第六十三部 第二章 桃
「とーちゃん、とーちゃん」
鳳雛が食堂に来て騒いだ。
「どうした? 」
「鳳凰のお兄ちゃん達が向こうの島になってたって桃を取って来たぞ」
「へえ……こちらの世界の桃か」
こちらの世界と向こうの世界が結構同じような食材があるのは知ってたが、桃はそう言えば見たこと無かったな。
「でかっ! 」
そう思いながら、軽空母の甲板に出たら、子供よりでかい桃だった。
「おお、こんなデカい桃は初めて見るな」
国王もついて来たのか、感動してる。
「でかいって事はカスカスなんじゃね? 」
親父がやわらかく持ち上げてみた。
「どうなの? 」
「結構、重いわ」
親父が良いながら、食堂へと皆で桃を運んだ。
食堂のテーブルに置くと皆が集まってきた。
「桃にしては大きくないか? 」
カルロス一世がいぶかしげに見た。
「そうですよね。私もこんなの見たこと無い」
「まさか、桃太郎が入ってるとか? 」
宰相が首を傾げた。
桃太郎なぁ。
無いとは言えんけど。
すでに孔明も二宮金次郎も出てるのだ。
そんなのが出てもおかしくない。
「えーと、二宮金次郎さん? 」
俺が周りを見回して、二宮金次郎を呼んだ。
奥からいつもの柴をしょって現われる。
「何でしようか? 」
「これ、何か分かる? 」
俺が聞いた。
「なるほど、植物モンスターのエキスパートなら、何か分かるはずだと言う事か」
親父が感心したように頷いた。
「うーーーん。どっちかってーと、植物じゃないですね」
二宮金次郎が衝撃の発言をした。
「はあ? 」
「何かいますよ? 」
二宮金次郎が言うと同時に親父達の姿が消えた。
ちょっと待てや。
何で、そんなに危機管理能力が高いんだよ。
「えーと、どうしょう」
「とりあえず、触らない方が良いです。海に流した方が良いのでは? 」
二宮金次郎がマジ顔だ。
ちょっと怖い。
正直、亜龍人さん達がいたら処分を任せるとこだけど、皆、まだ兵糧の回収に行ったままだし。
俺が甲板から海へ投げるのか……。
「どうしょう? 」
嫌なフラグが立ちまくりだ。
「私が運びましょうか? 」
二宮金次郎が言ってくれた。
ありがたい。
十二使徒だし、とりあえず、何もないだろう。
「そうしてくれる? 」
「分かりました」
二宮金次郎が言いながら桃の所へ行った。
やれやれ、助かった。
厄介な事ばかり起こって本当に困る。
「ぴぎぃぃぃぃぃ! 」
いきなり桃が開いて、ムササビかなんか分からないものが俺の顔に張り付いた。
避けたのに、その回避に合わせて抱きついてきた。
「ほんげぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇ! 」
俺が絶叫をあげて倒れた。
バタバタ俺の顔に何かしがみついてる。
いきなり意識が遠くなった。
何だ、これ?




