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17 『ルナアリア』と形見

 さすがに毎日誰かしらと一緒に過ごすのは疲れてしまったらしい。


 熱を出して寝込んだ私に、医師は「過労ですね、数日安静にして過ごしてください」と言って、侍女も最低限の身の回りの世話をするだけで、私は慣れた『一人きり』の時間を過ごしていた。


 ただ、息が苦しいのと、頭が熱くてぼんやりするのが辛い。元気な時に一人で過ごす時間は欲しいけれど、私は自分で教育を選んだのだから、文句を言う筋合いもない。


 お母さんの形見の占い札を抱き締めて目を閉じる。そういえば、具合が悪くなるということは今までなかったかもしれない。運動をしていたのもあるのかな。この部屋の窓の桟も丈夫そうだし、元気になったら懸垂をまた始めようか。


 とりとめもなくそんな事を考えているうちに、いつの間にか私は眠っていたようだ。カーテンも閉め切られ、少しだけ開けられた窓から風が入ってくる。薄暗い部屋の中で、私は占い札をお守りにして眠りについた。


 占い札は24枚ある。私が特に好きなのは、『月』と『時空』のカードだ。


 月は正位置より逆位置の方がいい意味を持つらしいが、私は月の正位置も好き。曖昧や不安という意味をあらわす時に出て来るカードだけれど、何もかも明瞭に決められた今の生活に対して、私が求めているのはそういう感情かもしれない。


 ウィルさんの事もある。私はウィルさんが好き。ウィルさんは……私が言葉足らずな事を知っていて、待っていると言ってくれた。君が想像しているよりも、と。


 占い札には1枚1枚、何か、人格や感情のような物が籠っている気がする。私が占いをする時に語り掛けられていると感じるからかもしれない。でも、月はそういう人なのだ。


 優しくて曖昧で、でも時にはっきりと明確に背中を押してくれるような。夢か現か分からない今のような状態な時は特に、月のカードの私に似た感覚……名前を貰うまでの私のような曖昧で、それで意思を持って行動する、そんな私の鏡写しのような、そんな性質を感じる。


 時空のカードはとっても大変。このカードは勝手に私を知らない所に連れて行く。過去も未来もしっちゃかめっちゃかで、私は時空のカードとのお喋りが一番苦手。


 でも、知らない事を知らせてくれるという意味では、私にとっては大事なカード。


 私はまどろみというには深く、熟睡というには浅い睡眠の中で、占い札の山からこの二枚が抜け出して私の上に浮かんでいる事には気付かなかった。


 そして、不思議な夢を見ることになる。


「ルナアリア」


 真っ白な空間で、私は知らない……いえ、一度だけ聞いた声で、名前を呼ばれた。


 私は離宮を出たときのような白いワンピース姿で、振り返ったそこに居たのは、過去を視たときに居たお母さんがいた。

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