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私と先輩と大福丸の話  作者: 千代丸
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『じゃあそことそこ、あそこと手前の子、あと奥の2人、2人1組で備品紙見て在庫と合ってるか確認して、汚れてたら洗って。終わった人から帰ってね。』

集まっていた真面目な6人の理科委員会は言われた通り先生の言葉に従い粛々と点検清掃を始めた。

私のパートナーは名も知らぬ三年の男子だ。

男子先輩は備品表を私に渡し、在庫チェックをするように言い、自分は汚れているものを洗うと言う。

私は男子先輩がガチャガチャやり出した棚の反対端からチェックを始めた。

点検清掃といっても、所詮何の責任も報酬も無い我々理科委員会は数分それっぽくガチャガチャやって紙の空欄に日付と『済』を書けばそれで終わる仕事なのだ。私は気持ちよくガチャガチャやりながら今夜のおじやにいれる具に思いを馳せる。

『終わりました〜。』と女子生徒が備品表を先生に提出する声で我に帰り、男子先輩もそろそろガチャガチャに飽きた頃かと横目で確認する。

私は愕然とした。

何と男子先輩は大掃除のごとく、ひと棚の美品を全て机に並べて、一つずつ水道で洗っている。潔癖症か何か知らないが、そういうのはお家でのみ発揮する特殊技能にして頂きたい。このアンポンタン!と私は心の中で力強く罵る。

男子先輩あらためアンポン男子先輩は私の熱い呪いの視線に気付いたのか、こちらに振り返る。

『あ、備品チェック終わったなら、こっち洗い終わったやつ拭いてもらえる?』

『はい。』


ちっげーよ!おめ、ばっかじゃねえの?!100%帰りてぇーんだよ!と叫ぶ心とは裏腹に、従順な私は返事をし乾いた雑巾で黙々と器具を拭きあげていく。


アンポン男子先輩は結局棚にしまわれていた全ての器具を洗った。もちろん他の生徒はとっくのとうに帰っている。

余程物を洗うのが好きなのだろう。きっと将来は家事を積極的にこなす良き夫になるだろうが、成長過程の現在は空気読めない自己満足野郎だ。

私は理科委員会で二度と彼と近くの机に座らないことを決めた。


『はい。お疲れさん。』

仙波先生は死んだ目の私から備品表を受け取りながら壁の時計を見た。

『2人、部活はいってるの?』


『夏で引退しました。』

『はいってません。』


答えが出そろうと、先生は何故かなら良かったと頷く。

『5時過ぎちゃったから、2人一緒に帰って。5時過ぎた時は集団下校させるように職員会議で言われてるから。』

仙波先生はそう仰って理科室の鍵を閉めて去っていった。

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