第七部 第九章 心を攻める
俺が手をかざした途端。カルロス一世が俺がかざしたところから飛びのいた。
ファウロスだけが俺の攻撃を受けた形になった。
「やれやれ、樹老人殿がすでについてるとは厄介ですな」
カルロス一世は避けながらも耽美なポーズで答えた。
樹老人を知ってるらしい。
それにしても、避け方が耽美過ぎて、合わないわ。
それはそこまでとして、俺はとりあえず、ファウロスに俺の良く分からん心を攻める攻撃をぶつけた。
ぶっちゃけ、そう言う意識の固まりみたいなものをぶつけるイメージだ。
すると、目の前にレイナさんが出したような前と後ろ両面から見えるでかいスクリーンが出てくる。
そこに十七歳くらいのファウロスが出てくる。
ピラティスで暴れはじめてた所らしい。
相手の海賊に斬りつけられて、何とか避けたものの恐怖で脱糞してしまって、臭えって敵に言われて海に蹴り落とされる。
海に落とされたファウロスが自分の糞まみれのズボンを海の中で泳ぎながら脱いだら、小魚が大量に集まり、ケツの穴を突かれる。
「あああああ、お尻が! お尻の穴がぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」
ファウロスが叫んでるとこで終わる。
すんごい沈黙が辺りに拡がる。
「なんじゃ、これ? 」
樹老人が呆然としてる。
「こ、心を攻める? 」
俺が答えた。
「なんか、違う方向になってない」
クニヒト大佐が冷やかに呟いた。
「……お前、脱糞して、魚に尻の穴を突かれたのか? 」
カルロス一世がすんごい顔してファウロスに聞いた。
「いや、違います! こんなの嘘です! 」
物凄いファウロスが動揺する。
脱糞?
エヘクトルのトップが?
勇猛で鳴るココドウリロの海兵がそう言いあって、さわさわ騒いでる。
「兄弟。あいつ。魚に尻の穴を突かれて……ち、ち〇こ立ってなかったか? 」
アポリトが俺に小声で聞いてきた。
「立ってないわ! ふざけんな! 」
それが聞こえたのか、ファウロスが半狂乱になってる。
「お前、これ、絶対おかしいわ」
樹老人が呆れ果てた顔をした。
「ち、ちょっと待ってください。もう一遍やってみますから」
俺が再度手をファウロスにかざす。
「止めろ! 止めろぉぉぉぉぉぉ! 」
ファウロスが半狂乱になって止めようとするが、再度画面が出てくる。
ファウロスが少し年をとった感じで、目の前の大きな桶に魚が一杯泳いでる。そして、ファウロスがそれにズボンをずり下げて、尻を桶の水につけようとしている。
「やめてあげたら? 」
クニヒト大佐が止めてきた。
「兄弟。すまん。奴は最低の男だが、これは酷い。止めてくれ」
アポリトも止めてきた。
俺が相手の心を攻めるのを止めたので、画面が消えた。
ミヤビ王女とかミツキとかは目を背けてて、アオイは平然とムラサキは顔を覆いながらも隙間から見てた。
すんごい重い空気だ。
まさに凍りつくと言うのはこういう事を言うのだろうか。
カルロス一世とか勇猛で鳴るココドウリロの海兵も凄い顔して固まっている。
ファウロスはその場に崩れ落ちたまま、痙攣して動かない。
「お前、根本の方向性とか絶対おかしいわ」
樹老人が凄い冷たい目で俺を見た。
「本当にやり過ぎるよね」
クニヒト大佐が呆れた顔をした。
「あ、あー、おい。ファウロスを連れていけ」
カルロス一世が動かなくなったファウロスをココドウリロに連れて行かせた。
ファウロスが別の船に抱えられるように移されたのを見たカルロス一世が咳ばらいをした。
「貴公が救世主とやらか? 」
カルロス一世があらためて言ってきた。
「え? そこからやり直すの? 」
カルロス一世、こいつ、ハートが強いわ。
「とりあえず、貴公と余と、一騎打ちといこうではないか」
カルロス一世が提案した。
「一騎打ち? 」
俺が腰の轟天を握りしめた。
「いやいや、そのような無粋なものでは無く、これだ」
突然に、全身にカルロス一世の右手の紋章から、植物やツタなどがカルロス一世の全身にまとわりつくと、それらが炎をあげて深い緑色のワニの首を兜にイメージしたようなパワードスーツ型になる。
「これは聖樹装兵! 」
ミツキが横で叫んだ。
「おいおい、聖樹装兵って俺しか使えないんじゃなかったの? 」
俺が樹老人に聞いた。
「お前のはオリジナルだ。あれは量産型だな」
「量産型? 」
「ガ〇ダムで言うとジ〇か」
クニヒト大佐が横で言った。
「良く、知ってるね」
俺が驚いた。
「ミタライ公爵から無茶苦茶教え込まれたからね」
クニヒト大佐がほろ苦そうな顔をした。
「そうなんだ」
「お前、聖樹装兵は何回使ったか? 」
樹老人が聞いてきた。
「二回かな」
俺が答えた。
「厳しいな。お前の聖樹装兵は特別製で進化するが、量産型は進化せん。そのかわりに最初からある程度の性能を出せるようになってる。恐らく、今のお前では、相当厳しいぞ」
樹老人が厳しい顔をした。
「仕方ない、保険を使おう」
俺が言ってミツキを見た。
「ミツキ、獣王玉を俺が潰すから、そしたら、呼べ」
物凄い小声で俺がミツキに言った。
「ミヤビ王女は呼んだ時のフォローを頼む」
ミヤビ王女にも小声で言った。
「おやおや、また、何か小細工を弄するようだな」
カルロス一世が聖樹装兵の姿で笑ってるようだ。
「すいません。卑怯者なんで」
笑いながら俺が答えた。
右手の紋章が光り、俺もドラゴン型の聖樹装兵を着装した。