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私と先輩と大福丸の話  作者: 千代丸
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5

集団下校とは、自宅の近いもの同士が安全のために集団になって共に下校することだ。

私とアンポン男子先輩の自宅の位置関係は知らないが、そもそも2人では集団と言えるであろうか。そもそも見知らぬ他学年の男女2人では道中の話題が見つからないことこの上ない。

私は断るすべが見つからず、理科室から玄関までの廊下で、私のハッピーな家路を奪ったアンポンタン男子先輩の後ろ姿に心の中で毒ついていた。


垢抜けない髪の毛しやがって。

制服、三年のクセに一年生ばりに校則通りに着てるし。

手が妙にデカくて爬虫類みたいで恐ろしいんだよ。


上履きからスニーカーに履き替えて、外に出ると、アンポン男子先輩はすでに外に居て私を待っていた。


『家どっちらへん?』

『あ、え、っと門でて、右曲がって商店街の方で…』

『は?』

私は混乱した!道の説明は私の最たる不得意分野。それを緊張感溢れる他人の前でするハードルの高さ!

『は?』という威圧的な響きに私の肝は縮み上がった。

『とにかくすぐ近くなので1人で帰れます。』と早口で付け加えると、振り返らずに駆け出した。

早く早く早く帰りたい。今日は最悪な日だ。早く帰って漫画を読みながらおじやを食べて、寝る前に大福丸と遊ぼう。私は走りながら家に帰ってからの幸せな計画を頭に浮かべて精神の安定をはかる。

普段から登下校と近所の買い物くらいしか運動していない私の身体はすぐに根を上げて、電信柱に手をついた息を整える。


『ねぇ!』


背後から聞こえた低い男の声に、びくりと肩が震える。

はぁはぁと息を荒げながら振り返ると、声の主は予想とは違う知らないキャップを被った中年の男だった。

商店街にはまだたどり着いていない、薄暗い公園の脇道。

男は一歩近づいて笑顔で尋ねる。

『この辺でご飯食べれるお店知らない?まだ引っ越してきたばっかりであんまり詳しくなくて。』


男の後ろの道にワゴン車が見えた。

後藤先生の近隣の不審者情報をすぐに思い出したが、そんなまさかとも思う。


『すみません、分かりません。』

首を振りつつ一歩下がる。


『ファミレスとかでもいいんだけど、困ってるからさ。案内してよ。』

男の声は笑顔とは反対に段々威圧的になる。

怖い。怖い怖い怖い怖い。

走ろう、商店街か、1番近い家か、でも、もし追いつかれたら、インターホン押した家が誰も居なかったら。叫ばなきゃ。でも喉がすごい細くなって、息が上手く吸えない。


ヒュウと声にならない音が喉からでて、足がガクガク震えてきた。


声にならない叫びは思念となって消える。


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