13 『ルナアリア』を窓からさらう人
「ルナアリア、起きてる?」
「ウィルさん……?」
お昼が過ぎて夕暮れが近い日の傾きをしている頃に、こんこん、と窓を叩かれた。
コルセットに慣れる為と今日からつけっぱなしになったコルセットとドレスのまま、大きなベッドで食休みからの昼寝をしてしまっていた私は、窓の音と声にそっと起き上がって窓に近付いた。
「ウィルさん、どうしたんです?」
「部屋で母上の相手をするだけじゃあつまらないだろう? せっかくだから、広い庭を案内するよ。今日だけじゃ回り切れないけどね」
「それは……とても、いいですね!」
私は露骨に喜んでしまった。もともとじっとしている性質ではないのだ。
目を輝かせる私に、ウィルさんはくすっと笑うと、靴を履いているとは言え、おいで、と窓に招き寄せた。
そのままウエストをひょいと掴まれて持ち上げられると、軽々窓を飛び越えさせられて、外に出てしまう。
「い、いいんですか? 玄関からじゃなくて」
「遠回りだろう? それに、室内だと、ウィリアム王太子殿下、と呼ばれるのが少しね、寂しい」
「? そういうものですか」
良く分からないが、私も今更『名無し姫』と呼ばれるのは寂しい気がする。せっかくルナアリアという良い名前を貰ったのだから、それで呼ばれたい。
ウィルさんが、すっと片腕を差し出して来た。最初意味が分からなかった私はきょとんとして首を傾げて、同じように腕を差し出すと、また小さく笑ったウィルさんが私の手を反対側の手で取って、自分の腕に載せさせる。
今迄は動きやすい平靴やそこの平らな厚底靴を履いていたけれど、ハイヒールというのが女性の主流らしい。あとは、私服のドレスだとブーツが多いそうだ。
今はハイヒールの私は、なるほど、掴まって歩くとこんなに楽なのか、と実感していた。歩調も合わせてくれている。
「ルナアリアの名前の話は覚えている?」
「えぇと、月がどうということは……髪が伸びたりしたのでちょっと驚いてアリアの方を忘れてしまって」
「ふふ、そうだよね、髪が急に伸びるなんてびっくりするもんね」
「人生で二度と無いでしょうね。それとも、ばっさりやったらまた伸びるのかな?」
「……長い方が似合っているから、それはしないでほしい」
私の思いつきと好奇心は、割と真剣なウィルさんの言葉で止められてしまった。
他人の……それも、私の髪型を残念がる人なんていないと思っていたのに。なんだろう、また前のように、頬が熱くなっている気がする。今は腕を預けているから、抑える事はできないけれど。
「ウィルさん、私の顔、赤くなっていませんか? 何なんでしょう、この間から、これ……胸もドキドキするんです」
「――……そう、だね、リンゴのように赤いよ。可愛いね、ルナアリア」
一瞬虚をつかれたように目を見開いたウィルさんが、目を細めて甘く笑う。その上で褒められると、私の顔はどんどん熱く、胸がどきどきしてしまう。
「あぁ、着いたよ。ルナアリア、今が一番きれいな庭だ」
「……っ! ひ、ろい!」




