第七部 第五章 エテルノのカルロス一世
エヘクトルのファウロスは人工の用水路を高速船でさかのぼっていた。
「くそっ、このままにしておけねぇ。せっかく、俺の作ったエヘクトルが近隣に名前が鳴り響いてたのに、舐められちまう」
ファウロスは高速船の舳先で歯軋りをした。
「まだ、王宮への水路にはつかんか」
そこは迷路のように水路が張り巡らされた都市だった。
その王国の名はエテルノ。
太古から栄え、水路を使い水運で都市を守り、湿地帯に切り開いた土地を持つ国であった。
王宮へ向かう水路に差し掛かり、そこに水路をふさぐ形で大きな鉄の門がある。
そこに、ココドウリロと恐れられるエテルノの海兵達がいた。
「エヘクトルのファウロスだ。カルロス一世陛下にお会いしたい」
海兵達にファウロスが叫んだ。
「しばらく待て」
海兵が冷たく応じる。
海兵達は別にエヘクトルだろうが、恐れる様子が無い。
彼らもココドウリロと呼ばれる恐怖の代名詞のような海兵だからだ。
ファウロスがいらいらしながら船の舳先で待っている。
海兵がこちらにやってきて、頑丈な鉄製の門をひらいた。
「入れ。カルロス一世陛下がお会いになる」
海兵が無表情に答えた。
「あ、ありがとうございます」
ファウロスが腰を低くして頭を下げた。
水路の中をファウロスが高速船で王宮の奥へ向かった。
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--豪奢な神殿のような王宮の中にファウロスが入っていく。
ファウロスも長身だが、衛士もそれに勝るとも劣らない体躯をしていた。
中央にいろいろな果実がたくさん載った豪奢な皿が並ぶ黄金で出来たテーブルがある。
そのテーブルの前に絹で覆ったベットのようなソファがあった。
そこに肌をあらわにしたような、ギリシャ神話のような服を着た男が寝転がっている。
エテルノの国王カルロス一世であった。
豪奢な金髪と碧眼。そして、筋骨たくましい長身の身体。
何よりも美貌をほしいままにしている男だ。
その上、彼は海戦の強さでも知られ、この世界で最強の一角とも言えよう。
「どうした。ファウロス。しおらしいではないか」
カルロス一世はベットに寝転んだまま、ファウロスに声をかけた。
「実はお願いがあります」
ファウロスがその場に土下座してカルロス一世を見た。
「なんだ? 」
カルロス一世は、ファウロスを見もせずに葡萄をつまんで食べた。
「実は、エヘクトルの船が殆ど沈められました」
ファウロスが言うとカルロス一世が笑い出した。
「なんだ、残虐非道の最強の海賊では無かったのか? みっともない事だな」
カルロス一世が嘲るように笑った。
「それで、船を貸せとでもいうのか? まさかココドウリロを貸せとは言うまいな? 」
カルロス一世の冷たい言葉にファウロスが震える。
「も、申し訳ありません。まさか、シーサーペントがあんなにいるとは……」
ファウロスがそれを言った途端、カルロス一世がすぐに立ち上がって、ファウロスの所へ来た。
「シーサーペントだと? 」
カルロス一世の目が光る。
「はい、百匹はいました」
ファウロスが答えた。
「そうか、コンチュエ、パトリダ、テーラ。奴が来たのか」
「ご存知で? 」
「ああ、本物の救世主だ」
「救世主? 」
「アレクシアを殆ど一人で滅ぼした怪物だ」
「そ、そんな奴が……」
ファウロスが身震いする
「今どこにいる」
カルロス一世の目が猛獣のような獰猛な光を放つ。
「はっ、コンチュエに向かう、豪華高速帆船の中にいます」
ファウロスが答えた。
「面白い。私も天才と呼ばれた男だ。どちらが勝つか試してみるのも一興だな」
カルロス一世が猛獣の笑みを見せた。
すいません。ファウロスがファロウスになってました。
ファロウス(ワロス)なーんて。
直すのに手間かかって更新が遅れます。
とりあえず、一話目更新します。
すいません。