3人のメイドと1人のショタ
「カズヤさん大変ですよ! 起きてください!」
いつもは9時まで寝かせてくれるミカーヤが、今日は7時にカズヤを叩き起こした。
カズヤは時計を見て目をこすりながら体を起こして、ベッドから立ち上がった。
「どうしたのこんな時間に、なんかあった?」
呆けているカズヤがミカーヤの方を見ると、水と着替えを持って焦りながら足踏みしていた。
「どうしたもこうしたもないんですよ! お金が全部なくなりました! あとこれ!」
話し終えると同時にミカーヤはカズヤに水をぶっかけた、目覚ましのつもりなのだろう。
以外にも水は温水で、カズヤに配慮はあったようだ。
「お前後でシーツ洗濯しろよ、俺しないからな。で、どういう事?」
「借金です! 酒場を壊した時の、借金あれで終わりじゃないんです!」
「まぁ、そうだろうな。弁償代金で俺らが渡したの数百万だし、終わりなわけないだろ。あれ王都1の酒場だし、億はくだらないだろ。3億は賄賂として使っただけで、借金返済には使われてないしな。」
話を理解したカズヤはミカーヤに渡された着替えを着ると、ご飯を食いに1階に向かった。
「じゃ、早速食って酒場行くか」
こういう事に慣れたカズヤはスムーズに事を進めて、早速酒場へ向かう準備をした。
「七支刀持ったし準備OK」
「見ろよカズヤ。俺も武器を買ったんだぜ」
声をかけられ後ろを振り向くと不思議な形状をした大剣を持っていた。
「あれ? お前近接だっけ」
「これは近接武器じゃないの。これはマカナって言ってな、見た目とは裏腹に使用方法は杖なんだぜ。この先端の大きな黒曜石に魔力を込めるとキャノン型、ブレード部分に細かくついた黒曜石に魔力を込めるとマシンガン型になるんだ。」
「へーすげえな」
「カズヤさん私も武器買ったんですよ」
今度はミカーヤに呼ばれ、カズヤはミカーヤの方を向いた。
「三節棍だすげえ」
「ふふん。いいでしょうこれ」
準備が整った3人は酒場へ向かった。
「いいやつないかな〜」
「お、カズヤ! いいやつあったぞ」
シュウキに呼ばれてカズヤは急いで向かい、紙を取って確認をした。
「えーっと。『娘を助けてください 報酬金1000万円 女性限定』たっか! なにこれ! でも、女性限定……」
カズヤはクエストの紙を見たあと、2人の容姿を眺めた。
そして自分の容姿も確認したあと、カウンター席に向かった。
3人は地図に描かれた屋敷に向かった、そこは王都の南西にある巨大な豪邸だった。
「ミカーヤお前が頼りだぞ、ちゃんと頼むぜ」
「任せてくださいよ! こういうのは私が一番、精通していますからね!」
指定された小屋に向かい3人は身なりを整えて、深呼吸してノックをした。
「入ってください」
畏まった3人とは裏腹に、小屋の中から剽軽な女性の声が聞こえた。
恐る恐るミカーヤがドアを開けて中に入ると、小屋の中央に椅子の背を向けて座った女性がいた。
小屋のドアがしまった音が聞こえると、女性はゆっくりと椅子を回転させて振り返った。
女性は容貌はツインテールの金髪に、フランスの貴族のようなカールがかかっており、鼻は高く目は緑色をしていて、貴族を体現したような姿だった。
「ようこそ、いらしてくれまし……あらあらあら! なんて可愛らしい方なのでしょう! オホホホホ」
ミカーヤの姿を見るなり女性椅子から降りて、ミカーヤに駆け寄った。
女性は柔らかな笑顔をしながら、ミカーヤに顔を近づけた。
「なんてプニプニでスベスベなお肌! ちっさくて可愛いわぁ!」
「あ、ありがとうございます……それで、クエストの件ですが」
頬を弄くり回されながらも、ミカーヤは話を進めようとした。
ミカーヤに指摘された事で、女性は手を話して頬を赤らめた。
「あら失礼! 話を進―――」
ミカーヤの心配をしようとシュウキが顔を向けると、女性と目があってしまった。
シュウキと目が合うと、女性は話していた事も忘れて完璧に停止していた。
「あらあらあら! なんて整った綺麗な顔立ちでしょう! 可愛いのに美しい顔立ちだわ! 今どきの言葉で言う……クール! そうクールよ! オホホホホ」
次はシュウキが目をつけられて、体を弄くり回されていた。
この調子で行くと次は自分だと気づいた、カズヤは気配を必死に消した。
「クールねあなた、最高よ! 身長が高くて、見上げる首が少し痛いけど。えーっと、最後はあなたね! 可愛らしいバニーふ……」
女性は可愛らしいバニー服に気づいてカズヤに抱きついた。
想像と違ってそこには柔らかな感触は無く、岩石の様な硬さがあり、女性は驚き顔を引いた。
「あらあらあら、あなたまさか……」
「わ、私は男性ホルモンを入れたのです! 心は女で候、しかし体が男になりたがってたでありんす! 故に男性ホルモンを入れて、筋肉の活性化を! そして誰でも護れる肉体を、手に入れたでザマス!」
完璧に混乱したカズヤは、支離滅裂で語尾めちゃくちゃな喋りをして誤魔化した。
「あら、そうなの! 失礼な事を聞いたわね! こんな可愛いバニー服を着てたら、女に決まってるわ! あら? この股間の盛り上がり……」
「あ、あの日の用品で―――」
言い終わる前にカズヤは顔面にミカーヤの膝蹴りを入れられた。
ミカーヤは倒れたカズヤに追い打ちで、股間にサッカーキックを叩き込み、盛り上がりを平にした。
「ど、どうかされました? お2人さん。バニーの方が泡を吹いていますが、大丈夫なのかしら?」
「大丈夫です! すみません、驚かせてしまって。御婦人の前で、はしたない言葉を口走ろうとしていたので制裁を。それで、話を進めていただきたいのですが!」
死にかけているカズヤを尻目に、自分も同じ言い訳をしようとしていたシュウキは、安堵して考えを破棄した。
ミカーヤに指摘されると、女性は両手をパタパタさせて、照れながら椅子に座った。
「忘れてたわぁ、私可愛い物に目がなくてね。改めてご紹介させていただきますわ、私はキクラよ! 早速クエスト内容を説明しますが、主人には冒険者と言う事を、内緒にしてくださいね」
キクラは口の前で人差し指を立てて、2人と死体に説明した。
「依頼の娘を助けて欲しいのですが、主人は冒険者を嫌ってましてねぇ。そこで貴女達をメイドとして雇って、主人の目を欺いているうちに、解決してほしいのです! 早速ですがこれを」
説明をし終えると3人分のメイド服を用意した。
メイド服は手のひらサイズで小さかったが、魔力を込めると瞬く間に大きくなった。
「すごい技術ですね、これ。どこのブランドですか?」
「私の主人の作った技術よ! 主人は1代で大成功した努力家なの! 着替えたら本館の玄関に来てください! 私が案内しますわ!」
3人分のメイド服を渡したのキクラは、小屋から出ていった。
キクラが出ていったのを確認すると、シュウキはカズヤに駆け寄った。
「カズ……うわ! 赤黒い泡吹いてる……」
シュウキは泡を吹いているカズヤを何とか起こして、メイド服を着せると本館に向かった。
流石豪邸といったところか、門から近かった小屋から本館まではなんと1KMはあった。
「そういえばお前、なんでメイド服は変わってないんだ?」
本館に向かってる途中、シュウキはカズヤの異変に気づいた。
「この服魔力含まれてるだろ? 武器とかもそうだけど、魔力が含まれてる物はバニーにはならん」
2人が話しながら走っていると、前方に人影が見えた。
目を凝らしながら近づくと、10分前に出発したはずのキクラがいた。
「あ、あれ? なんで?」
「あらあらあら、流石早いわね! 先に本館で待ってて、後で追いつくわ!」
キクラさんに言われた通りに、3人は本館に走った。
本館について1時間が立ったがいまだに、キクラは玄関前に現れなかった。
キクラの身に何かあったのかと心配したが、屋敷は騒がしくない様子を伺うと、考えは消えていった。
3時間立ってもキクラは現れない。
時折忙しそうに働くメイドと目が会い、3人は恥ずかしそうにお辞儀をした。
5時間立った時、ようやくキクラが玄関前に姿を表した。
キクラはバスタオルに見を包み、ホカホカと湯気を上げながら鼻歌を歌っていた。
「今日もいい湯だったわぁ、最高の湯加減だったわねぇ。自室に戻って、髪やお肌の手入れをしなきゃね。」
「あ、あの」
カズヤに声をかけられて、キクラはビックリしながらカズヤ達を見た。
3人を見た途端キクラは目を大きく見開き、口を大きく開けて、自分の言ったことを思い出した。
「あらあらあら! ごめんなさい! すっかり忘れてたわ! 早く上がって、ごめんなさいねぇ」
3人はキクラに連れられて、部屋に入った。
「ここは私の部屋よ、何かあったらここに来てね。それは置いといて、ほんとごめんなさいねぇ。ずっと待たせちゃったわぁ、もう遅いけど一つだけ案内だけさせて」
キクラが部屋を出ると、3人は疲れ果てた足腰を動かして、キクラの後を追った。
廊下に出て階段を登ると、髭を蓄えた渋い男と鉢合わせた。
「おぉ、キクラ奇遇だな。お前に頼みたい事が――なんだ、またメイドを雇ったのか。お前は可愛い物には目がないからなぁ」
「可愛いでしょ! みんないい子よ! 後ごめんなさい、今少し手が離せないの。また後でね、あなた」
話を聞く限りこの男が主人のようだった。
3人は主人にお辞儀をした。
お辞儀された事に気づいた男は3人に近づいて、手を差し出した。
「これからよろしく頼むよ。君はちっさいねぇ。おや、君は身長が僕と同じくらいだ。君も身――」
主人はカズヤを見るなり固まった。
それに気づいたカズヤは、見たこともない満面の笑みで手を取って力を込めた。
「い、いたた!」
「私は可愛らしい、メイドですよねぇ?」
カズヤはどんどん手に力を入れていった。
「かーわーいーいーでーすーよーねー?」
「か、可愛いよ! 君は立派なメイドだ! よろしく頼むよ!」
認められたカズヤは手を離した。
痛みから開放された主人は、手を抑えながらキクラに手を振りながら、廊下の奥に逃げていった。
「顔をしかめてどうしたのかしら? まぁ、いいわ! 案内したいって言った部屋は、あと一階上よ!」
3人はキクラについていって、階段を登ると廊下の一番奥の部屋に向かった。
「ここよ、ここは娘の部屋なの。娘は10ヶ月ほど前に幽霊を見たいと言ってクエストに出したのだけど、つい最近ついに王都で幽霊が捕まえられたの。そして引き取った後に取り憑かれちゃってね、今や誰も手を出せないの」
娘の話をしだすとキクラは気を落とし始めてしまった。
「御婦人はここで待っていてください。私達3人が一度中に入って、様子を確認するので」
キクラをなだめると、3人は用心しながら部屋に入った。
部屋の中は真っ暗で、電気がついてなかった。
カズヤが合図を送り、ミカーヤはそれに答えて魔力で光を灯した。
「誰だ。またなにか用か? どうやっても俺は、この体を出ないぞ?」
声のする方を向くと、おでこを晒した金髪ロングの女の子がベッドに座っていた。
娘はカズヤ達を睨みながら観察して、ミカーヤに気づいた。
「ん!? あの時の可愛い女の子だ! 会いに来てくれたの!?」
娘は唸るような低い声から、可愛らしい男の声に早変わりした。
男の子の声に聞き覚えがあるカズヤは、幽霊の正体に気づいた。
「あ! お前俺が捕まえたクソガキだ!」
「あ! 頭おかしいクソ野郎!」
カズヤの存在に気づいた瞬間、娘は動物のような威嚇をし始めた。
「気をつけろみんな、やつは幽霊だ。だが安心してくれ、俺は街で除霊グッズを買って、御札を手に入れたのだ! 取り憑いたものに貼り付けて、ダメージを与えれば幽霊は死ぬ!」
そう言うとカズヤは、ポケットから御札を取り出した。
カズヤの作戦を知りもしない幽霊は、恨みの衝動のままにカズヤに飛びついた。
「お前に取り憑いて殺してやるぅ!」
御札を高らかに見せびらかしていたカズヤは、幽霊が突っ込んでる事に気づかず、心身の侵入を許した。
「あ、あう……でも大丈夫! こんな事もあろ―――」
話を聞く前にシュウキはカズヤから御札を奪い取り、おでこに貼り付けた。
貼られたのを確認すると、ミカーヤはすかさずみぞおちに蹴りを入れ込み、押し倒した。
蹲ったのを確認すると、2人でカズヤを蹴り回した。
「オラァ! オラァ! ゴミガァ!」
「お前不用意にあの日の話すんなよゴラァ! 女の敵がぁ!」
「は、話を聞けって!」
話を聞かずに2人はカズヤを殴り蹴り続けた。
「あ、あれ見ろ! あれ! 幽霊が娘に戻ってるだろ! 御札を体にも貼ってたの! 話聞け!」
血まみれのカズヤが足を震えさせながら立ち上がった。
音や声を聞いてキクラが慌てながら部屋に入ってきた。
「あ、あの! ドタドタすると新入りだし、クビになるかもしれないわ! 今日は遅いし、お休みになって? あら? メイド服は赤じゃなくて、白だったような……」
「気にしないでくれ……」
「あら、そうなの。とりあえず、娘の部屋は教えたし、今日は部屋で体を休めて? 本館から南方向にある、屋敷がメイドの家よ!」
2人と瀕死はキクラに伝えられた場所に向かうと、本館に負けず劣らずの立派な屋敷があった。
中に入ると何十人もの美少女達が、くつろいでいた。
「あ! 貴方達今日の昼頃からいた新入りね! よろしく! 1人部屋にする? それとも、3人共同じ? あ! 自己紹介を忘れてたわ! 私の名前はオコナよ!」
ソファーで転んでいたポニーテイルの女の子オコナが、カズヤ達に気づくなり駆け寄ってきて、嬉しそうに話し始めた。
「じゃあ、共同で」
「共同の空き部屋はね! 3階まで階段を登って階段から左手にある部屋は奥の部屋まで、開いてるから好きなところ選んでね! 貴方達と仲良くなりたいな! 好きな食べ物は? ここのみんないい子だよ! あ、お仕事のことも教えないと! あ~、ワクワクするね!」
目まぐるしく変わる話題に2人と瀕死は目を回しながら、適当に相槌をした。
数十人もいるメイド達とこれから仲良くやっていけるのか、3人のこの先を思いやられる。
カズヤそのうち失血死するかも