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私と先輩と大福丸の話  作者: 千代丸
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というか、今更ながら何故この人はまだここにいるのだ?

現場に居合わせた責任感を感じているのなら無用の長物だ。

一緒に帰るよう言った仙波先生の指示を無視して単独行動に走ったのは私だし、幸いその私自身も無傷だ。

アンポン男子先輩はただの一生徒なので責任を問われることは一切無いだろう。


なんていうかもう色々思うことはあるが、単刀直入に今の気持ちを述べれば『1人にさせてくれ!!』だ。

なので隣りに座るアンポン男子先輩には速やかに帰宅して欲しかった。

帰れ帰れ帰れ帰れ帰れと隣りに怨霊めいた思念波を送る。


『さっきの、まだポケットに入ってんの?』

『…はい。』


お得意の空気の読まなさでアンポン男子先輩は私の熱い思念に気付かずに新たな話題を振ってくる。


先輩は駆けつけた警官に大福丸のことは一切話していなかった。自分が駆けつけた時に男が勝手に頭を抱えて気絶したと。

もしや大福丸が巨大化したのは錯乱した私にだけ見えた幻覚だったのでは?と現実的な案が頭をよぎるが、続くアンポン男子先輩の一言でその期待は打ち砕かれた。


『あれ、ハムスター、だったよな?何かあり得ないくらいデカくなってたけど、』

『何のことですか?』

『…えっ?』

しらばっくれてしまおうかと思ってとぼけて見たが、予想外に絶望感溢れる顔をされてしまった。

このまま私がとぼけ続けると、彼は今後の人生ハムスターを見るたびに自ら作り出した幻覚に疑心暗鬼に駆られることになるだろうという未来予想図が私の良心を痛めた。


『野生のハムスターは日々フクロウの襲撃と戦っています。巨大化して身を守る術を身につけるくらいに遺伝子が進化することもあるのかもしれません。』


しらばっくれ作戦から、ごまかし作戦に路線変更を試みる。


『は?』


随分と迫力のある『は?』だった気がする。


『てか、何で持ってんの?何かやばくない?それ』


『これ、うちの子かもしれないので。』


『は?』


本日3回目の『は?』

なんと感じの悪い口癖だろう。


『うちで飼っているハムスターに、何だか似ています。帰って確認します。』


『ハムスターって種類同じなら全部同じじゃないの?しかも違ったらどうすんの?』


『毛の色とか、目の形とか、顔つきとか、動き方とか、結構違いますよ。あと違ったら保健所に持っていきます。』


それっきりアンポン男子先輩は黙ってしまった。巨大ハムスターを飼う私に恐れをなして沈黙したのかと思いきや、チラリと横目で顔を見ると何やら考え事に没頭している様子だった。


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