第九部 第二章 仕事
「熱々なのは良い事じゃが、それよりも大事な事があるでのう」
樹老人がいきなり現われた。
むう、樹老人さんが来てほっとする事になるとは。
今頃になって、部屋に入ってくるクニヒト大佐がむかつく。
カザンザキスさんもアポリトと入ってきた。
「兄弟。索敵したが、近隣に敵らしい影は無い」
「聖樹様の話でも、タンカーも何も来ていないとおっしゃってる。一体、どこから来たんだ? 」
カザンザキスさんも言った。
「いつものお父さんの手だね」
ミツキが笑った。
「恐らく、親父は物凄い少ない数で来てるね」
俺も答えた。
やっかいだな。
親父の得意なやり方だ。
「そもそも、君のお父さんって何者? 」
カザンザキスさんが聞いてきた。
「……昔はアメリカの傭兵会社にいたとも聞いたんだけど、死ぬ前は仕手筋みたいな事もしてた」
「仕手筋? 」
「株式会社って言う資金を出し合ってする会社が、大きな市場で出資した株券だけで売り買いされてるんですよ」
俺がカザンザキスさんに説明した。
「ああ、この間言ってた、出資を募る会社の事だね」
「ええ、あれがさらに進化して、出資した分を株券として欲しい人達と売りたい人達の間で取引されてるんです」
「ほぅ、それは面白いな」
「利益にあわせて配当とかも出るんですが、まあ、その会社の業績や人気などで株価が上下するんです」
「骨董品とかそんな感じかな」
「それに似てるかもしれませんね。将来の利益を見込んで、まだ評価が低いうちに買って高くなったら売る訳です。これを将来の話をでっちあげたりして、買い占めてた株価の低いものを無理矢理上げて、売り抜けるわけです」
「無理矢理上げる? 」
「まあ、インチキですね。小さな会社の株を買って大きな会社と取引が始まるとか、アナリストとか言って株の評価をする人達と組んで上がるって騒いで仲間同士で売り買いして株価を上げながら売り抜けるわけです」
「はあ、面白い職業があるんだね」
カザンザキスさんがため息ついた。
「あれ? 私が聞いた時は養殖とかやってたはずだけど? 」
ミツキが首を傾げた。
「ああ、昔の話だろ。メダカとビーシュリンプだかの珍しい奴が出来たら、それを交配で固定させて、売ってたんだよな」
「え? まだやってたと思うけど」
「先行で新品種作ると、相当初手の人は儲かるからね。諦めずにやってたんじゃないの? 」
「結局、何で食べてたんじゃ? 」
樹老人が呆れたように聞いてきた。
「儲かるものがあったら、すぐ動くと言うか」
「白いタイ焼き屋はやって、すぐにヤバイって引いてたよね」
ミツキが頷きながら答えた。
「タイ焼き? ってあれか? 君がこちらで外食で出店しようとした奴か? 」
カザンザキスさんが俺に聞いてきた。
「ええ、あれの食感が違う奴ですね」
「こう、考えるとカタギじゃないよね」
ミツキが笑った。
「んーでも、ヤクザの杯なんか受けてないと思うしな。まあ、いかがわしいと言えばいかがわしいんだが、警察官僚とか政治家とか大企業の経営者とかも、なんか仲良くしてたな」
「「何で食べてたんだろ? 」」
俺とミツキが二人で首を傾げた。
「金持ちと言えば凄い金持ちだったよな」
「うん」
「おかげで保険金もすごかったからな」
俺が思い出したように答えた。
「良く分からんな。そんな人間が何故、あちらと組んでいたのか」
「んー、やっぱり裏社会と関係してたのかな? 」
「いや、それは無いんじゃない? 揉めはした事あると思うけど」
「相手が行方不明になるからな」
俺が笑った。
「ええええ? 何それ」
クニヒト大佐がドン引いている。
「いや、こっちでもそうだろうけど、犯罪組織とか関係してる人間が行方不明になっても、警察……警吏か? あまり動かないでしょ」
「ああ、そういやそうだな」
アポリトも頷いた。
元海賊だけあって覚えがあるのだろう。
「向うは死体が出ないと捕まらないんで、海で相手を始末する時は、ガスがたまって浮かんでこないように腹をきっちり刺して穴開けて黒潮とかに乗せて流せとか、訳わからん事言われた事がある」
俺が言った。
「ああいうのって冗談かと思ってたけど、違うのかな」
「わかんね」
俺がため息ついた。
「一体、貴方達の実戦強さってどっから来てるの? 」
ミヤビ王女が聞いてきた。
「中学生くらいの時に、ナイフ一つで実戦訓練受けたんだよ。ガチで斬るの。斬れても内緒だぞって治してくれたから、今思うとあれってスキルの治癒魔法だったんだろうな」
「無茶苦茶きつかったよね。いずれ、いるかもしれないからって教わってたの」
「だから、俺は向こうでは人とか殺したことないよ。マジな話」
こっち来て無茶苦茶殺してるけど……。
「ど、どんな家族やねん」
樹老人が呆れ果ててた。
仕手筋やら白いタイ焼き屋やら、数人の友人と知人のモデルがいます。
白いタイ焼き屋さんはこないだまで、もみほぐし屋やってました。
口コミのブームがあるみたいです。
勿論、他にもフランチャイズのお店をいくつかやってます。
ビーシュリンプとかメダカの新品種は数千万円儲けた人がいます。
一番は熱帯魚屋で見る、ヒドジョウとか言うアルビノのドジョウを開発したドジョウの養殖やってた人ですかね?
本業はドジョウの養殖だったんですが、まれにアルビノが産まれるのを見て、アルビノとアルビノを何世代か交配したら、アルビノのドジョウが作れるんじゃないか?
と言う事ではじめたそうです。
で、出来たら、いつものドジョウ屋さんで無く、ペットショップの卸に持ち込んだそうで。
結果的に、数億円儲けて、ど田舎にどでかい車庫立ててカウンタックとかベンツとか持ってました。
まあ、ど田舎なんで異様な雰囲気でしたけど。
まあ、訳の分からない親父と言うイメージにしたかったもんで、すいません。
後、いつも読んでいただいてありがとうございます。