人にやった事は自分にも返ってくる
「今伝えたのが作戦だ。行けるな? 新入り」
ツガの作戦を聞き終えると、2人はうなずいて顔をあげた。
オリセの方を向いてみると、3人がコソコソしている事を不思議にも思わず空を見上げていた。
話が終わったのを察すると、オリセは3人に近寄ってきた。
「何の話だったの?」
「実はですね。シュウキと私はツガさんのお菓子作りの技術を、学びたくて頼んでいたんです」
オリセはなにか裏があるとは疑いもせずに、話しに耳を傾けてくれていた。
「そうなんですよ! それでまだ朝早くだから、少しぐらいはいいかな〜って」
2人の話を聞き終えると、顎に手を当ててフムフムと口ずさみながら頷いていた。
「それでツガちゃんは、いいって言ったの?」
「最初はダメって言ってたんだけどな、昨日の悲劇もあるし息抜きをさせてやろうと思ってるんだ。」
オリセはツガの肯定的な態度に少し驚いていた。
(フッフッフッ、早速心が揺らいでいるな! これぞツガちゃんアイディア! 私が肯定的になれば、オリセは少し流されるはず。それに昨日の新入りにした事も罪悪感が残ってるはず!)
「そこまで言うならいいわ〜」
ツガの予想通りオリセはツガの流れに合わせるように承諾した。
「でもツガちゃん、お菓子作りしている間は誰が水くみするの?」
「そこは心配いらない、オコナがこの近く担当だから少し頼んでくればいい」
ツガの提案を聞くと、オリセはオコナと話すついでに伝えに行く事を自ら立候補した。
オリセが本館に向かう後ろ姿を見送ると、3人はメイド館に向かってあるき出した。
「上手く行きましたねツガ先輩! でも後でオコナ先輩とミカーヤに、怒られたらどうします?」
カズヤは褒めちぎりながらも、心に引っかかる患いの対処法を聞き出そうとしていた。
カズヤの話を聞くと、ツガは悪の大王みたいな笑みを浮かべながら振り返った。
「何を言っているんだ? オリセの事だし、新人が頼み込んできたから、お菓子作りをすると伝えるはずだ。そうすると2人は新入りが、サボろうとしたって思うだろう。だが私達2人は疑われない、いつも根が真面目だからだ!!! いいか新入り! 裏切りというのは、自分が最も優位な状況でするのだ!」
ツガの高笑いを聞くなり2人はガタガタと震え始めてしまった。
それからというもの、2人はお菓子作りも、実食も、お菓子作り後の仕事も、昼食も、夕飯も、全て虚ろな目をしながら過ごしていた。
「なぁシュウキ、俺達ミカーヤに殺されるかな」
「分からないけど、やり返されるのは確実だな」
2人は虚無を感じながら夕飯を口に運んでいった。
2人が心ここにあらずに食べてる内に、ついに夕飯を食い終えてしまった。
なにかあるとしたらここから先、2人は震える手でいつもの様にみんなの皿に手をかけようとした。
「おっと待ってくださいお二人さん? いつも食後にも関わらず、皆の為にお仕事ご苦労さまです。ここは私に任せて、お二人は皆さんと入浴を楽しんでは?」
2人は最も恐れていたことをミカーヤにされてしまった。
カズヤとシュウキとお風呂に入る。
それは女子のお風呂イベントが大好きなメイド達にとって、ここ最近ずっと狙っていた一大イベントだった。
初めての2人と裸の付き合いができると分かったメイド達は、目を光らせながら2人を抱きかかえてお風呂場に向かっていった。
居間を抜ける時、2人の目には悪魔のような顔をしたミカーヤがお皿を持って笑っていた姿が映っていた。
脱衣所につくなり2人は服を脱ぐふりをしながら、わざと時間を稼いでいた。
ガタガタと震えて死を感じながらも、必死に解決方法を考えていた。
「良かったな新入り! 友達怒ってなさそうだったぞ! 私達は先にお風呂入ってるから、服脱ぎ終わったら新入りもおいで!」
ツガに頼ろうにも肝心のツガはお風呂イベントにワクワクとしていた。
2人は脱衣所で震える事しかできなかった。