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私と先輩と大福丸の話  作者: 千代丸
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大福丸はパールドワーフハムスターという種類のハムスターだ。

初めて見た大福丸は、ペットショップのプラスチックのケースの隅で客達に尻を向けて丸くなっていて、ハムスターというより毛の生えた大福だった。

ケースに貼られたら説明文に

”とっても怖がりで恥ずかしがり屋なハムスターだよ!たくさん優しくしてあげると仲良くなれるよ!”

と書かれていたのを見て、なるほどと思った。

恐怖ゆえに人間達の値踏みする視線から少しでも逃れようと尻を向け、しかしおがくずの中に完全に身を隠すことは己の矜持と、根拠なき救いの期待から許されない。


ならば私がこのちっぽけなものの存在しない救いの神になろう。



幸い、いきなりハムスターを連れて帰ってきた私のことを母は驚きはしたものの飼うことを許してくれた。

母が仕事で遅い平日の夜、私が1人で居るのが心配だったので、ちょうどいいとのこと。

ハムスター1匹増えたところで何の戦力にもならないのでは?と思ったが、せっかく貰った許可を得たのに水を差すようなことは言わない。

マンションはペット不可だが、ハムスター程の小動物なら許されるらしい。

小屋や餌も一緒に買ってきたので、母は私の予算を心配していたが、お年玉の範囲で購入したので援助を断る。

ただし今後の餌代だけは買い物代で渡されてる資金の中から出すようにと言われ有り難く了承した。


ゲージを組み立てて、いざ大福丸のはいった箱をそっと開封する。いくつか空気穴は空いているが妙に静かなので少し心配になっていた。

箱の中の大福丸は何と仰向けでひっくり返っていた。

まさか、突然の死の予感に私が青ざめていると、大福丸はひくひく髭を動かして大きなあくびをした。

恐る恐る箱をゲージにいれて傾けてやると、やれやれと音声がつきそうな様子で大福丸は新聞紙の敷かれたゲージの中にちょこちょこ移動する。そしてエサ箱のひまわりの種をあるだけはお袋にいれると、さっさと私の作った牛乳パックの中にはいって毛の生えた大福になった。


私がゲージの前で己の壮大な勘違いに身悶えたのは言うまでもない。


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