第一部 第九章 爆龍王ゴウオウ
すいませんでした。
ファンタジー舐めてました。
居ました爆龍王ゴウオウ。
起こしちゃいました。
てへっ。
でかいなぁ。
洞窟もでかかったけど、三十メートルを超える大きさじゃん。
ハンパねぇ。
「我が眠りを覚ます者どもよ! 汝らは何者ぞ! 」
すげぇ、声だけで山が揺れてるわ。
仲間達が皆泣いてる。
恐怖で泣いてる。
ムラサキまでも泣いてる。
困ったもんだ。
でも、運が良かった。
俺達はちょうど最悪を考えて、敵から奪ったアレクシア軍の騎士の扮装をしている。
それは、もしも敵のアレクシア軍の兵士達が洞窟に調べに入って来ても、俺達も捜索してるんだって逃げるつもりだったのだ。
「どうするのよ! どうするのよ! 」
ミヤビ王女が涙を流しながら俺の胸倉を掴んで揺さぶった。
「まあ、任せろ」
小声で皆に言うと、爆龍王ゴウオウの前に一歩進み出た。
「我が名はアレクシアの騎士アルトマン。王命にて爆龍王ゴウオウを退治しに来た。尋常に勝負せよ」
仲間達がすんげぇ顔してる。
化け物でも見るような目で俺を見てる。
「ふははははははははははは! 面白い! 良いだろう相手をしてやろう! 」
バンッと爆龍王ゴウオウが羽を広げると洞窟上側屋根になってる部分が文字通り吹き飛んだ。
物凄い力だ。
やばい。
洞窟は破壊され山頂は平原に変わり、そこに爆龍王ゴウオウが立っている。
そして、爆龍王ゴウオウはあたりを見回した。
爆龍王ゴウオウがいる山頂に向かって大量のアレクシア軍の兵士達が登ってきているのを見たようだ。
「ふははははははははは! なるほど、随分強気な小僧と思えば、これだけの仲間を連れて来ていたか! 良かろう! 我が力を見るがいい! 」
爆龍王ゴウオウの口から光線が次々と出て、アレクシアの軍勢に当たるとキノコ雲の爆発が連発して起こる。
うわぁ。
あれだけで数千人死んだなぁ。
凄いわ。
「前門の爆龍王に後門のアレクシア軍か! どうする気なんだ! 」
激しい爆発音の中、ヨシアキ大尉が叫ぶ。
「心配するな。私が産まれた国の歴史に答えがある」
「なんだ、それは」
「関ヶ原の戦いと言う大きな戦いの時、逃げ遅れた島津と言う大名がした事だ。我々は今より、敵中を突破して脱出する。目標はアレクシアの国王がいる本陣だ」
「それ、突撃じゃん! 単なる突撃じゃん! 」
クニヒト中尉が半狂乱になって騒ぐ。
俺がそれを無視して叫んだ。
「スキル大逃亡! 」
全力で皆で山を降りる。
俺達が逃げようとしたのを見た爆竜王ゴウオウが激怒した。
「貴様! 逃げる気か! 」
爆竜王ゴウオウが俺達を焼き払おうとすると、スキル大逃亡の力で大量のツタや植物が生えて爆龍王ゴウオウの邪魔をする。
「ちっ、聖樹の力かっ! こんなもの! 」
爆龍王ゴウオウの口から何度も光線が出て、爆龍王ゴウオウの身体に巻きつき邪魔をする植物を焼きはらった。
「許せぬ! 皆殺しにしてやる! 」
爆龍王ゴウオウが次々とアレクシアの軍団を灰にしていく。
キノコ雲が次々と起こった。
その中を俺の仲間達が半泣きになりながらアレクシアの本陣へと突っ走る。
すれ違うアレクシアの兵士達も恐怖で皆泣き叫んでいる。
まさに地獄絵図である。
本陣に向けて突っ走る俺達に向かって、アレクシアの将軍らしき人物が両手を広げて立っている。
後でコンラート将軍だと知った。
コンラート将軍が必死に俺達に叫んでる。
「来るなぁ! 来るなぁ! 」
俺達は、スキルのお蔭で全身が煤けながらも植物達が守ってくれてるのでなんとか死なずに走れるが、コンラート将軍は目の前で蒸発した。
やべっ、爆龍王ハンパねぇ。
そして、アレクシア軍の本陣が近づいてくる。
豪奢な服装をした人物が本陣に見える。
あれがバルトロメウス国王なのだろうか。
なんか半狂乱になっているようだ。
「皆、良いか! 一発ぶち込んだら死んだふりだぁぁぁぁ! 」
俺が轟天を抜きながら叫んだ。
あちらこちらが爆発する中で轟天を構えた。
「構ええええええええええ! いけぇぇぇぇぇぇぇ! 」
叫びながらバルトロメウス国王のいる本陣へ轟天をぶち込んだ。
目の前で大爆発が起こる。
余波の爆風で吹き飛んだ俺達はそのままそこで死んだふりをした。
爆発の仕方が同じキノコ雲で良く似てたので、爆龍王ゴウオウは轟天が使用された事に気が付かなかったようだ。
まあ、キレまくって暴れまくってたので細かい事は気にしなかったのだろう。
爆龍王ゴウオウはあちこちと破壊の限りをつくし、もはや、アレクシアの軍で動くものはいなくなった。
「もう終わりか! だが、貴様らは許さん! 」
爆龍王ゴウオウが羽を広げるとアレクシアの首都の方へ飛び立っていく。
俺達は死んだ真似をしたままにしていた。
もしも爆龍王ゴウオウ戻ってくると怖いからだ。
夜になり、アレクシアの首都の方角が花火のように何度も明るく輝いてる中、仲間の皆は死んだ真似をしたまま、すすり泣いていた。
そうして、大国アレクシアは消えた。
地上から消えた。
まるでマヤ文明のようだ。
巨大な文明がある日突然消えてしまう。
世の中は恐ろしい。
次の日の朝早く暗いうちに、俺達は起き上がるといそいそとヤマトの甲冑に着替え、隠れながらヤマトへと戻った。
そのすぐ後に、南下していたエーデルハイト軍は撤退を決め、こちらに今回の詫びとして大量の賠償金を出すことでヤマトとの和平が決まった。
全面的に負けを認めるそうだ。
「お願いだから、あの男だけはこちらに来させないで」
傲慢で知られるエーデルハイトの将軍達がウサギの様に震えながら何度も何度も頭を下げてそう言ったそうだ。
スギモト公爵か、それともミヤタ公爵か、はたまた公爵たちの配下に恐ろしい男がいたのだろうか。
世の中は広い。
そして、ヤマトの国に平和が戻ったのだ。
めでたしめでたし。