再会
「どうしたんだキクラ、こんな時間にみんなを集めて。この時間だとお前も含めて、みんな仕事中だろう」
「今日は仕事なんていいのよ! それよりも待っててね!」
3人に呼び寄せられた主人とメイド達一同は、大広間に集まったはいいものの、仕事に戻りたくてソワソワしていた。
全員集まったことを確認すると、キクラは大広間へつながる唯一の道にカーテンをかけた。
「みんな注目よ! 今日は凄いスペシャルゲストが来てるの! 今どきの言葉で言う、サプライズよ!」
キクラは上機嫌に話しながら大広間の天窓を含めたすべての窓にカーテンをかけると、部屋の電気を消してしまった。
「ツガちゃん灯りを! 私の方へお願い」
「かしこまりました」
『陽光華』
光を頼まれたツガはスキルを使い、キクラを照らした。
光が向けられたことを確認すると、キクラは大広間の出入り口に向かった。
「さぁ登場よ! 出ておいでみんな!」
キクラは掛け声と同時に、カーテンの紐を力いっぱい引っ張った。
皆の目線はカーテンの裏にいた4人に集められた。
そこにはカズヤとミカーヤとシュウキと、そして幽霊から開放された娘が立っていた。
娘は久方ぶりに出会った父を発見すると、涙で顔をグシャグシャにしながら駆け寄った。
「パパァァァ!」
「おぉ、カナ! やっと終わったんだな! 辛かっただろう、ごめんな」
主人は涙を流しながらカナを抱きしめた。
主人はカナを暫く抱きしめた後、顔を上げてカズヤ達の方を向いた。
そしてこちらに手を差し伸べながら、笑顔で向かってきた。
「君達が助けてくれたんだな。ありがとう、お礼はいくらでもする。何がいい給料の増加かい? それとも君たち専用の、なにかでも作ろうか」
「あなたその件について、言わなければいけないことがあるの」
キクラは主人を引き留めると、耳打ちをしてすべて明かした。
主人は全て聞き終えた後、再度笑顔を浮かべてカズヤの手を取った。
「君達冒険者だったのか、この際そんなことはどうでもいい。娘を助けてくれてありがとう! お礼をさせてほしい」
「あの~、もう一つ隠してたことがあるんですけど」
カズヤは握手をされながら、言いづらそうにキクラの方を向いた。
まだなにかあるのかと、主人の手は止まった。
「実は俺男なんです」
「そんなことは薄々みんな気づいてただろう、そんなことよりお礼は何がいい!」
何ら衝撃でもない言葉を聞くと、主人は再度手を上下に振りながらにこやかに話した。
一方キクラとメイド達は全く気づいておらず、絶句していた。
「そーですね、最近武器を紛失したので武具がほしいです」
「私も使えそうなものがあったら欲しいです。」
「魔法武具見たいので、二人と同じで」
「武具か! 私のコレクションがある、なんでも持っていってくれ! キクラ少しこの方達を借りるぞ」
主人はお礼ができることが嬉しく、ウキウキしながらカズヤ達を連れて行った。
カズヤ達は主人に連れられ、3階のある部屋に案内された。
入ってみるとそこには数多の武具が丁寧に飾られていた。
「この中からなんでももらっていいんですか?」
「あぁ、何でも貰ってくれ」
カズヤ達はワクワクしながら端から順番に、武器を見て回った。
数多の武器に心を惹かれながら目を輝かせていると、ある武器が目に留まった。
「え!? 七支刀あるじゃん! これにします!」
「あぁ、それか。武器に使えるかどうかはわからないが、気に入ってもらえて光栄だ。持っていってくれ」
「良かったですねカズヤさん! 前使ってたの折れて、落ち込んでましたし」
カズヤは新たな七支刀に出会えて上機嫌になり、鼻歌を歌いながら収納魔法を発動させた。
収納魔法を発動させた途端に中から折れた七支刀が飛び出してきて、七支刀の中に吸い込まれてしまった。
「え?」
折れた七支刀を吸収した七支刀からは、折れた七支刀についていたような鍔が出現した。
「は? え?」
カズヤは何が起こったか理解ができず、ただ呆然と七支刀を眺めていた。