上級に挑戦してみる
「マスター!このクエスト手続きしてくれ!」
カズヤは店主に上級クエストの紙を差出し、ハンコを渡してもらった。
カズヤが選んだクエストは……
「報酬金80万、討伐対象オーク5匹か。上級クエストでも、結構難しいもの選んだな……気をつけろよ」
先程中級を選んだカズヤを心配しながらも、店主はハンコを取りに行った。
店主の反応にカズヤは不安を覚えながらも武器を持てばなんとかなると思い、気楽にいた。
「大丈夫だって、なんとかなる! はいハンコ返す」
店主にハンコを返して酒場を出ると、早速武器屋へ向かった。
カズヤは迷いながらも王都を駆け回り、武器屋を探し回って、2時間した頃にようやく武器屋を発見した。
「残高12万! これで買えるものあるか?」
武器屋に入るなり、カズヤはいきなりカウンターにお金をおいて聞いた。
「12万じゃなぁ、質のいいものは無理だぜ? 10万以下のが、そこの棚にまとまってるから探しな」
カズヤの態度に店主は驚きながらも丁寧に説明をした。
刺された方を見ると、ナイフからハンマーまで色んな武器が並んでいた。
棚を見るなり大量の武器に目を輝かせてカズヤは棚に走った。
「おお! すげえ! どれにしようかな~、勇者だしやっぱり長剣かな? いや、いっその事打撃武器にするか?悩むな〜」
カズヤは胸を躍らせ武器選びを楽しんでいた。
色々な武器を手に取って降ってみたり、重さや持ち心地を確認したりして、試行錯誤していた。
その時目を通していたら惹かれるような、いや、カズヤを呼んでいる様な武器があった。
「何だこれ? 初めて見るのに懐しい、ずっと愛用していたような……どれどれ七支刀か、面白い形してるな。値段は、5万!? やっす! 店長これください!」
カズヤが持ってきた武器を見て、店主は驚きながら手に取り眺めていた。
店主が七支刀を触って強度の確認や、刃こぼれの確認をしている間、カズヤは他にある武器も見ながら暇をつぶしていた。
「七支刀か……その昔東人が作ったと言われる武器だな。使い道わからないし、変な形だし売れ残りになることが多い品だよ。確か世界に20本しかない謎多き武器だ。コレクターや金持ちがふざけて買うぐらいだな」
「それ今から買う俺に言うことかなぁ!」
確認が終わると店主は七支刀をカウンターにおいて、カズヤに手招きをした。
カズヤが近づいているうちに、店主は武器の為の紐などの道具などを準備して七支刀につけていった。
「はい五万ぴったり、じゃあな!」
七支刀を受け取ると、カズヤは武器屋をすぐさま出た。
武器屋を出て改めて七支刀を眺めていると、あることに気がついた。
「この武器鍔がないんだよなぁ……鉄製で重たいし鍔は欲しいな! 鍛冶屋行こっと」
人に道を聞きながら鍛冶屋を探したカズヤは、時間がかかったがなんとか鍛冶屋についた。
カズヤは店に入るなり早速お金と七支刀を渡して、鍔をつけて貰えるように頼んだ。
店主は七支刀を持って店の奥に行くと、凄まじい轟音と、金を打つ音が聞こえてきた。
その間暇になったカズヤは店の中で、被害を出さないスキルを確認しながら時間を潰していた。
数時間だった頃、店の奥から店主が、七支刀をもって出てきた。
「お待たせ! すまねえな! 2時間も待たせちまって!」
店主から七支刀を受け取ると、握り心地を確かめながら、カズヤは何度か素振りをした。
素振りをすると七支刀は綺麗な音を奏でて、空気を切り裂いた。
「おっちゃんいい仕事ぶりだね! ありがとさん」
早速武器を持ってクエストに行く準備を整えると、カズヤはクエストの紙を取り出した。
武器を手に入れて準備が整ったカズヤは、地図を見ながらオークの集落へと走った。
「よし、ついたな。ここからは隠密行動だな、クエストによると……美女をさらう事もあるから、もし女性がいたら救けろか。女性か、探してみるかな」
転生のお約束チョロインを想像しながら、カズヤは森の中を這いながら、美少女を探した。
集落を見て回っていたら、妙にオークの出入りが激しい小屋があった。
カズヤのいる場所からは中までは見えないため、カズヤは場所を確認しながらバレないように森を移動していった。
少し角度を変えて見ると、女性が一人座っていた。
その女性にオークは果物やなにか動物の肉を与えていた。
ビンゴと思ったカズヤは、よく目を凝らしてその女性を見た。
「あれが美女か……ってブッサイク! いや、ブッサ! 絶対美女とかじゃなくて、オークの仲間って思われて連れてこられただろ。助けるのはやめとこ……」
そこにはこの世の醜悪を一身に受けたような、醜女の女性がいた。
カズヤは見なかったことにして、クエストを完了するために、孤立しているオークを探した。
森の中は昼でも少し暗く、オークにいつ鉢合わせるかわからない緊迫感がカズヤを襲った。
しばらく集落の周りをゆっくりと回っていると、一匹ボーッとしているオークを見つけた。
どうやらカズヤにはまだ気づいてない様子で、カズヤに背中を向けてずっと立っている。
カズヤはこのチャンスを逃さないため、気配を消して、息を止めて、物音を立てないように細心の注意を払いながら、時間をかけてオークに近づいた。
❨え? まだ気づかないのかな……もう1Mまで来たよ?)
困惑しながらもカズヤは反撃されないために、渾身の一撃を背中に叩き込んだ。
七支刀で背中を斬りつけたが、七支刀は肉に沈み、決定打は与えられなかった。
「微動だにしねえ……しかも反応もしない、何こいつ怖い。今までで一番怖い……」
カズヤは恐る恐る回り込んでオークの顔を覗き込んだ。
オークの顔を確認すると、オークは口を開いたままヨダレを垂らして、白目を剥いていて、意識がなかった。
カズヤは原因を確認するべく、オークの周りを見渡したり、オークの体を触って確認していた。
調べているとある事に気づいた、オークの鼻にうんこがついているのだ。
「白目向いて気絶してる……それに、嗅いだことある臭い……」
まさかと思い、カズヤは辺を見回していた。
森の中を足元を念入りに確認しながら探していると、案の定ウンコがそこにいた。
「おいウンコ奇遇だな! お前もオーク討伐か?」
臭いの正体はウンコだった。
カズヤに声をかけられたことでビックリして、後ろに飛んで戦闘態勢に入ったが、カズヤの姿を見るなり警戒態勢を解いて、安心し始めた。
「奇遇だな。てかお前オーク討伐って言ったか? オーク倒すなんて、俺でも無理だぞ? 俺は攫われた女の救助だよ。オーク討伐は諦めろ。そんなのやるぐらいなら俺のクエスト手伝ってくれ。」
ウンコはカズヤが危険な仕事をしようとしている事を止めて、なおかつ自分の仕事を手伝うように促した。
カズヤはクエスト破棄にしょんぼりしながらウンコの言葉に耳を傾けていると、ある聞き覚えのあるフレーズがあった。
「女? 女なら俺見たぞ。でも、あれほぼオークだよマジで。」
カズヤの言葉にウンコは驚いていた。
自分の手柄を誇るように、カズヤはドヤ顔を始めた。
だが助けようとしているウンコをカズヤは止めようとした、あの顔でチョロインだった時が恐ろしいからだ。
「見つけたなら場所教えてくれ! 見た目オークでも、助けるのが仕事なの!」
ウンコに頼まれて、カズヤは渋々先程歩いた道のりを思い出しながら、ブロブフィッシュのもとまで戻った。
二人は隠密に動きながら、先程までいた場所に戻ると、カズヤが指を指してブロブフィッシュのいちをウンコに伝えた。
「ほら、あそこの小屋いるだろ?」
「うわ、ホントだ……マジでオークじゃん。でも、助けなきゃなぁ」
カズヤが指さした方向を見ると、文字通りオーク似の女がいた事で、ウンコは驚いていたいた。
だがクエスト達成のため、オークの元に行くために、ウンコが体を力ませた。
それに気づいたカズヤは抱きついて止めに入った。
カズヤに止められたウンコは壮大にコケて、二人で木に突っ込んだ。
カズヤは頭を抑えながら爆散したウンコを探すと、カズヤの頭の上に集まっていた。
「お前よく考えろ、俺達は異世界転生者だぞ!? 異世界転生者には、女が近づいてきやすい! もしあいつを助けたら……」
カズヤの言葉を聞くとウンコは、顔を青白く染めながらガタガタと震え始めた。
「はぅぁ!? ブ、ブラザーありがとよ……止めてくれなければ、恐ろしい事になっていた! オークには悪いが、クエスト失敗だ。帰ろう」
二人はオークの方を向いて、手を合わせると、二人はクエストをなかった事にして王都に向かった。
「あ、奇遇ですね。二人共お疲れ様です。今帰りですか?」
酒場に行く途中、ミカーヤが仕事を終えて待っていた、ミカーヤを待たせまいと二人は紙を返しに行きすぐさま家に帰った。
家に帰ると3人は居間のテーブルに集まり、会議を始めた。
「改めてお疲れ様です。取り敢えず今日の収穫を、集計しましょう。私はクエスト3つほど回って、50万円は稼いできました。今日は質のいい仕事が多かったので、ラッキーです」
そう言うとミカーヤは、パンパンの袋をテーブルの上においた。
テーブルの上に置かれたお金の量と金額を聞くと、カズヤは次第に自分のしたことを思い出して、ガタガタと震え始めた。
「一つクエスト失敗したが、60万だな! オーク成功してたら、80万は行ってたな! カズヤは?」
そんなカズヤに気づきもせずにウンコも、どこから出したのか大きな袋をテーブルの上においた。
話を振られたことで、カズヤは声を震わせながらも、なんとか2人に自分の成した手柄を伝えた。
「俺は一個失敗して……12万……そのうち11万使ったから、1万円です……」
カズヤは俯いたまま顔を上げなかった。いや、上げれなかった。失望、驚愕、哀愁、二人がどんな顔をしていても、上げる勇気がカズヤにはなかった。
「つ、次頑張りましょうよ! 初めてはみんな失敗しますよ!」
ミカーヤは椅子から立ち上がり、カズヤの近くに行って慰めはじめた。
背中を擦る手が動くたびに、カズヤは自分がしょうもなく思えてきた。
その姿を見ながらウンコはカズヤの身なりを見て、考え込んだ後大丈夫と思い言い放った。
「その武器で11万か? もっといい武器買ったほうが、良かったんじゃね?」
ウンコは慰めてくれると思いきや、思いの外カズヤの傷を抉ってきた。
ウンコの言葉でカズヤはダメージを更に負い、それに気づいたミカーヤがさらに慰めてくれていた。
慰めの言葉をもらうたびに、カズヤは涙がこみ上げて来て申し訳ないし気持ちに襲われていた、今のカズヤには、ウンコの言葉よりミカーヤの言葉が刺さった。
「そうだ。ご、ご飯作りますね! 皆さん待っててください。」
カズヤは2人に合わせる顔がなくお酒に逃げたくなった。
カズヤはミカーヤがご飯を作ってる間に酒場に向かった。
酒場につくと朝や昼と比べて夜には普通の人の方が多かった。
カズヤはフラフラとした足取りでカウンターまで行くと、顔もあげずにマスターを手招きした。
「マスター、酔えるお酒ください……」
「あんちゃん! 失敗したぐらいでくよくよすんなよ! ほらよ」
カズヤの反応を見て察したのか、店主はカズヤを何とか慰めようとしていた。
店主にも気を遣わせたことでカズヤの気持ちはどんどんとネガティブにおちいっていった。
「うぅ、簡単で金稼げれる、クエストないのかなぁ……」
冗談交じりで放った言葉に、マスターは反応した。
いきなり止まった店主に違和感を覚えて、カズヤは顔を上げた。
「あるって言ったら?」
「冗談に付き合う気分じゃないんだ……後にしてくれ」
店主の言葉にため息をついて、カズヤはあしらった。
カズヤの反応に店主は興味をもたせようと必死に説明をしていた。
「いやマジであるんだよ! この酒場始まって以来、色んな冒険者が挑み失敗した。だが、誰でもできるクエスト。報酬金は3億。その内容は、幽霊を捕まえる。どうだ? あんちゃんやってみるか?」
3億……想像もしたことない額に思考が停止した。だが、二人の信頼を取り戻す為カズヤは食いついた。
「やらせてくれ。どこにあるんだそのクエスト」
店主は店の奥に紙を取りに行った。
カズヤは貰ったお酒など忘れて、高ぶる気持ちも抑えマスターが戻ってくるのを待った。
ワクワクすればワクワクするほど、マスターが戻ってくるまでの時間は永遠にも感じられた。
体感時間で10分が立った頃、店主は店の奥から紙を持ってきた。
紙を渡されるなりカズヤは食いつくようにクエスト内容を確認して、代金が本当に3億かどうか穴が空くほど確認をしていた。
「こいつだ。幽霊を捕まえるなんて、文字通り煙を掴むような事だ。だがやりたいなら止めねえ、ぶちかましてこい!」
店主はカズヤの背中を叩いて鼓舞すると、店の奥からカズヤのハンコを持ってきた。
ハンコを受け取ると、カズヤはクエストの紙をカウンターにおいて、今日一番の力でハンコを押して、紙を受け取った。
カズヤは早速家に戻ろうとしたがある事に、気づいて押しとどまった。
「意気込んだのはいいが、幽霊をどうやって探す? ここは酒場だしな、聞き込みを開始するか!」
カズヤは酒場にいる客や冒険者に、幽霊について聞き込みを開始した。
みんな冗談を言ったり、信憑性のないことを言ったり、酔っぱらいに絡まれたりなど苦労していた。
何人か聞いてるうちに一人、反応を示した男がいた。
その男は謎の威圧感を持った小柄の老人で、お酒を片手に髭を触っていた。
「幽霊ぃ? 知ってるぜぇ、聞くかい? ただ、この話を聞いた人間の元にな、今夜その幽霊が来るんだ。ほんとにいいのか?」
「そう言うのを求めていたんだよ聞かせてくれ!」
今まさに欲しい情報を出した事で、興奮したカズヤは声を高らかに頼み込んだ。
カズヤの勢いに押された老人は、明後日の方向を向きながら話をし始めた。
「よし、なら話そう。」
『この王都に必ず人が一週間もたたずに引っ越す家があった。そんな一軒家の秘密を探るべく、ある酒場でクエストとして出された。その紙を見て、家のない旅人は食いついたのだ。旅人は調査を口実に、無償で住居を手に入れようとしていた。そしてその家に住んで一日目の夜に夢を見た。2階に繋がる階段の前に、男の子が立っていたのだ。「一段目」そう言って夢は終わった。男はただの疲れだと思っていたが、二日目も夢を見た。また、男の子だ。だが、今日は階段を一段登った状態から始まった。「二段目」そう言ってまた夢は終わった。男は飛び起きて2階につながる階段を見たら、ちょうど7段だった……』てな話だ!」
(前の世界で聞いたことあるな)
「ありがとよじいちゃん! これお礼の酒代!」
カズヤは余っていたお金をすべて渡して、家に帰った。
「カズヤさんおかえりなさい! ちょうどできましたよ。あれ? なんかすごいニコニコしてますね。良かったです!」
家に帰ると機嫌が直ったカズヤを見て、ミカーヤは嬉しそうにご飯を並べていた。
ご飯ができたのを確認すると、カズヤはウンコを部屋に呼びに行った。
ミカーヤが作った料理を食べると、カズヤはすぐに就寝した。
その晩、家の前に男の子が立っていた。
男の子は家のドアを開けて一階の奥の部屋、寝室のドアを開けた。
ドアを開けた瞬間男の子は、嗅いだこともない異臭に襲われた。
「クッサ!」
男の子はウンコの部屋を開けて悶絶していた。
男の子は呼吸困難になりながらもウンコの部屋から脱出して、ドアを閉めると、階段の前に立った。
「悪霊になって200年立つが、罠を配置して倒しに来るのは初めてだな。ムカつくからもう階段飛ばすか」
男の子は階段をズカズカと登っていき2階の奥の部屋、寝室のドアを開けた。
そこには見たこともない、美少女が眠っていた。
男の子はドキドキしながら、女の子の元まで行き、顔を近づけた。
「なんか、鉄臭い……」
鉄の臭いにかしげながら男の子は、ミカーヤの顔を触った。
ドキドキしながらミカーヤの顔を触ったが、想像していた暖かさはそこにはなかった。
「ヒィィィッ! つ、冷たい! 死んでる……」
男の子は驚きながら階段の元まで駆けた。
息を切らしながらミカーヤの部屋の方に振り返ると、ドアが閉まってないことに気が付き、ビビりながらも男の子はミカーヤの部屋のドアを締めた。
「何この家、やばいよ。何回も来たくないし早くのぼろ……」
ミカーヤの部屋のドアを締めたことを確認すると、男の子は安心して、深呼吸をして息を整えた。
男の子は階段を登り、3回の奥の部屋、寝室のドアを開けた。
「ハッ! 何だ今の」
男の子がドアを開けた瞬間、カズヤは夢から目を覚ました。
だが、先程のは夢ではなかった。足音が段々と、ベットに近づいていく。
男の子はベットの脇に立ち、布団を捲った。
「だまされてんじゃねえぜ!!!」
カズヤはクローゼットから勢いよく出て、男の子に膝蹴りを食らわした。
すかさず馬乗りになりながら男の子を殴り回した。
男の子は必死に抵抗をしようとしたが、拳の大きさの差で防御は儚く簡単に破壊された。
「俺は1回死んでるからだろうな幽霊に触れるぜ。もうあとがないんだ、死んでるから手加減はしねえ! コンプラ? PTA? 知るか! 異世界に前世の文化は持ち込まねえ! オラオラオラオラオラオラオラオラ!」
カズヤが殴り回してるうちに幽霊は気絶した。
幽霊が気絶したのを確認すると、カズヤは塩をかけたロープで幽霊を縛った。
「おし、酒場持ってこ」
カズヤは幽霊を抱えて酒場まで走った。
時折、幽霊が暴れようとすると一撃を入れて気絶させた。
酒場につくとカズヤはドアを蹴り破って、カウンターまでズカズカと歩み寄り、カウンターの上に幽霊を投げた。
「マスタークエストクリアだぞ!」
幽霊の姿を見ると、店主や客は驚きながらカズヤの元に駆け寄った。
差し出された幽霊を触って通り抜けたりするのを確認すると、みんなは本物だと分かり、ざわめき始めた。
「お、お前! まさか成功しちまったのか! 嘘だろ!? すげえじゃねえか!」
店主に幽霊と紙を渡して、カズヤはお金を貰うのを待った。
カズヤがドヤ顔しながら待っている間も、幽霊に群がる群衆が増えていった。
3億の大金を待ちながらカズヤは胸を弾ませて、二人を見返す妄想をしていた。
しばらく立つと店主が大きな袋を何個も重そうに持ってきて、カウンターにおいた。
「ほら3億だ持ってけ! 最高だぜお前!」
お金を受け取りウキウキして酒場を出た、歩く事にジャラジャラと鳴る重たい袋は、カズヤの疲れを吹き飛ばして逆に元気づけた。
家につくとカズヤは袋を隠して、早起きする準備をすると、カズヤは就寝した。
「ミカーヤ、ウンコ、はやく起きろ!」
早朝、家の中でカズヤの声が響き渡った。
数日前のミカーヤのように、鍋を鳴らしながら二人を起こしていると、騒音に耐えかねた、二人がドタバタと居間に向かってきた。
「なんですかカズヤさん! 私より早く起きるなんて珍しいですね」
「どうした、騒がしいな」
二人が寝ぼけながら居間に来ていた。
二人の姿を見てカズヤはワクワクとしながら
袋を用意していた。
「うわ! お前の寝起き始めてみたけど寝癖すご!」
「うるさいですね! 後で手入れするからいいんです!」
「で、なんだよカズヤ」
朝早くに起こしたにもかかわらず、いまだに用事を言おうとしないカズヤに、腹を立てて、ウンコは苛立ちを覚え始めた。
ウンコをなだめながらも、カズヤは袋を二人の目の前に出した。
「聞いて驚け! 昨日お前らが寝たあと! クエストクリアして3億手に入れた!!」
「「は?」」
二人はカズヤが冗談を言ってるのかと思ったが、目の前にあるお金の山を見て本当だと気付かされた。
「「えええええ〜〜〜!」」
「ハッハッハッハッハッ!! 跪け凡人どもぉぉぉ!!!」
勝ち誇ったカズヤの声が王都に響き渡った。