンのことを無礼だとか思う人はいない。それだけ大きい活躍をしたことを誰しもが知っているし、ルイファが認めた非をこれ以上責めようとする人もいないからだ。
しばらく個名を持つものが呼ばれ、ファウス、ペイプも呼ばれることになった。
「絶撃の鎧よ、毎度のことだが、ディフェルグ全体で味方の援護、それに加え別部隊の護衛など、多忙な任務をこなしてもらっている。そして此度の戦ではバレッドと共に攻め、前線を切り開いてくれたことをここに称える。」
「ありがたく」
「そして釘打ちよ、此度の戦ではバレッド全体でディフェルグの防御のもと、前線を大きく開いてくれたことをここに称える。」
「ありがたく」
ファウス、ペイプが呼ばれ、席に戻ったところで個名を持つ者の褒賞を渡し終えたので、次に移る。
「これからは新たに‘‘個名‘‘を授ける者の名を挙げる。皆よく聞け!!」
ピュリティア王城内の者が全員、ルイファの方を向き、真剣に話を聞く。
「今回‘‘個名‘‘を新たに授ける者は三名!!ホロム、フラス、エレクだ。三人とも、壇上に上がってこい!!」
壇上に上がった三人は左から、呼ばれた順になっている。ホロムはヴァルクやニアンなどの訓練所に住み込みで収入や貯金が安定していない人たちにとっては羨ましく見える革製のコートに身を包み、青いジーパンを履いている、いかにもカウボーイみたいな服装である。フラスは貴族のお嬢様を感じさせるような立ち振る舞いをしており、さらに正式な場ということもあってか、ホロムの普段着のような恰好とは違い、水色より少し薄い、薄氷のような色をしたドレスを着ている。エレクはこの三人の中では最も背が小さい。もっとも彼が立ちながら鼻ちょうちんを膨らませ前かがみになっているという影響もあってなのだろう。格好もパジャマのような上下白で黄色の星柄のついた服装だ。
若干ルイファも少し戸惑ったが、この場では戦争にほぼ行ったきりで服を買う機会がない人のために服装にルールがないので全員自由な服装で来ているので一人だけ咎めるにはどうなのか。と考えこのまま話を進めていった。
「三人にはそれぞれ‘‘個名‘‘を与える。ホロム、お前にやる個名は‘‘砂嵐‘‘だ。地を纏い紛れ、敵を欺く。ましてやその地を用い、敵をも殲滅する。そこから名付けた。」
「その個名、ありがたく頂きます!」
ホロムは熱血なのだろうか。周りの人の褒賞などの静かな受け取り方とは違い、大きく響き、明るく、力強い声で反応した。それでもその反応には熱意がこもっており、ルイファにも、その周りの人にも伝わる真剣さがそこにはあった。
「次にフラス。お前にやる個名は‘‘溶けない氷‘‘だ。今までに前例のない冷気を息球として出す龍、フレジシア。その力は炎しかない息球の中でも溶けずその輝きを炎よりも照らす。そこから名付けた。」
「その個名、一度もらったからにはその名に恥じぬ行動をさせていただきます。」
フラスも熱血なのだろうか。ホロムとは対照的に、冷静さの中にある燃え滾る確かな意思。その静けさを感じさせる言葉の中にも確かに熱意はこもっていた。
「最後にエレク。お前にやる個名は‘‘雷霆‘‘だ。お前は電気を纏い好戦的に戦うが、その気持ちは私が言うのもなんだが、狂気じみているな。その激しさから名付けた。」
「んあ?ん-……ムニャムニャ」
「貴様ァ!!ルイファ様に対しその言動と態度!!ましてやこの場で寝るなど言語道断!!今すぐこいつを―――」
「うるさい。」
「ッ!!!」
エレクは自由奔放な性格なのだろうか。それ故にこの場にいるルイファの側近に叱られたが、エレクはすぐさま叱ったものへ尖った刃のような手を首元へあてた。
「クカァ~……」
が、すぐに寝てしまった。
「よい。皆にも言っておこう!エレクは基本的な行動はそういうところがある。だがエレクはそれに目を向けても尚光る‘‘個‘‘があることを私は誓う。皆も分かってはくれまいか!」
「……ハ!!」
ルイファがエレクについてのことを全員に投げかけたが、それでも幾人かは不服そうにしている。その中に、ヴァルクとニアンも含まれている。だが、それでもエレクにある強さをなんとなく感じている二人でもあった。
しばらくして式典が終わり、皆それぞれが帰っていく。そんな中、ヴァルクはニアンを連れて三人で談笑しているホロム、フラス、エレクのもとへと行った。
「ちょっといいかな?」
「ん?どうしたんだ?」
ヴァルクは三人に声をかけ、
「エレクの力がどれくらいか知りたくって……」
エレクの実力が果たしてどのくらいか。気になって聞いてみたのだ。
「すまない。エレクがどのくらいか分かっていない以上、そういう気持ちになるのは私だってその立場なら同じ気持ちになるだろう。だが、エレクは『戦る』となった以上、私達みたいに仲がよかろうが全力でぶつかってくる戦闘狂のようなものだ。まぁ、今はこの通り寝ているがな。例えるなら命乞いした兎に対し何とも思わず殺す獅子のようなものかな?」
「そうか……」
ヴァルクはエレクについてを聞き、少し悩んだ。ただでさえニアンの背後に回る速度に反応しきれず捕まってしまったのに、それと同程度の速度で動くエレクに勝てる保証などないのだから。
「すまない。僕の軽率な行動で迷惑をかけてしまった。ただ一つ聞きたいことがある。そしてお願いが一つある。君たちはさっきの話し方からエレクと一度戦ったことがあるように感じるが、それは本当なのか?そしてお願いはその質問に肯定するのならば、どちらか僕と戦ってくれないか?」
「……そうだね。君の言うとおりだ。戦ってもいいけど、君の考えは少し甘い。君は……すまない。このまま「君」と呼び続けるのが少しイヤになってしまった。名前を教えてくれないか?ついでに車いすに乗ってる君も。」
フラスは「君」というループから抜けるために自己紹介を促したが、また「君」という言葉を使い、やってしまったという意味なのか、少し眉をしかめた。
「僕が名前を言わずに話しかけたからね。ごめん。僕はヴァルク。‘‘冥界の手‘‘だよ。」
「私はニアン。‘‘流星群‘‘だ。」
「個名持ちなのは分かっていたけど、まさか同世代の新人さんとはねぇ……それでさっきの話に戻るけど、君――おっと、ヴァルクはエレクと私とホロムの実力を同等と考えているみたいだけど、違うね。そもそもエレクと実力が同程度なら、親に縁を切られているよ。危険な人をそばに置けない。そういう立場だしね。」
フラスが言いたいのは、「エレクなんかよりも私達の方が圧倒的に強い。」ということ。ただ、ヴァルクが気になるのは、フラスとホロムの立場の話だ。フラスは見た目からも貴族ということが分かるかもしれないが、それでも貴族とは無関係そうな立場のホロムとエレクがいるのだ。
「ま、いいわ。とりあえず私と戦いましょ?いい?勝つには相手に降参させるか、傷を五回与えるか。それじゃ、始めましょ。」
フラスがそう言い龍化を始める。それを見たヴァルクも龍化を始める。フラスの龍の見た目は氷を連想させるような水色の肌をしていて肌から煙が出るほど冷たい肌を持つ。
そして二人の戦いが今、始まる。
ということで前書きに書いた通り、クリスマスになった(過去形)ので、皆さんにクリスマスプレゼントをあげます!!プレゼントと言っても、新しい作品の話ですが。詳しくは活動報告を見てくださいね~。