第六十一部 第一章 プロローグ
「で、だな。内密な話があるのだが」
親父がひそひそと俺に言った。
「? やっぱり俺の弟か妹がもう一人いるのか? 」
俺が声を潜めて答えた。
横で祝融さんが凄い顔してる。
「何でやねん! 」
親父が小声で突っ込んだ。
「いや、だって内密と言うとそっち関係しか思いつかないし」
「そうじゃなくて、シェラの手のものがこの軽空母でいろいろと聞いたらしいんだがな。ここの女性クルーがお前を狙ってるらしい」
「はぁぁぁああああぁぁぁあ? 」
「いや、いろいろと金儲けの話を聞くし、世界の支配者になりそうだし、それなら他に嫁が一杯居てもいいかなと言う世知辛い意味合いと、どんだけあっちが凄いかお相手して見たいと言うのの両方らしい」
「いやいや、勘弁してよ。母さん、ここのクルーに手を出したら殺しに来るでしょ」
「そうなんだよ。俺もちゃんと監督してなかったのかとかいろいろボコられそうだしな」
親父も困った顔をした。
「まあ、神族と扱い違うしなぁ。前、そういう勘違いをしでかした神族はちんこを潰されてたからな」
祝融さんもひそひそに参加して来た。
「息子だからとて容赦せんし、逆に息子だからこそ、ちんこをもがれるかもしれん」
親父の顔が真剣だ。
「いやいや、息子にするかな? 」
カルロス一世が流石に突っ込んできた。
「いや、母さんの必殺技はちんこ砕きと言ってだな。文字通りちんこを凍結して砕くんだ」
親父が何とも言えない顔をした。
国王達が一斉に股間を抑えてぞっとする。
「え? 凍られせるの? 」
俺が驚いたように聞いた。
「ああ、氷系が実は母さんの必殺モードだ。氷系で固めた後に相手を砕くんで、暴虐的な怪力を持っている訳で……」
「おおおお」
初めて知る事実。
「無茶苦茶するからな」
祝融さんが身震いした。
「でも、そもそも火の神様なら別に母さんに圧勝なのでは? 」
俺が不思議そうに聞いた。
「いや、君がスルトと戦った時と同じだよ。大陸を砕いて海をよんで、火を消したからな」
「た、大陸を砕く? 」
カルロス一世のドン引きがハンパ無い。
うぉぉぉ、さすが母さんだ。
無茶苦茶やらせると俺を超えてる。
「ああ、自分の足場を粉みじんに砕くから、もうどないもこないもしょうがないしな。正直、スルトを同じようにして君が倒したから、血は争えんなと思ったよ」
祝融さんが俺を見て笑った。
「まあ、それでだ。どうも、お前のヒモ・モードをうまく利用して倒れ込むふりして、嫁になろうとしてるらしい」
親父が話を戻して俺を見た。
「何ですと? 」
「なるぼどな。事故に見せかけて抱きついて責任取らすと言う事か」
祝融さんが頷いた。
「ちりんちりん」
と口で言いながら、ルイス中尉がハンドルを持ってるように走ってきた。
口には何故か食パンを咥えている。
「遅刻、遅刻ぅぅぅぅ」
言いながら俺にぶつかってきた。
「あああああ? 何よこいつぅぅぅぅ! 」
ルイス中尉が俺を罵る。
「こ、これは……」
祝融さんが熱い涙を流した。
「すげぇぇぇぇぇえぇぇぇ! 」
国王も感動している。
まさに、weeabooの中のweeaboo。
これをここでかまして来るとは。
流石だ。
「まあ、こんな感じですかね? 」
ルイス中尉が笑った。
カルロス一世とか訳が分かんない顔をしているが、俺達は感動した。
ルイス中尉は、やっぱりすげえな。




