第六十四部 第三章 悩み
「さて、ジョアン君は一体何を悩んでいるんだね? 」
俺がジョアンをじっと見た。
するとジョアンは少し暗くなって俯いた。
「虐めか? 」
親父がジョアンをじっと見て聞いた。
ジョアンは暗い表情で頷いた。
「ジョアン様はお優しい方で相手を殴る事が出来ないのです」
横にいる老執事が悲しそうに補足した。
「分からないな。彼の実家はテーラでも大物なのだろう? 」
俺がカザンザキスさんに聞いた。
「ええ、だからこそと言えますね。自分の産まれた家を盾にするなは情けないと思うのでしょう」
カザンザキスさんが真剣に答えた。
「え? 俺の世界じゃヤンキーとか誰々さんを知ってるとか、ヤクザと関係があるとか、半グレの誰それさんを知ってるとか普通に言うぞ。逆にだからどうしたって話ばかりなんだが」
「そんなのじゃ恥ずかしいって事だろ? 」
カルロス一世が答えた。
「何を馬鹿な事を人脈だって、強さのうちだろう。遠慮せずお父さんにお願いして兵士を貸してもらってボコればいいじゃない」
俺が笑顔で答えた。
「ええええええええええ? 」
カルロス一世が呆れてる。
「だって戦争の時だって、兵士を連れて戦うでしょ。一人で戦わないでしょ」
俺が呆れたようにカルロス一世に聞いた。
「確かに、正義の味方ですら五対一だもんな」
国王も頷いた。
「でしょ。勝てば正義なんだから」
「いや、それをお坊ちゃまはお一人でやりたいとおっしゃってるのです」
老執事が間に入るように答えた。
「なるほど、男だもんな」
カルロス一世が笑った。
「分かった。俺がいいものをやろう。隠しやすいし女性向けだから、子供も持ちやすいだろう」
親父がガバメントの小型のようなコルトディフェンダーを出した。
「いやいや、それ殺しちゃう奴じゃ無いですか」
宰相が慌てて答えた。
「いや、まだこの世界ではあちらの世界の武器はそれほど入ってない。これなら殺しても大丈夫だ」
親父がいい笑顔だ。
「なるほどな。硝煙反応とか分からんし、いよいよになれば拳銃埋めとけばバレないだろう」
俺も納得した。
「いやいや、坊っちゃまは殺し合いで無く、喧嘩をしたいので、それは……」
老執事が慌てて答えた。
「殺す気でやっても、案外死なないもんだぞ」
親父がいい笑顔で答えた。
「いや、9歳で殺しまくってた人に言われても」
宰相が突っ込んだ。
ジョアンと老執事が凄い顔してる。
「胡椒をポケットに入れといて、相手の目潰しして殴れば? 」
「いや、胡椒とか、こちらは高いぞ」
「「え? 」」
俺と親父が驚いた。
しまった、ファンタジー世界の胡椒が高い設定を忘れてた。
「き、金くらいするの? 」
「銀くらいだな」
「売らねば」
親父が横で囁いた。
何という棚から牡丹餅。
目の前に金脈が転がっていると思わなかった。
ありがとうジョアン君、君のお蔭で儲け話を見つけたよ。




