第八部 第四章 襲撃
「何者だ? 」
爆龍王ゴウオウが森の片隅を睨んだ。
木の陰から仮面をつけた女が現われる。
身体の線が分かる革の甲冑を付けた女で、顔は分からないが、かなりのプロポーションをしてる事が分かる。
但し、獣の耳が上の髪から出ており、所謂ケモミミなのかな?
「ほう、獣人族のようじゃな」
樹老人が呟いた。
「にしても、また仮面か? 仮面しか無いのか? 」
俺が思わず突っ込む。
こればっかりやん。
「え? お兄ちゃん? 別に好きで、私も仮面つけてたんじゃないし」
ミツキが口を尖らした。
「シャア・アズナブルとかが仮面被ってんのが悪いんだから」
クニヒト大佐が横手で愚痴る。
「大体、あれ、ケモミミだろ? そんな奴、初めて見るんだから、仮面なんかいらなくね? 顔隠す意味ないじゃん」
「何だ? ケモミミとは? 」
爆龍王ゴウオウが聞いてきた。
「あちらの世界で人以外の動物の耳を人間がつけてたら、全部ケモミミって言われるんだ」
俺が答えた。
「ほう。そういうものなのか」
爆龍王ゴウオウが納得した様だ。
「馬鹿め。これは作法だ」
ケモミミ女が断言した。
これは、ハートが強いな。
「で、何? 何で俺を狙ったの? 」
「ふ。本当の救世主はお前では無い。我らが魔王さまこそ真の救世主なのだ」
ケモミミ女が断言した。
「魔王? 魔王なんているの? 」
俺が樹老人に聞いた。
「知らん。あちらの世界でも、魔王とか言うのは本来は滅亡した民族の神だったり、支配した民族が被支配民族の神を勝手にそう呼んでただけだからな。こちらの世界には別におらんはずだ」
樹老人が俺に答えた。
「え? 自称? 自称なの? 」
俺がケモミミ女に聞いた。
「いや、魔王様が自らそうおっしゃったのだ」
「自称じゃん」
「自称では無い! 魔王様はそれにふさわしい実力をお持ちだ! 」
ケモミミ女がさらに断言した。
「じゃあ、その魔王様が救世主を俺がやると言ってんだな」
俺が聞いた。
「そうだ! 」
ケモミミ女が胸を張った。
「分かった」
俺が樹老人を両手で抱えると、ケモミミ女に渡した。
「この御方が、救世主の教育係だそうだ」
俺がケモミミ女に説明した。
「は? 」
ケモミミ女が唖然とている。
「後、これも渡そう轟天だ」
ケモミミ女に轟天も渡した。
「待て待て、轟天はお前しか使えないし」
樹老人が凄く慌ててる。
「ちょっと、お兄ちゃん! 何してんのよ! 」
ミツキが叫んだ。
「貴方、それでいいの? 」
ミヤビ王女も少し怒ったようだ。
「いや、俺は商人だし。何より、もう救世主とか辞めて、商売やりながら、アオイやミツキやムラサキやミヤビ王女といちゃいちゃすんのをしたい」
臆面も無く、俺がはっきりと皆に言った。
「「「「……しょうがないな」」」」
アオイやミツキやムラサキやミヤビ王女が顔を赤くして頷いた。
「え? それでいいの? 」
樹老人が驚いた。
「まあ、救世主とか無ければ、俺もシャアとか関係無しに済んだしね」
クニヒト大佐も笑った。
「救世主より、まずは事業だよな」
アポリトも賛成した。
「え? それでいいの? 」
樹老人が何度も言いながら唖然としてる。
「そこのケモミミ女。魔王がやると言ったんだから、ちゃんと責任もって救世主やらせろよ」
俺がケモミミ女に念を押してた。
「え? 」
ケモミミ女が唖然としてる。
「お前等、自由すぎだろ」
爆龍王ゴウオウが呆れ果てている。
「まあ、轟天とか返すと言われても困るから、俺達、このままパトリダに帰るから」
俺達がワイバーンに乗りはじめる。
「いや、お前等、それでいいの? 他の奴になんて絶対無理だよ? 」
樹老人が必死だ。
「いや、魔王とまで自分を言う男が、自分を真の救世主と断言したんだから、必ず、やり遂げるでしょ」
俺が断言した。
「え? 」
ケモミミ女が轟天を手にして呆然としてる。
「な、やっぱりできませんとか言わないよな。魔王だもんな」
俺がさらに念を押す。
「あ、ああ」
ケモミミ女が呆然としながら頷いた。
「じゃあ、よろしくね」
言いながら、俺達がワイバーンでその場を飛び去る。
ぽつんと轟天を持ったままのケモミミ女を凄い顔した爆龍王ゴウオウと樹老人がじっと見てる。
「え? 」
ケモミミ女が轟天を持ったまま呆然と立ちすくんでいた。
ちょっとバタバタしてるんで、本当にすいません。
いつも、読んでいただいて本当にありがとうございます。
ブックマーク、本当にありがとうごさいます。