ついに判明レベル上げ
「どうするどうする! 俺戦えないよ! 二人がやらないと!」
カズヤが慌てふためいている隙を見て、デーモンキーがカズヤを狙い、凄まじい速度で襲いかかって来た。
カズヤはうんこにタックルされ木から落ちた事で、デーモンキーの不意打ちをなんとか避けられた。
「隙をみせんじゃねえ! モンスターとはいえ、相手は知能が高いんだぞ! スキルでもいいから戦え! 全員でかからないと勝てない相手だ」
「カズヤさんこっち来てください! ウンコさん、すみませんが少し時間稼ぎを!」
カズヤはミカーヤに胸ぐらを掴まれて、引きずられながらデーモンキーと距離を取った。
「とりあえずこれを」
『情報社会』
「私が知ってるカズヤさんの使えるスキルを全て、頭に流し込みました! 自分で判断してサポートを!」
笑顔が耐えないミカーヤですら顔が強張っている、カズヤに死闘を感じさせるには充分すぎる状況だった。
「早く、立って! ウンコさんが殺される!」
急かされ我に返ったカズヤは震える足を叩き起こし、耐え忍ぶ仲間の元に走った。
「ミカーヤまだか! 爆散するとは言え、ダメージは流しきれねえぞ!」
ウンコの元へ戻ると、地形があの一瞬のうちに変わっていた。
木々は押し倒され、地面は所々陥没していた。
「すみません! 遅れました! すぐさまサポートします!」
『鑑定』
『青白色の蛇』
「地雷スキルです! どうにか誘えませんか」
ミカーヤの両腕から稲妻のムチがうねり出て、地面をのたうち回った。
仲間が来た。死闘の中ウンコが起こした一瞬の安堵、その瞬間を見逃すほど敵は甘くはなかった。
「あぶねえぞウンコ!」
『英雄の仁王立ち』
「俺が食らうから避けろ!」
ウンコを突き飛ばして、カズヤは両手で顔を守りながらスキルを使った。
カズヤの体が瞬く間に銀色へと変色し、デーモンキーの前に立ちはだかり、ウンコを庇った。
「だめカズヤさん! スキルはステータス依存の技です! 今のカズヤさんじゃ、効果は薄いです!」
デーモンキーは立ちはだかるカズヤに巨腕の右払いで吹き飛ばした。
木々を押し倒しながら吹き飛ばされるカズヤの安否を確認したい、だがその一瞬すら許されないほどの格上だった。
「いてぇ、死ぬほどいてえ! けど早く戻らなきゃ……」
『女神の雫』
「スキルだからかそんなに回復しないな。それより結構ふっ飛ばされたな」
デーモンキーの方を見てみると、たった一瞬で一つの道が出来上がっていた。
回復が完了したカズヤは二人の元へ駆け出した。
「サーチ完了しました! やつの弱点は左の脇腹、古傷のある場所です!」
「でかしたミカーヤ!ここからは無駄遣いの時間だ。」
ウンコから青く光ったバスケットボールほどの球体が5つ出現し、見る見るうちに槍のように変化した。
槍は瞬く間に赤く燃え上がる炎へと変化し、デーモンキーの脇腹めがけて飛んでいった。
古傷を焼き裂かれたデーモンキーは怯み、地面をのたうち回った。
「ナイスです!うんこさん!効いてますよ!」
「あぁ、これなら行けそうだ」
隙を見てカズヤの方を見てみると、ちょうどカズヤも帰ってきていた。
「ただいま。すまねえ、遅くなった」
カズヤも戻ってきて3人は勝ち筋が見え始めてきていた。
【ブモォォォォォォ】
デーモンキーが雄叫びを上げ始め、みるみるうちに傷ついた腹が筋肉により締まり、高密化して塞がってしまった。
「やばいです。 デーモンキーの弱点が消えました……」
デーモンキーはウンコに接近して右腕を振り下ろした、それを紙一重で右に飛びウンコは難を逃れた。
「すげえ! よく考えたらウンコなのにどうやってとんでんの!? 筋肉の謎じゃん!」
「今そんなのどうでもいいだろ!」
デーモンキーは振り下ろした右腕だけでジャンプして、ミカーヤに的を絞り巨体でのしかかった。
「「ミカーヤ!」」
「メタルボディで地面に沈んだだけなので、大丈夫です!」
魔法。知略。技術。そんな物は存在していない、ただ力を暴虐に振り回しているだけ。
格上の振るう暴虐は単純であろうと弱者には天災であった。
「さすがロボット。硬さは一級品だな。それと俺もただふっ飛ばされたわけじゃない! こいつを倒す案を練ってきたのさ!」
『逃さぬ手』
カズヤはスキルを使いウンコを持ち上げた。
「えっ何々」
「うるさい! それとぉ!」
『巧妙な一撃』
カズヤはスキルを使っている方の手に、スラッシュで切り傷をつけた。
血の匂いに反応して、デーモンキーが大きく口を開けて襲いかかってきた。
「ほぉら、予想通り! そこにぃ、元野球部の強肩だァァァァァァァ!」
カズヤは腕を振り下ろし、ウンコをデーモンキーの喉に詰め込んだ。
喉に詰まったこととウンコの臭さで、デーモンキーは身を捩り苦しみ始めた。
「うわくっせぇ! 俺より臭い! 出してくれマジで臭い」
「窒息待ってる暇はないんでな! ダメ押しの強肩んんんん!!」
ウンコは喉から更に奥へ、胃の中に侵入した。
「ここで爆散!」
『情報社会』
「作戦は送った! いけ、ウンコ!」
握りしめた拳はウンコを凄まじい勢いで爆散させた、その勢いに乗じてウンコは加速し胃を突き破り、内臓をズタズタに切り裂いた。
死んだデーモンキーから大量の赤い光が舞い上がりカズヤとミカーヤを包み込んだ。
「あ! 経験値!」
「へーこれが経験値か」
デーモンキーの肛門から出てきたウンコも赤い光に包まれていた。
「お前今日から本物だな」
「そうですね! 本物さん」
「本物も何も俺は元からウンコだから」
戦いが終わった安堵から3人は冗談を飛ばし合っていた時、ふとカズヤは思いついた。
「お前ら二人そこに立ってくれ」
二人は指示に従いカズヤの前に直立した。
「『下劣な右手』」
二人を包み込んでいた光は全てカズヤに吸収された。
光が体に入り込むと、カズヤは力が増した感覚がした。
「これだよレベル上げの方法! ウンコがモンスターを倒して、俺が経験値を貰うんだよ! そしたら危険なく楽々あげれる」
「ふざけんじゃねえ! 俺達二人の経験値返せよ!」
「そうですよ! 3人の努力の決勝ですよ! みんなで分け合いましょうよ!」
「うるせえ! とどめほぼ俺だろ! 黙れ帰るぞ!」
二人は勢いに押され渋々帰ることにした。
「そうか、ここから15分あるかなきゃいけないのか。めんどくせぇ! 疲れてボロボロだよ!」
カズヤは帰ろうと森を出たが、転んで駄々をこねた。
「お前は人間だからいいだろ! ウンコの俺には、距離が何倍にも広がるんだよ!」
「私の地雷スキル……有効活用されなかったなぁ……」
ウンコやカズヤを無視して、ミカーヤは一人愚痴を吐いていた。
「うるせぇ! 戦いなんて掘り返すんじゃねえ! 空気読め!」
「空気を読む?空気は吸うものですよ」
「はい、出たぁ! お前ロボットで言葉いっぱいインプットされてるのに、なんで言葉わかんないんですかぁ。おかしいよなぁ! 次はなんだよ! 目からオイルとか言うのか? 人間模してるんだから出て当たり前だろ!」
分かりきっていたのに誰も触れなった事を抉りまくり、カズヤはミカーヤの心を殺しにかかった。
「うるさいなぁいいじゃないですか! 少しぐらいキャラ作りしても! 仲間が全員キャラ濃すぎるんですよ! 二人とも異世界から来ていて、一人ウンコで激臭だし!」
涙目になりながらミカーヤは、さり気なくウンコをバカにした。
「ここから矛先俺に向くのおかしすぎね!? そんな事言うなら俺も言うけど。お前ロボットとか言いながら、ほとんど人間でロボットらしさねえからな。キャラなんて最初からねえぞ」
「アァァァァァ! 気にしてること言われたぁ! もう私のキャラ作りおしまいですよぉ!」
「お前は最初からキャラグチャグチャだよ。 もう疲れるだけだから黙って帰るぞ」
ミカーヤの家についた3人はドアを開け玄関に入った。
カズヤは玄関に入ると、靴を袋に入れてゴミ箱に捨てに行った。
「ストップ! ウンコさん! すみませんがここからは袋に包ませてください!」
「俺乾燥してて跡つかないから安心してくれ」
2人が話してる隙きを見て、カズヤは一目散にお風呂に走っていった。
「「あ! 抜け駆け!」」
3人は死闘により泥と汗などで汚れていた。
カズヤは走って脱衣所に入り服を脱ぎ始めた。
だが、カズヤに追いつき二人も脱衣所に無理やり入ってきた。
「ウンコお前が入ると風呂が肥溜めになる! ミカーヤお前は錆びる!」
「俺は身体かき集めれるから大丈夫なんだよ!」
「そうですよ! 私も高性能なので大丈夫です!」
カズヤが難癖をつけて一番風呂を狙ったが、二人はすぐさま反論した。
「じゃ、ウンコは激臭だから風呂が臭くなる! ミカーヤはロボットだから一日ぐらい大丈夫!」
カズヤの言葉を無視して、二人の体は青く光り始めた。
カズヤ対ミカーヤ&ウンコの一歩も引けない争いが始まった。
「よぉし! いいじゃねえか! 戦いてえならやってやんよ!」
カズヤが構えをとり、二人も答えるように構えた。
カズヤは念入りにシミュレーションして、完璧な作戦に出た。
「喰らえ!」
『屑野郎の一撃』」
「ステータスの低い方から狙えばタイマンに持ち込めるぜ」
「甘いですよ!」
『英雄の仁王立ち』
「効きません! てかなんですかそれ! スキルじゃないただの、最低な攻撃じゃないですか!」
メタルボディ化したミカーヤを殴った手が、鈍い音とともに潰れた。
「いってぇぇぇ!!」
愛する我が身を抱きかかえて蹲まったカズヤの隙きをついて、ウンコも攻撃を仕掛けた。
「眠っててもらうぜ!」
『死神の口臭』
「喰らえ俺の唯一のスキル! 終わったら起こしてやるよ」
カズヤがウンコに鼻を塞がれて気絶した様を確認し、ミカーヤは脱衣所にあった棚からあるものを取り出した。
「はい! ウンコさんちっさいんですから、桶で大丈夫ですよね?」
「え?いや、俺も大浴場に……」
「あ???」
「キャラが読めないよミカーヤちゃん……」
ミカーヤの覇気に気圧されウンコは戦うことを諦め、オケで風呂を済ませた。
「結局俺が一番最後になった……」
「ま、まぁ私みたいな女の子の後のお風呂なので、良かったじゃないですか」
風呂を出てからカズヤはずっと愚痴っていた。
一番風呂で誰よりも早く汚れを落とせれたミカーヤは、ホカホカとして満足気だった。
「ほらカズヤさん! 明日もレベル上げするんですから、部屋に行って寝ましょう」
ミカーヤの言葉を合図に3人は別々の部屋に眠りに行った。