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寝起きの天使

 翌日、目を覚ますと峡の腕の中に詩音が居た。

 昨日は驚いて焦ったが、今日は事前に詩音の方から話があったので驚きはしない。驚きはしないが、いくらなんでも無防備すぎるのでは?っと峡は思う。事実、ゆったりとしたオーバーサイズのTシャツを寝巻としている詩音は寝返りを打つうちに肩は大きくはだけ、下着の紐もがっつり見えていた。ちなみに色は水色。

 産地不明の賢者タイムに感謝しながらそっとずれたシャツを元に戻す。

 それだけ気を許し、信用してくれているということなので純粋に嬉しくはあるのだが、このペースならいつ理性が飛ぶのか分からない。もしそうなってしまったら自分が何をしでかすのか、考えただけでたまったもんじゃない。



「怖い夢を見そうだから、一緒に寝て」


 そう言われ詩音の部屋のベットで一緒に寝たのだが、よくよく考えてみたらやっていることは相当ヤバい。

 年下女子と同じ布団で抱き合いながら寝る。

 あまりの文の破壊力にどこからか背筋が凍える。小説家と言う仕事柄なのだろうか、天井のシミを数えるようによからぬ妄想が次から次へと降って沸いた。

 一人いそいそとベットから起き、洗面所へと向かう。顔を洗い、トイレもすまし詩音の部屋に戻ると、銀髪の天子様はお目覚めになっていた。だがどうにも不満げに眉間にしわを寄せている。


「勝手にいなくならないでください」

「トイレぐらいは行かせてほしいかな」

「トイレはダメです。詩音が寂しくて泣きます」

「ごめんて、一人にして悪かったよ」

「じゃあお詫びにハグしてください」


 両手を広げ峡のお迎えを待つ。何を寝ぼけているのかと峡は思ったが、思い返せば昨日だけで何回抱きしめ合っていただろうか。そのことを考えると今更ハグのひとつなどどうでも良くはない。

 何も良くない。全くもって一厘も良いわけがない。

 昨日は色々と熱に浮かされてたり恥ずかしがる余裕もなかったりしたが、素面しらふ現在いま。同年代の女子と気軽にハグを交わせられるほどの肝は据わっていない。

 それに詩音がいくら子供っぽいとはいえ、峡とは歳も一つしか違わないし、小柄とはいえ年相応に成長はしている。それだけでも峡には甘くて胃もたれを起こしかけるのに、相手は星宮ダイヤ本人だ。推しに会えると限界化して成仏するタイプのオタクである峡にとってオーバーキルもいいところ。

 さすがに朝一から高カロリーな糖分は頂けないと、やんわりと首を振り断る。


「ダイヤ、さすがの俺も年頃の男の子なんだ。そんな気軽に女の子とハグなんて気軽にホイホイと出来ないんだよ」


 詩音は口をとがらせると、毛布をかぶったままベットの上に立ち上がる。と、そのまま勢いよくジャンプし、峡の首に手をまわす。

 突然のことに反応できず、勢いのままその場に倒れる。軽く打った頭をさすりながら瞼を開けると、毛布をかぶった詩音が目の前に覆い被さっていた。

 あまりの距離の近さに息が出来なくなる。

 詩音はその見た目からは想像もできないほど妖艶に笑うと、峡の胸に頭を落とす。


「せんせーの、えっち」


 バックンバックンと心臓が激しく暴れ回る。予想だにしない詩音の口撃に、峡は完全に堕とされていた。不意打ちにしては、あまりにも可愛すぎた。


「そんなの、反則だろ」


 愚痴にも似たやせ我慢を吐き捨てるが、未だに顔は熱いまま。

 結局、そのまま二度寝に興じた詩音を起こすことは叶わず、予定よりも一時間遅く家を出た。

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