第六十三部 第四章 エンドレス
「なるほど、夢か」
即座に俺は理解した。
だって、太陽がいくつもあるし、星も飛んでるし。
「何か、変なのに飛び付かれてこうなった訳だな」
とりあえず、何が起こったかも覚えているし。
下が芝生のような感じだったので、ちょうどいいやとその場でごろりと寝ころんだ。
「最近疲れてたから、ちょうど良いお休みだな」
言いながら、夢の中で寝る。
我ながら凄いと思う。
悪夢で良くある、夢から起きて電気をつけようとしても電気がつかずに、またそれが夢だったと理解して起きて電気をつけようとして電気がつかず、またそれが夢だったと理解して起きて電気がつかずと延々と続けるバージョンの反対だ。
寝ようと思って、寝たと思ったら夢だったと理解して、また寝る。
そして、寝たと思ったら、また夢だったと理解してまた寝る。
そして、寝たと思ったら、また夢だったと理解してまた寝る。
これの延々ループ。
寝てて誰かがチョッカイ出そうにも、俺は寝続けてるから誰も出せないと言うこの凄さ。
「ち、ちょっと困るんですけど……」
なんか、エルフさんみたいな綺麗な人が裸で、横に立っている。
「だが、断る」
そう言いながら、これは夢だと理解してまた寝る。
チョッカイ出されても、夢だと理解してまた寝る。
さらにチョッカイだされても、夢だと理解してまた寝る。
「ち、ちょっと、きりが無くない? 」
エルフの真っ裸の美少女さんが震えながら必死にチョッカイ出してくる。
「だが、断る」
そう言いながら、これは夢だと理解してまた寝る。
チョッカイ出されても、夢だと理解してまた寝る。
さらにチョッカイだされても、夢だと理解してまた寝る。
「お前、とりあえず、話くらい聞いてあげたらどうだ? 」
そこにもう一人の俺が立っている。
間違いない、俺のもう一人の人格のようだ。
その俺が俺の寝転がってる横に来た。
「ちょうど、俺もお前と話があったんだ」
そう、もう一人の俺が言った。
「だが、断る」
そう言いながら、これは夢だと理解してまた寝る。
もう一人の俺に何か言われても、夢だと理解してまた寝る。
さらに、もう一人の俺に何か言われても、夢だと理解してまた寝る。
「ああああ、きりが無いんだけど……」
横で、もう一人の俺が呆れた顔で呟いた。
こいつ、やはり俺では無い。
この自己逃避が分からないなど話にならんな?
「そうか? 」
「くっ、夢でも喋ってるのか! 」
「夢だから伝わるんだよ」
「良し分かった。だが、断る」
そう言いながら、これは夢だと理解してまた寝る。
もう一人の俺に何か言われても、夢だと理解してまた寝る。
さらに、もう一人の俺に何か言われても、夢だと理解してまた寝る。
「お前と戦う奴の苦悩が分かるような気がする」
もう一人の俺が呟いた。
失礼な奴め。




