夢見術師
分厚いコンクリ壁達のジャングル
斜光も届かないカビ部屋
親指に目ヤニをつけた頃には、君が部屋干し制服に袖を通して笑う
面白い夢を見た―――と
下らない話をジャム代わりに齧る食パン
笑い、笑い、ふと思う
最後に夢を見たのはいつだったろう―――
皆それぞれ違う暮らしの中で
暗くて狭い部屋の中で
肩寄せ合って生きている
なのに一歩出ればいがみ合うのは何故?
同じ言葉を持つのに
今日も窓を開ければ、耳を打つ喧騒
ドアを開ければ、傷つく人々
道を歩けば、矛先だらけ
この狭い島の中で……
きっと、ほんの少しの歩み寄りが平和を作る
きっと、ほんの少しの理解が痛みを癒す
毎朝誰かの部屋で囁かれる、ほんの少しの優しい言葉が、部屋の外でも溢れたら
きっと、もっと、って
きっと、誰もが一度は考えてる
見られなきゃ、踏みにじられる
知られなきゃ、奪われる
俺が弱虫だから
負けない為に、泣かない為に、つけて、鍛えて、繕って
この手で守れる範囲は小さい
けど手を繋げば届くから
人が明るい場所に集うなら
俺達が明るい場所だと示すから
だから、目立って目立って目立って目立って……
解らせて!
駆け寄らせろ!!
分厚いコンクリ壁達のジャングル
帳の落ちたカビ部屋
幸せそうに寝息をたてる君の横顔に思う
今日こそ夢を見てやろう―――
引き締まった肉体と、手入れの行き届いた顔。
程よく遊ばせた髪と、センス良く纏まった服装。
『シュンガ』
これは彼の詩だ。