いざ王都へ
「はいはい! 皆さん起きてください!」
カズヤは早朝にもかかわらず鳴り響く騒音に叩き起こされ、音の原因を探るべく一階に駆け下りた。
耳を劈くほどの金属音、甘く可愛いのにどこか憎たらしい声、騒音の正体はエプロンに身を包み、お玉と鍋を叩き合わせながら踊っていたミカーヤだった。
「お前昨日のロボットネタもそうだけど、ベタな事に憧れあんの?」
「あ、カズヤさん! 起きたんですね! 私がベタな事に憧れを持つなんて、そんな事あるわけないじゃないですか! 別に人間に憧れてるわけじゃないですよ!」
手をもがく様にを振り回し、頬を赤く染め、妙に甲高くなった声で言い訳をした。
「そ、そんなことより! ウンコさん起こしてきてくれませんか? こんなに煩くして起きなくて、困ってるんです。私は朝ご飯の用意をしておくので、お願いしますね」
「自覚あるなら辞めような。耳痛いから」
寝ぼけた頭を洗顔で覚醒させ、ウンコの部屋に向かった。ウンコはあの騒音にも関わらず、未だに熟睡していた。
「起きろ……起きろ、おい! 早く起きろって! お前ずっと外で生活してたのに危機感ねえな」
声を荒らげようが体を揺すろうが一向に起きる気配がないウンコに、苛立ちを覚えカズヤは台所に走った。
「ミカーヤ! ちょっとコンロに火をつけて!」
「ちょっと待ってくださいね、今魔晶石を取り付けますから!」
キッチンに行くと、ミカーヤが背伸びをしながら戸棚を開けようとしていた。
なんとか魔晶石を取り出したミカーヤは、コンロに魔晶石をはめ込んだ。
「魔晶石って何?」
「簡易的な魔法が詰まった石です。これは炎の魔法が入っているので、料理などに使います。こうやって、魔晶石をおいて、魔力を込めて解除呪文を唱えると使えます。ちなみに部屋の光も魔晶石ですが、あっちは危険性がないので解除呪文がないです。強すぎる光にはつけられてますけど」
『ケトラ』!
呪文を唱えると見る見るうちに炎が出てきた。
火が強すぎたのかミカーヤは少しビックリして、青い魔力の膜で炎の勢いを調節していた。
「すげ、じゃあちょっとこの炎借りるな!」
『逃さぬ手』
カズヤが炎を取ると、ミカーヤはとっさに手を伸ばした事で、指先が炎を掠めた。
「熱っ! ちょっと何するんですか! ご飯作ろうと思ったのに……炎の扱い気をつけてくださいね!」
手を抑えながらカズヤの心配をして、ミカーヤはまた魔晶石を取り出し始めた。
自分の名案にスキップを弾ませながら、ウンコの部屋まで駆けた。
ドアを開けて電気をつけるとカズヤは、ウンコに狙いを定めた。
「ファイヤーボール!」
ウンコに向かって炎を投げた、流石乾燥と言ったところか、瞬く間に炎は勢いを増した。
「あっちィィィィィィ! 何やってんだお前エエエ!?」
身が焼ける痛みに耐えかね、炎を消すべく部屋を駆け回り、布に身を伏せ、目にも留まらぬ速さで火種を次々と移していった。
「やばいやばい! 暴れるなって! 炎広がってんじゃん!」
自分のやった事を棚に上げ、カズヤはウンコを必死に止めようとした。
「おまえのせいだろ! ほんっと死ね! お前なんかブラザーでもなんでもねぇ!」
飛び回ったおかげでようやく炎が消えた。
だが消えたのは体に絡みついた炎のみで、部屋には燃え移った炎が残っていた。
「ヤッベ! ウンコ! お前水の魔法とか使えねえの」
焦りつつもウンコが魔法を使えた事を思い出し、ウンコを頼りに呼びかけた。
カズヤがウンコの方を向くと、まだ炎の痛みでピクピクと体が痙攣していた。
「無理だよ! 俺火の魔法以外やったことない! ミカーヤに水の魔晶石貰ってこい!」
カズヤは台所に走った、デーモンキーと戦った時より速く走った。
「ミカーヤ! 水の魔晶石ない!?」
「まさかカズヤさん! あれほど気をつけてといったのに!」
ミカーヤは慌てつつも水の魔晶石を戸棚から取り出し、カズヤと共にウンコの待つ部屋に走った……
だが、台所のドアを開けた時には火の手は既に廊下まで広がっていた。
「窓から逃げるぞ! ミカーヤ!」
二人は家から飛び出し庭の外まで走った、外には既に逃げ出したウンコが燃え上がる家を見て呆然としていた。
「俺の20万したスーツ」
「あれウンコまみれだったので、昨日の時点で捨ててます。朝ご飯家で食べれなくなったので外食にしましょう。後その前に二人でカズヤさんのことボコボコにさせてください」
3人は朝ご飯を村の飯屋ですませて、草原まで来ていた。
ご飯を食ってる間も2人はカズヤに口を聞かず、ブチギレ続けていた。
カズヤもなんとかご機嫌取りをしようとしていた。
「ほんっと申し訳ないっす。俺が言うのもなんですが、今から戦闘するのにいがみ合うのやめませんか」
「いいですよ……遠くへ行くと強いモンスターが出るので、気をつけてくださいね」
さすがに可哀想と思いミカーヤは、カズヤを許して優しく語りかけた。
「ん? そう言えば、なんで村に近ければ弱いモンスターがいて、遠いと強いモンスターがいるんだ? しかもモンスターは村にほとんど入れないみたいだし。よく考えたらおかしくね?」
ミカーヤが許してくれたと思い、カズヤはいつものように喋りかけてしまった。
その態度がミカーヤに再び火をつけた。
「なんですかそれ? 人に何か聞くなら言い方が、あるんじゃないんですか? 私限りなく人間に近く作られてるので、ロボット三原則の人を殴れないとかないんですけど? カス屋さん?」
ミカーヤは半ギレでカズヤを睨んだ。
「分かった、ごめんよ……教えて下さい……後濁点を取るのをやめてください」
地雷を踏んだカズヤは打って変わって誤り倒した。
「なんでですか? 貴方はカスを振りまくカス屋さんですよ? 何も間違ってないです」
いつも可愛らしい声は、今や冷たくカズヤの心を締め付けた。
「嫌味はここまでとして、教えてあげます。結論から言えば結界です、この世界の全ての村や街には、結界が搭載されているのです。この結界がある限りモンスターは、村に入れないのです。そして結界から発生する魔力波は、魔力が強いモンスターほど嫌がるので。強いモンスターは遠くへ、弱いモンスターあまり離れない。そのような機能があるのです。」
説明モードに入るといつもの様に、活き活きと話していた。
(あれ?でも結界があるのに、なぜデーモンキーはあんな所にいたのでしょうか……それにカズヤさんは叫び声って言ってましたけど、デーモンキーは耳が良くないはず。)
ふと、一つの矛盾がミカーヤの頭に浮かび上がった。
(まぁ、それ程ウンコさんが、臭かったんでしょう! 今も臭いし)
しかし、ポジティブなミカーヤには疑問は一瞬で消え去るのであった。
「ふーん、じゃあ安心してモンスター狩れるって事だな!」
「おーーい二人ともこっち来いよ! モンスターがいるからよぉー!」
いつの間にか遠くへ行っていた、ウンコがスライムを見つけてはしゃいでいたので、二人はウンコの元へ急いだ。
「良しじゃあカズヤ! お前に戦い方を教授してやろう! その前に、お前昨日の経験値でどれぐらい強くなったんだ?」
「ミカーヤが言うにはだな! レベルが3になって、ステータスが全部12になったらしいぞ! 強さ的には戦士のレベル1に、追いついたらしい!」
「あ、そうかぁ。勇者はレベルが上がりにくいんだったな。じゃあ、俺がやるから見てろ! まずな、スライムは物理攻撃が効かないから、魔法で倒すんだ! 俺の場合炎で蒸発させる」
「ウンコさん頑張ってください」
ウンコの体から青い球体が浮き出て、見る見るうちに炎へと変化した。
スライムは炎に怯んで縮こまってしまった。
「気をつけろウンコ! そいつ人形になって殴ってくるから」
「「は?」」
ウンコは魔法を解き、ミカーヤは応援ポーズのまま固まってしまった。
放心してるのを見てスライムは逃げてしまった。
「何いってんだお前?」
「そうですよ! スライムが人形になるなんて、聞いたこともありません! ましてや殴るなんて! スライムは絡みついて、窒息させるんですよ」
2人は驚きつつもカズヤに説明をしていた、カズヤは困惑しながらも2人の話を聞くが、辻褄が合わない事で困惑は加速していった。
「え? でも俺見たよ? しかもボクサーレベルのフック食らったぞ?」
「嘘つくなって、人形になるのは草に擬態する道に生えてる変な草だろ? そっちなら一昨日ぐらいから何回か見たことあるけど」
優しく教えるウンコの言葉に、今度はミカーヤが驚いた。
「そんなはずはありません! リーフマンが人形になるなんて!」
ミカーヤはデーモンキー、ウンコはリーフマン、カズヤはスライム、3人それぞれが腑に落ちない疑問を抱えていた。
「なにかおかしいな、ミカーヤカズヤ一旦今日は早く帰るぞ。」
3人はレベル上げを止めて、村に帰った。
村に帰ると長髪の青年が巨大な魔法陣を地面に書いていた。
青年は3人の存在に気づくと早足で駆け寄ってきた。
「お待ちしておりました。私は王宮に仕える魔法使いです。恐らく勇者御一行の貴方達なら既に気づいていると思いますが、単刀直入に申し上げます。魔王が復活いたしました、それによりモンスターが活発化しているのです。」
急いでいるのか青年は早口で話していた。
青年の早口にカズヤは陰キャっぽいと思ってる中、ミカーヤは魔王の復活と言う言葉にガタガタと震え始めた。
「そんな……魔王がついに復活したんですか!?」
震える声でミカーヤが喋ってるのを見て、青年は優しく語りかけるように話し方を変えた。
「はい、ここ最近魔物が人形になる事件が相次いでいまして、原因を探っていたら魔王の復活が発覚したのです。ここからが本題です。国王が魔王を倒すべく、世界中から冒険者や勇者を集めているのです、その為カズヤ様にお伝えに参りました。王都にて家等は保証されてるのでどうか、打倒魔王に力を貸していただきたい! この村は魔法陣にて結界を強めるので、故郷の心配はいりません!」
急に飛躍した話にカズヤはついていけなかったが、一つ美味しい話に食いつき、ミカーヤとボソボソと話し始めた。
「ミカーヤ、家だってよ! 行こうぜ! 家もらえるよ!」
ワクワクしているカズヤとら裏腹に、ミカーヤは叱りつけるように止めようとしていた。
「そんな簡単に故郷捨てれるわけないじゃないですか。それに王都のモンスターに勝てるほど、カズヤさんまだ強くないですよ」
「強くなればいいんだよ。それに俺とお前も当初の目的は魔王軍の殲滅だろ」
「うー、わかりました。どうせ遅かれ早かれ旅に出るつもりでしたからね。」
「きまり! 俺達も王都いきます!」
「ありがとうございます! 勇者様に力を貸して頂けるなら心強いです! 昼に迎えが行くので待っていてください!」
勇者が仲間になるということで、青年は安堵の笑みを浮かべた。
話を終えると、青年は青い光に包まれて消えた。
「テレポートで俺たちも、連れて行ってくれるわけじゃないんだ」
「テレポートは高等技術なので、そう何人も転送できないんですよ」
しょんぼりするカズヤに、ミカーヤは呆れたように說明をした。
「そんなことより暇だし、カズヤ飯屋行こ飯屋」
それまで黙っていたウンコは、カズヤの袖を引っ張りながらぴょんぴょんしていた。
「服引っ張るなよ。てかお前変形できたんだな」
「小さな手を作るぐらいはな。それでミカーヤも行く?」
「私は村の人にお別れしてきます。二人で行ってて大丈夫ですよ」
3人は一度解散して、それぞれ昼まで時間を潰した。
ご飯を食ったカズヤとウンコは広場で迎えを待ったが、迎えはまだ来なかった。
数時間待っていると、夕方になった頃ようやく馬車が広場に到着した。
「やっときやがったおせえ!」
「もういいカズヤぶん殴れ!」
昼と告知されて待っていたが、馬車が来たのは夜中だった。
二人の声に気づき、馬車の御者台からパイプをふかした渋い男が顔を覗かしてきた。
「あんちゃん達……若えのに急ぎすぎるこたぁねえだろ……人生は短いようで長い、ゆっくり行くのも大事だぜぇ……だがよ、イタズラに時間を無駄にするのは良くねえ! 昼のはずなのになぜ夕方になってんだテメエらァァァ!」
「お前が遅刻してんだろ! 何だお前!」
意味の分からない御者の言葉に、カズヤはブチギレて袖を捲くりながら近づいた。
「やっちゃってくださいカズヤさん!」
殴ろうとしているカズヤに気づいた御者は、パイプをカズヤの目の前に突き出して、カズヤを怯ませた。
「あんちゃん達ィィ! はよう荷台乗らんかい! あんちゃんらは、おいらの人生にとってのお荷物だからなぁ……荷馬車持ってきたんじゃいいいい!」
謎の気迫のある変な御者に言われ、怖気づいたカズヤは、渋々荷台に乗る準備をした。
「お前何ビビってやめてんだよ」
「だって一人でここまで来たんだから、もしかしたら強いかもじゃん」
眠くなっているのかミカーヤは口数が少なくなってきていた、それを察したカズヤはミカーヤをおんぶして荷台に向かった。
三人は荷台に乗ったが、そこには大量の木箱が積まれていた。
「驚いたかいぃぃ……当たり前だわなぁ! 荷台なんだからなぁ! あんちゃんたち! これも人生の教訓やぁ……硬いベットで寝るのも経験の積み重ねやぁ……まぁ、オイラはフカフカベット以外で寝れないがなぁ! 木箱にはさわるなよぉ……そこにはオイラの生きがいのパイプが入ってるからなぁ……」
木箱を動かしてなんとか隙間を作った3人は、毛布もない硬い床に不満を漏らしながら座り込んだ。
「お前こんだけパイプ入れるぐらいなら、乗れる場所用意しろ!」
「クソ野郎が! 後そのフェードアウトする喋り方やめろ!」
「オイラがぁ……前を向き前進する限り、後からの罵声は聞こえねえんだぁ……走らせるぞぉ!」
謎の理論を得意げに話た御者は、満足したのか出発の準備をした。
御者台から馬に向かって鞭を放つと、凄まじい速度で荷馬車は進み始めた。
「うお、速えな!馬車ってこんなに早いの?」
「こういう長距離馬車はモンスターの馬を使った特別性で、魔力を注ぎ込むと筋肉が刺激されて速くなるんだよ」
村が瞬く間に見えなくなってしまった事にカズヤは驚いていたら、御者台からガタガタと声を震わせながら変な御者が喋った。
「あんちゃんたちぃぃ……良う知っとるなぁ……その通りや、馬車は魔力で速くなるやつもあるぅぅ……でも俺は金がねえからそれ買えなかったんだぁ……こんな速さ俺は知らん、俺も恐怖を感じてるぜぇ……でも大丈夫だぁ……荷馬車は外れるかもしれねえが俺は生き残る!」
「お前マジでいっぺん死ねよ!」
「俺達3人ちゃんと送り届けろ――」
ドォン
凄まじい轟音とともに荷馬車の布が全て吹き飛び、木箱は爆散しながら後方に飛んでいった。
「オイラのパイプ!!!!」
「なんですかこれわぁ! モンスターからの攻撃ですかぁ!」
「ソニックブームだ!」
「ソニックブームってあれかカズヤ! 音速超えたときに起こるっていう」
荷馬車の速度はついに音速を超えて走っていた。
「ブルブルブルブル。お、オイラ話すと舌噛んじまいそうだ」
「全員しゃがめ、俺達は幸い荷台にいる。衝撃は全部あのクソ御者に受けさせて、俺達はできる限り安全な姿勢を保つぞ。あと絶対喋るな」
「ブハハハハ。カズヤお前顔面白すぎだ――イッテェベロ感だ!」
「ウンコさんベロあるんですか!?」
3人は必死にお互いの面白い顔で笑わないよう我慢しながら音速に耐え続けた。
加速した馬車の速度は凄まじく、ものの2分で王都が見えてきた。
「もう王都が見えてきたぜぇぇ……丘があるからとびこえるぞぉ……」
「やめろ! 馬車は飛ぶものじゃないだろ!」
「この速度だとほんとに洒落にならないだろ!」
加速しきった馬車は丘を飛び越え空を舞った。
荷馬車は次第に弧を描きながら落ちていき凄まじい轟音と共に何かにぶつかった。
凄まじい衝撃がカズヤ達を襲い、荷台は一瞬で大破した。
「いってぇぇぇ! ウンコ、ミカーヤ大丈夫か!?」
「俺は爆散するから大丈夫、ミカーヤは相変わらず硬いから大丈夫だ」
「私も割りと痛いですよ!」
お互いの安全を確認した3人はあたりを見渡すと、大聖堂のように盛大な建物の中にいた。
「あんちゃん達ィィィィィ! 何してくれてんだお前らァァァァァ! お前らが操縦をミスるせいで! おま、これ! 王宮に突っ込んでるじゃねえかァァァァァ! 王様死んだらどうすんねん!」
「おめえが操縦してただろうが! 人のせいにすんじゃねえ!」
言い争いしている内に、気づいたら兵士に囲まれていた。
3人が身構えていると御者台、つまり馬車の眼の前の方からコツコツと足音が聞こえた。
「世界中から勇者や戦士たちが集まっている今日という日に、王宮に攻め入るとはよほど腕に自身があると見た。捉える前に面でも拝んでやろ……って勇者様!?」
聞き覚えのある声に気づいて恐る恐る顔をあげると、やはり見覚えのある長髪の青年が立っていた。
青年の方もどうやらカズヤがいた事で、驚いていたようだ。
勇者だと判明した兵士達も困惑し始めていた。
「ど、どうも遅刻してしまいました……」
「はぁ、また大胆な登場で。で、では王の元まで案内しますので、ついてきてください。」
困惑しながらも長髪の青年は、4人を玉座まで案内した。
玉座では4人の青年が王を前に膝をついていた。
「誰だ! 何をしておる、今は勇者に誓いの儀をしている神聖な場だぞ」
王の言葉を聞くなり、変な御者はいきなりでパイプを地面に叩きつけた。
その行為にその場にいる全員が驚いて変な御者を見ると、変な御者は見たこともない変な顔でブチギレていた。
「おいおい、おうちゃんよぉ……こいつらもわけえんだぁ……過ちを犯すのも仕方ねぇ……そういう時はオイラたち大人が許してやるもんだろぉ!!!」
変なおっさんが王の元へ歩みながら、変な理論を語っていた。
「貴様! 王に対して何たる無礼! 御者如きが図に乗るなよ!」
玉座の斜め前にいた兵士が、怒りながら変な御者に槍を向けた。
「おい、あんちゃん! 口の聞き方に気をつけろよぉ……俺が誰だか、わかんねえのかぃ……おうちゃんにここまで馴れ馴れしいんだ、だいたいわかんだろ?」
差し向けられた槍に臆しもせず、変な御者は槍を払い、地面に叩きつけた。
「ま、まさか! 王よ! 無礼をお許しください! 王の身内に何たる侮辱を!」
兵士は慌てたように王に対して跪いた。
王は跪いてる兵士と変な御者を交互に見ながら唖然としていた。
「え、いや、ワシこんなやつ知らんよ……いま初対面だし」
「そう……オイラも自分が誰かわかんねぇ……自分探しに出るとするかな……」
変な御者は肩で風を切りながら、扉を蹴破りどこかへ行った。
御者と入れ替わるように長髪の青年は前に出た。
「最後の勇者を連れてまいりました。」
「何?! どういうことじゃ。」
青年の言葉に王は驚愕した。
王は何やら考え込み喋らなくなってしまった。
王が黙っている間カズヤは勇者と思われる4人の青年の方を見たが、全員儀式とやらに集中しているのかカズヤ達には目もくれなかった。
「よし、勇者ということはわかった。だが今から誓いの儀をやり直すにしても時間がかかりすぎる。今日は一旦用意してある家に帰ってくれ、後日また呼び出す。」
王がそう言うと青年に連れられて3人は城の外に連れて行かれた。
そして3人はいつの間にかファラメイションされていた家の場所へ向かった。
「夜とはいえ結構人いるなぁ、しかも獣人とかもいるし、まさに異世界って感じだな」
「なんですかカズヤさん、異世界っぽいのならここにもいますよ。私の目を見てください、キレイな十字模様があるでしょう!」
異世界っぽいと言う言葉に反応して、ミカーヤはカズヤの前に回り込み、自慢の目の模様を見せびらかした。
「お前一歩間違えたらシイタケだろ」
「ああァァァァァァァ! カズヤさん最低! デリカシー0! 最低男!」
カズヤの発言にミカーヤは叫びながら、両手でカズヤを叩き始めた。
「お前らいつも言い合いしてんなぁ」
2人の喧嘩を尻目にウンコは、ため息混じりに呟いて呆れていた。
王宮から10分ほど歩いた繁華街近く、川の近くに建てられた大きな3階建ての家についた。
「前の家より3倍はでけえな! 燃えたけどなんとかなったなぁ!」
「もう! ちゃんと反省してるんですか? 次はやめてくださいね!」
「カズヤは炎使うの禁止な」
3人は新しい家に入り就寝した。