帰路
遅れました。先週出す予定の別作品が遅れたので、ついでに出すことになりました。この作品が投稿されると同時にもう一つの方も投稿されているのでついでに見てみてください。
ペイプ率いるバレッドの部隊とファウス率いるディフェルグの連携により、二日目はニアンのいない穴を埋めるどころか、かなり敵陣まで押してきたところで終わったのだった。
「ン……ウーン……」
ニアンが少しうなされ、初めて起きる。
「大丈夫か!?ニアン!」
「心配したのよ……!!」
「よかった~!」
今は夜。アストとフレアは駐屯地へ戻り、ニアンの容態がどうなのかお見舞いへ来たのだ。
「ニアンさん。今は傷が大きいので話す分には問題ないんですけど、無理して動かないでください。一週間程は出来るだけそうしていてください。」
バンドが目覚めたニアンのところへ行き、怪我の状態を含め、色々話す。次第にニアンの顔から生気がなくなっていったのは、怪我ではなく、しばらく動けないことにより、実力がみんなと離されていくかもしれないという気持ちからだろう。
「寝る……」
その気持ちが大きくなったのか、ニアンは目覚めてすぐ寝てしまった。
「あ、そうそうヴァルクさん。やる気を壊すようで悪いんですが、明日終わると駐屯地で噂されていますよ。」
バンドのその言葉でヴァルクもニアンと同じようになってしまった。ヴァルクは怪我は治ってきているのでもうそろそろ戦地に行けると思っていたが、完治するのは明後日。つまり四日目というわけだ。
「寝る……」
「あぁ、ちょっと待ってください!今回の戦争の終わりの要因は、この二人含めるディフェルグの部隊と、もう一つ派遣されたバレッドの部隊のおかげなんですよ!!」
バレッドの部隊は戦地にそこまで出ないが、「最高火力部隊」という建前がある以上、誰の耳にも入っているので、当然ヴァルクも知っている。なので興味を示すことなく、
「寝る……」
寝てしまった。
「「バンドさん……」」
もしかしたら四日目があるかもしれないから頑張ろう!ということを言いたかったのかもしれないが、そもそも四日目に向けて頑張りましょうを言えヴァルクの気が落ちずに済んだかもしれない。そのためバンドはアストとフレアにジ~ッと見られているわけだ。
「あ、アハハ……」
「オウてめぇ、まさか余計な口出ししたんじゃねぇだろうな?」
そこに出てきたのは褐色肌でなぜか口元にピンクの口紅を塗ったスキンヘッドの男だった。
「スタブさん……僕は労いの言葉をかけただけであっ―――」
「「バンドがヴァルクのやる気ゼロにした~」」
バンドは本心を告げるがアストとフレア今は寝てしまったがヴァルクは分かる。これはやる気を削いでくる話し方だと。
とりあえず状況を整理するためにスタブはバンドがどう話したかを聞いたが、
「ハァ~。前から言ってるが、お前は話し方がよくない。前置きを付けて話すんじゃなくて伝えたいことをそのまま言え。そうすりゃみんな前向きでいてくれるからな。」
「はい……」
スタブはバンドに説教したところで会話が一通り終わる。
「ま、そんなことも明日から切り替えりゃいい!!話し方だって嫌なことだってやる気だって!寝りゃ全部リセットされる!朝からまた作りゃいいんだ!!寝ろ寝ろ!!」
「「「え、えぇ……」」」
三人は目を点にしている。
切り替えの言葉として放ったスタブの言葉だったが、彼の話し方も少し癖があるだろう。なぜならみんな「伝えたいことをそのまま言えって言っておいて自分は前置きつけるのか……」と思っているからだ。
その日は何とも言えない微妙のまま解散し、次の日を迎えたという。
◆
バンドの言っていた終わりを迎えると思われる三日目。
始まった時などはない。今回の戦いでは相手が貴重な手駒を同等の価値の手駒と共に失ったが、同等またはそれ以上の手駒の物量で押されることが目に見えていたため、今回の戦は相手側の降参という形で終わった。
ではなぜこの戦争は終わらないのか。それは保守派は「戦争に勝ち今の状態を長期的に保つ」という目的よりも、「今の状態を長期的に保つために戦争している」という状態になっている。そのため保守派は戦争の勝ち負けを気にしていないため、革命派との戦争では人数不足で降参している。だが革命派が攻めてきても負けないよう、王城に大量の精兵と共にいるのだ。
だから革命派もすぐに王城を攻め落とそうとしても保守派の兵の圧倒的‘‘個‘‘には敵わないのだ。
革命派の者は皆元居た場所へ、帰るべき場所へと戻っていく。
ヴァルク、ニアン、アスト、フレアも訓練所へと帰っていく。
ヴァルクの傷は脚と、右腕。龍化した状態で受けた人の体にはない翼やヴァルクの右上部、左上部の腕にある傷は、その部位が新しく生えてきた部分に傷を負う。翼なら背中に傷を負い、ヴァルクの腕は肩の部分に傷を負うのだ。そのためヴァルクはバンドとスタブに治療してもらい、歩けるようにはなっているものの、しばらく横になっていたのもあって、少しぎこちない歩き方になっている。
ニアンはそもそも傷が低いので、荷車に乗せられ、横になったまま運ばれている。
しばらく歩いていると、フレアが会話を始めた。
「そうだ、明日か明後日にピュリティア?だっけ。そこでるルイファ様から今回の戦での褒賞が発表されるんだって。」
「誰が行かなきゃいけないの?」
「まず個名を持っている、ヴァルクとニアンとかファウスさんとかは確定でしょ?後は個名をもらえるようになる人が何人か呼ばれて行くらしいよ。……って言っても私たちはヴァルクとニアンの褒賞についてを見に行きたいから同行するけどね。」
「へぇ~……ってなんで俺を巻き込むんだよ!?」
アストは元々行くつもりがなかったのか、横から会話を聞き、適当に返したが、行かされることになって驚いている。
「ていうか、この状態の私はどうやってそこに行けばいいの……?」
ニアンはそもそもあの時飛べていたのが不思議なくらい怪我しているのだ。そのため今はというより、バンドの言う通り、一週間近くは動けないだろう。
「磔にするとか?」
「それは刑罰だろ。縄で体を縛って吊るしてあげるのがいいと思う。」
「どっちも一緒だろ!」
アストとヴァルクが真剣に考えたがニアンに却下された。
「まあ、そこはなんか連絡とか来るんじゃない?最悪行かなくても褒賞はもらえるし。」
「でもせっかく初陣で行けるようになったのなら、行きたいよなぁ~!」
ニアンの気持ちは分からなくもないだろう。何せ初陣は一度きりしかないことであり、そこで貰えるかも分からない初めての個名と褒賞を受け取るチャンスを蹴っているということだ。もしこれが二度目や三度目のことであれば行かないという選択肢を選んでいたかもしれないが、今回はニアンに「行かない」という選択肢はない。
「さて、どうすれば行けるのかなぁ……」
ニアンは考える。もしこの横たわった状態でピュリティアへ行くのなら、上官に「無礼者ッ!!」と言われ斬られるだろう。かといってヴァルクやアストの提案した方法で行くのも「無礼者ッ!!」と言われ斬られることしか頭に浮かばない。
ニアンがせめて考えられるのは車いすなのだが、それだと車いすを押している人に迷惑が掛かってしまうし、何より、褒賞を受け取らない、関係ない人を巻き込めば「神聖な場に無関係な人を招いた」としてニアン自身の評判も落ちてしまうだろう。そう考えたニアンだったが、最高の友達がいることを忘れていたのだ。そう、ヴァルクに車いすを押してもらえれば関係者だし、友達だから迷惑もそんなにかからない。それを思いついたニアンは即座にそれを実行するためにヴァルクへ話しかける。
「ヴァルク、私車いすで行くから、ヴァルク押して。」
「んあ?分かったよ。ただし……」
ヴァルクが車いすを押してくれることが決まったのだが、取引を持ち込まれる。
「アイス奢ってくれ。前から気になっている店がある。あ、勿論、トリプルな。」
「!!!」
ニアンは初日の夜、ヴァルクと取引したせいで金欠になっている(ことが確定している)。そこからさらに金をとられるのだ。
「ウゥ…………」
ニアンは背に腹は代えられないと仕方なくこの取引に応じた。
この光景をヴァルク含めたアストとフレアは面白がってみていたのだった。
元々、三日目も書くつもりだったんですが、展開的にちょっと進めたいことが出来たので保守派を降参させました。まぁ、保守派自体、そういう連中が多い設定のつもりなので、特に支障はないでしょう。
保守派の王様はそういう人なんですよ()