幕間 子供時代
いつの頃からか、缶けりの妖怪が古い公園に出ると言う噂があった。
缶けりとは地面に円を描き、そのなかに空き缶を1つおく。
そして、鬼を1人決め、後は子になり、子の1人が空き缶を思い切り蹴飛ばして、鬼が空き缶を拾って元の位置に戻すまでに、子は建物や樹木に隠れる。
鬼は隠れている子を探し出し、見つけたら「○○くん見つけた!」と言いながら空き缶を踏む。
見つけられた子は鬼に捕まり、円のなかで待つ。
鬼が全員を見つけることができたら、初めに捕まった子と鬼が交代するし、鬼が探し回っているうちに、子は円に走り込み、空き缶を蹴れたら、捕まっている子は逃げることができ、再スタートになると言う遊びだ。
そんな噂のある古びた公園のコンクリでドカンみたいな穴があいている滑り台の山。
缶けりの妖怪は缶けりが大好きで、缶けりをしないと許さないし、はじまるとこちらが勝つまで帰らしてくれないのだそうだ。
こないだの俺が草むらに隠れてると信じて親父に棒切れを投げた事件で、ふと、小学三年生になったばかりの事を思い出した。
田舎のせいか、学校側の先生とPTAの要望で、家庭でのゲームやスマホとかのゲームは一時間までとか意味不明なルールがあった。
仕方ないので、ゲームの後は外に追い出された。
特に俺の家は母さんが厳しかったし。
田舎なので、中学受験とかはあまり言われなかったがいろいろ面倒くさかった。
俺を含めて五人の仲間と一緒に家でゲームをした後に、その妖怪が出る公園に行くと、噂の通り妖怪はいた。
小学五年生くらいで、身体のでかい怖い顔をした男の子の姿だった。
「缶けりしようぜ」
噂通り、そいつはそう言って来た。
「じゃあ、俺が鬼で」
俺が笑顔で答えた。
「よし、分かった」
缶けりの妖怪はこの代表として缶を蹴ると 公園の木とかの影に他の皆と隠れた。
すぐに俺は五人を見つけた。
最初からどこに隠れるか知ってたからだ。
ぶっちゃけ、仲間はやらせだ。
そして、円の中に入って見つかった仲間が座ってる間に缶けりの妖怪がどこに隠れてるか聞いて、缶けりの妖怪を見つけたと空き缶を踏んだ。
なかなか、すぐには分からない所に隠れてたが仲間全員でグルなんで、すぐ見つかった。
「良く見つけたな。じゃあ、俺が鬼をやってやるよ」
その缶けりの妖怪が答えた。
缶けりの妖怪が俺が蹴った缶を円の中に戻すと同時に、五人全員で顔を隠しながら全力で並んで走って缶を蹴った。
顔を隠してるし、並んで全力で走るから全員の名前を呼ぶ前に缶が蹴れてしまうのだ。
えんえんと缶を蹴り続ける俺達。
「お前等ふざけんなよ! 」
とうとう缶けりの妖怪がブチ切れた。
「並んで走ってきて蹴るのは禁止だ! 」
激高して叫び続ける。
「バラバラで隠れろ! 蹴るのは一人一人だ! 」
缶けりの妖怪は叫んだ。
しょうがないので俺達は言われた通り、バラバラに隠れるふりして、そのままで家に帰った。
何でも缶けりの妖怪は夜まで探してたらしい。
その後、缶けりの妖怪は中学と高校で俺の学校の先輩になったが、ずーーーっと根に持っていた。
いつも、公園を独り占めしてるから、嫌がらせでやったんだけど、良く考えたらイジメだね。
子供だから、そんな事もある。
ごめんなさい、先輩。
幕間で書きましたが、親父の年代かなと思ったりしたのですが、まあ懺悔を込めまして、
主人公の時代の話として書きました。
ごめんね。先輩。




