第七部 第十章 エピローグ
双方の聖樹装兵が空中でぶつかり合う。
確かにカルロス一世の方が出力とかはありそうだ。
ただ、俺の聖樹装兵の方が防御力が高く、攻めあぐねている感じだ。
双方がライフルを装着し、空中戦をやりながら撃ちあうが、俺の聖樹装兵の腕が攻撃をくらって損傷する。
しかし、再生力がこちらが凄く高く、すぐに治ってしまうために向こうのカルロス一世もイライラしてるようだ。
「ガ〇ダムとシ〇アザクの初めての対決みたいでやんの」
言いながら、結構、衝撃で口の中は切り傷だらけだし、腹も痛い。
カルロス一世はライフルを使いながらも体当たりと蹴りを多用して、こちらにダメージを与えようとするあたり、確かに歴戦の勇士なのだろう。
まるでタイ捨流を見るようだ。
いきなり、目の前に樹老人が現われる。
「仕方ない。助けてやる。このままではお前が死ぬ」
樹老人が言った。
「え? 死ぬ? 」
「奴は蹴りや打撃で中の人間を殺す方法を取っているんだ」
「あ、それで蹴りを多発してるんだ」
「そうだ。あれは聖樹装兵乗りしかしらん。恐らく、ワシを知ってたように奴にも誰かついてる」
「うわ、そうだったんだ」
「でだ、どうせ、何か碌でもない事考えておるのじゃろう? 」
「分かりますか」
俺が笑って答えた。
「分かるわ」
樹老人が苦笑した。
「では、二つ。一つは獣王玉をどの辺に奴が持っているかと、聖樹装兵から奴だけを剥き出しにしたいんですが」
「獣王玉を破壊する気か? 」
「はい。そして、奴の聖樹装兵を斬って、奴を剥き出しにしたい」
「分かった。奴を斜めに右袈裟に斬れば、ちょうど剥き出しになるし、獣王玉も斬れるだろう」
「それはありがたい。袈裟切りに始まり、袈裟切りに終始する、タイ捨流の神髄を見せてやりますよ」
「よし、では刀を念じろ。右手に強く念じればライフルのかわりに刀に変わる」
「わかりました」
俺が聖樹装兵に念じて、ライフルを刀に変えた。
「ほう、ライフルで無く、刀に変えるか、こちらが打撃で攻撃してるのに気が付いたと言う事か? はたまた樹老人が教えたのか。面白い。やって見せろ」
カルロス一世がその熟練の腕からの上から目線で俺に言った。
「見せてやるさ」
俺が言ってから、絶叫をあげて、カルロス一世の聖樹装兵を右袈裟斬りの連続で斬った
カルロス一世の聖樹装兵が割られ、カルロス一世が剥き出しになると同時に獣王玉が割れた。
「なるほど、獣王玉が狙いであったか。だが、まだ終わらんぞ」
カルロス一世が感嘆したようだ。
「今だぁぁぁぁぁぁ! 」
俺がミツキに向かって絶叫をあげた。
「な、なんだ? 」
剥き出しになったカルロス一世が俺の叫びに動揺した。
遥か彼方から流星のようなものが三つこちらに来る。
最速のドラゴン、リンドブルムだ。
「アポリトさんとクニヒト大佐はすぐ目を閉じて、身を隠して」
ミヤビ王女が慌てて、船室の方へアポリトとクニヒト大佐を連れていった。
「リンドブルムだと? しかし、早すぎる! なんだあれは! 」
カルロス一世が叫んだ。
「先に謝っときます。ごめんなさい」
俺がカルロス一世に言った。
横で樹老人が凄い顔してる。
「は? 何が、ごめんなんなさいなんだ? 」
カルロス一世がぽかーんと素の感じで聞いてきた。
そこに、アイ叔母さんとヒトミ叔母さんがリンドブルムから飛びついて、カルロス一世が剥き出しになってる聖樹装兵に張り付いた。
「やだ! 噂通りの良い男! 」
ヒトミ叔母さんが歓喜の声をあげる。
「これ、お持ち帰りして良いのよね! お持ち帰りして良いのよね! 」
アイ叔母さんが言いながら、聖樹装兵の残った装甲を素手で無理矢理ひきはがして、カルロス一世を引きずり出そうとしてる。
「な、なんだ、こいつらは! 何が起こってるんだ! 」
冷静なカルロス一世が動揺しまくっている。
「ありがとう。ユウキ。これで私達幸せになります」
ルイ叔母さんがリンドブルムの上に乗りながら、俺に涙を流してお礼を言った。
アイ叔母さんとヒトミ叔母さんがお婿さんだお婿さんだと言いながら、カルロス一世を聖樹装兵から引きずり出した。
「何だこれは! 何が起こってんだ! くそ、なんて力だ! 身体が動かせない! 」
カルロス一世が半狂乱になっている。
それをルイ叔母がひもでぐるぐる巻きにして、リンドブルムで連れ去った。
俺は聖樹装兵のまま両手をそっと合わせて頭を下げて見送った。
「本当にごめんなさい」
俺の姿を見て、樹老人が凄い顔のまま固まってる。
残されたココドウリロの連中が人攫いだと騒いだ。
「あれが、有名なヤマトの王族の最強の猛禽<修羅>です」
アオイがニッコリ笑って答えたら、ココドウリロの連中がしんと静まった。
おいおい、エテルノまで噂が行ってんのかよ。
ひそひそと話をしたココドウリロの連中は静かに帰って行った。
そうして、カルロス一世は誰の邪魔もされず、ハネムーンの旅に出たのであった。
追記
その数か月後のことだが、彼は俺の義理の叔父になった。
いよいよ、仕事がいろいろ入ってまいりましたが、なんとか頑張って毎日投稿続けます。
時間がずれたりするかもしれませんが、すいません。
いつも、読んでいただいてありがとうございます。