第九.五部 第八章 嵌め込み
エテルノに着いた。
着いてしまった。
五月蠅いヤマトのいつもの国王とか宰相とかの面々と一緒だが、なんか、しんどい。
ヤマトの衛士達が俺とかパトリダの側なのに、俺とアオイとかを護衛対象にしてるのが辛い。
「パトリダの商人なんだから、護衛はいりませんよ」
俺がたまりかねて断った。
「いえ、我が国の大切な方ですから」
衛士達が答える。
目が優しい。
ぼっちだった頃と違うんだが、救世主だなんだと呼ばれてた時とも違う。
なんか、被害にあった人達を同情するような目だ。
猛禽にやられたからか?
せつない。
王宮への門が開き、ココドウリロの連中がピシっと並んで、我々ヤマトとパトリダの面々を迎えた。
ココドウリロの連中が微妙に俺やヤマトの人間から視線を背けるのが気になる。
良く見ると、それがヤマトの女性に対して酷く顕著だ。
少し怯えてるように見える。
「良く、来てくれました」
ヒトミ叔母さんが笑った。
すでにヒトミ叔母さんの立ち位置がエテルノ側にいる。
結婚前にそれはどうなんだろうか。
ココドウリロの連中は震えるほど真剣に護衛してる。
なんか、やったな……。
「え? お前、まだ結婚前なんじゃないの? 」
国王が不思議そうだ。
「いえ、もう皆さんが王妃様扱いしてくださるので」
ヒトミ叔母さんがニッコリ笑った。
「ねぇ」
ヒトミ叔母さんがココドウリロの連中に声をかけた。
「「「もう、我々の王妃様であります」」」
直立不動でココドウリロの衛士達が一斉に答えた。
俺がミヤビ王女とか見ると、皆、ああって顔してる。
暴れたな、これ。
あのカルロス一世やアポリトが抑えられただけで動けなくなるんだから、そりゃ逆らえんわ。
その上にモンスター使いだしなぁ。
「とりあえず、結婚式は明日だっけ? じゃあ、ユウキはヤマトの宿泊所で今後の話をするか」
国王が俺に言った。
殆ど強制みたいな言い方だ。
「は? 今後の話? 」
「お前の結婚だよ」
「くはっ! 」
こ、ここで言うか。
やばい!
やばい!
「まあ、甥のお前もおめでたなのね」
ヒトミ叔母さんが嬉しそうだ。
狙ったな、この糞国王!
国王と宰相が含み笑いしてる。
大貴族の面々も目が笑ってる。
本来なら、味方のはずのアオイとかも頬を染めて俯いてる。
やばい、否定できない。
否定すると俺が死ぬ。
アポリトが哀しそうに俺を見てる。
やめて、その眼は。
「やったな。おめでとう」
クニヒト大佐が本当に嬉しそうだ。
むかつく。
「じゃあ、もし良かったら。エテルノは風光明媚ですんで、ここでハネムーンとか式をあげても良いわよ」
ヒトミ叔母が笑顔で提案した。
やられた。
完全に退路を断たれた。
とりあえず、婚約でって逃げれないよな。
うおおおおおお、嵌められた!
「さあ、今日はお義父さんと一緒に語り明かすぞ」
国王が嬉しそうに俺の肩を叩いた。
「お義父さんも一緒にいるからな。アオイとかとも一緒にいろいろと決めよう」
宰相も俺の肩を嬉しそうにポンと叩く。
アオイが凄く嬉しそうだ。
はかったな! はかったな! シ〇アぁぁぁぁぁ! と叫びたくなるくらい嵌められた。
泣きそう。
いつも、読んでいただいて本当にありがとうございます。