第六十二部 第五章 調理
オレンジのシーサーペントさんが咥えてきた、食材をペッと吐いた。
「へー、珍しいエビだね」
ミツキが笑ってる。
なぜ、笑えるのだろう。
それ、フナムシじゃないの?
フナムシのでかい奴。
シャコにも似てるけど、どうなのよ。
眩暈が止まらない。
もう一匹が吐くと、クモのように足の長いカニが……。
足が細すぎて食えるような気がしない。
最後に吐いた奴からは高級魚のクエのような魚が一匹だけ出て来た。
ああ、これは美味しそうだ。
だが、クエのような魚が浜に放り投げられた途端、げきょきょきょきょょょょょょょょょょょと鳴き始めた。
「何だ、これ? 」
そうすると、海がザザザと波たって、仲間のクエのような魚が一杯海辺に寄ってきて、げきょきょきょきょょょょょょょょょょょと一斉に鳴き出した。
どんな、ファンタジー世界なんだよ。
ミツキがオレンジ色のシーサーペントに何か聞いている。
「仲間が捕まると一斉にこうやって寄って来て抗議するんだって。無視しても問題無いらしいよ」
ミツキが笑った。
いやいや、あるでしょ。
そんなの心が痛むでしょ。
と思いながらも口に出せない。
「あらあら、お魚さんが一杯」
アオイが冷やかに笑った。
驚いた事にクエに似た魚が一斉にぞっとした様だ。
魚すら怯えさせるのか。
「おらおらおらおらおらおらおら」
間髪入れずに波打ち際にミツキが入って、クエをさらに数匹捕まえた。
やべぇ、仲間の救出ごときで心が揺らぐ許嫁では無かったか。
あっという間に、クエみたいな魚は逃げてった。
やばい。食材が揃ってしまった。
パイロットさんは動かない。
俺一人で食べるのはキツイ。
は?
そうか!
「孔明! 孔明! 」
叫んでみた。
あいつ、無視してやがるな?
「どうしたの? 」
「いや、呼んだら来ないかなと……」
「なかなか、来れないんじゃないですかね? 」
アオイが答えた。
「なぜ? 」
「ここ、あまり良くない遺跡ですね」
アオイがちょっと警戒するように答えた。
「やっぱりか」
妙な感覚は間違いなかったわけか。
「ちょっと、調べてみるか? 」
「腹ごしらえしようよ」
「ちょっと、調べてみようよ」
「腹ごしらえしてからね」
駄目か。
その後ろでアオイがとうとう抉った岩の周りでたき火して石鍋みたいな要領で料理を始めた。
クエみたいな奴は良いんだが、ぽいぽいそのままフナムシ入れてんですけど、あれはダシを取るだけなら良いな。
蜘蛛みたいなカニも放り込んでる。
脂汗が止まりません。
くそう、パイロットさん気絶したままだよ。
俺一人が地獄なんて……。
悲しい。




