第九部 第七章 猛禽再び
カザンザキスの邸宅を山の切り立った側から、三人の黒装束を着た娘が登っている。
黒装束と言っても、実際の黒だと見えてしまうので黒に近い深い藍色だ。
第四王女のキョウカと第九王女のユイナとアオイの妹ミオだ。
「本当にあの怪しい、ケモミミ女の言う事をしんじるわけ? 」
ユイナがキョウカとミオに声をかけた。
「まあ、でも、この御屋敷にユウキ様がいると言うのは間違いないでしょうし、地下深くに万が一の避難用の部屋がたくさんあると言うのも、昔、私が聞いたことあるし」
ミオが答えた。
「どの道、もう彼を落とさないと私達も修羅になっちゃう」
キョウカも笑って答えた。
「「いや、まだ、私達若いから」」
ユイナとミオが同時に素で答えた。
「私だって若いわよ! 」
キョウカが小声で叫んだ。
「しーーーっ」
ユイナが言った。
「しかし、キョウカもえらく思い入れあるわね」
ミオが聞いた。
「ちょっと、王宮の図書館でユウキ様に会った事があるの」
「えー、猛禽に乙女心なんているの? 」
ミオが真顔で驚いてる。
「いいじゃない。私にとっては大切な思い出なんだから」
キョウカが口を尖らせた。
「しっ」
ミオがキョウカを制止した。
目の前の林の奥にアサナトの完全武装した兵士が二人立っている。
「スキル蜘蛛の糸」
ユイナが小声で言うと、アサナトの二人は口元から全身まで一瞬にして、ぐるぐる巻きにされた。
「アサナトって強いって聞くけど、思ったより、間抜けね」
「ああ、あそこはトップのアポリトが凄いだけの組織だから」
ミオがにべもなく答えた。
三人が邸宅の壁までたどり着く。
「さあ、ここからはもう一気で行くわよ」
ミオがキョウカとユイナを見た。
「地下八階ね。随分深くまであるのね」
キョウカが建物が透けて見えるような図を見た。X線のようなもので透過して撮ったもののようだ。
「しかし、これ、凄いわね。何のスキルで作ったのかしら? 」
キョウカが不思議そうだ。
「さあ?」
ユイナが肩をすくめた。
「でも、何が起こっても大丈夫なように、深く作ってあるとカザンザキスのお爺様がおっしゃった通りだから、まず間違いないと思うわ」
ミオが断言した。
「おい、お前等何者だ! 」
アサナトの兵士が五人、こちらに走ってくる。
「スキル光臨」
キョウカが言った途端、目の前に信じがたいほどの光が輝いて、アサナトの五人の兵士が目を抑えて動けなくなる。
「「「目が! 目が! 」」」
アサナトの兵士がのた打ち回っている。
「じゃあ、恋の真剣勝負やらせてもらいます」
キョウカが言うと、ミオとユイナが頷いた。
「スキル炸裂」
ミオがカザンザキスさんの邸宅の壁を破壊した。
三人が壁を破壊すると同時に凄いスピードでカザンザキスさんの邸宅に侵入した。
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