第七部 第四章 樹老人(じゅろうじん)の説得
とりあえず、貴族や王族御用達の特等船室に入ると、堅く鍵を閉めた。
乱れたベットを見ると、少し心が乱れるが仕方あるまい。
「このまま、諦めて帰るのを待とう」
俺はベットにそのまま倒れ込んだ。
「馬鹿なのか? お前? 」
目の前に樹老人がいる。
「ふーー、やれやれ」
俺がため息をつくと、私物入れ用の宝箱みたいな鍵付きの箱を開けると、その樹老人を詰め詰めして、鍵を閉めた。
「これで、良し」
俺がほっと一息ついたら、胸倉を樹老人に掴まれてゆさゆさされた。
「お前、どういう事なん? 」
樹老人が凄い顔して見てる。
宝箱の中からテレポートして来たみたいだ。
「まあ、あれですわ。心の引き出しにしまうようなもんです」
俺が言うと、樹老人にケッて顔された。
なんか、合わないわー。
その時、扉がドンドン叩かれてアオイ達の声が聞こえた。
樹老人がそちらに手を向けると、鍵が四つついてるのに全部同時に空いた。
「ちょっとちょっと、何があったのよ」
ミツキが特等室に入ってきた。
「とりあえず、見なかった事にしようとかと……」
俺が言うとミヤビ王女がため息ついた。
「なんで、こんな性格になってるの? こやつ? 」
樹老人が聞いた。
皆の目がミツキに注がれる。
「え? 私? 私に言われても困るんだけど」
ミツキが困ったように言った。
「兄弟! 暗い気持ちが吹き飛んだ! その爺さんは凄い人だぞ! 」
アポリトが熱く語る。
「本当だ! 俺も心も声も治ったよ! 」
クニヒト大佐が嬉しそうだ。
いや、池田秀人さんの声の方がチャーミングだったんじゃないか?
「なんで、皆、すぐ手のひら返すの? 駄目だよ。そんな事だから猛禽にやられるんだよ」
俺がアポリトとクニヒト大佐に愚痴った。
2人ともウッて感じになった。
「でも、お前も一緒じゃん」
クニヒト大佐がベット脇のごみ籠のくしゃくしゃに丸まった紙の山を指差した。
クニヒト大佐が言った途端、ミヤビ王女やミツキにボコボコにされている。
あ、本当に戻ってるわ。
突込みのクニヒト大佐だ。
「お前な。自分が全人類のみならず、モンスターを含むあらゆるものの希望だと言う事を忘れてはいかんぞ」
樹老人が諭すように俺に言った。
「ぼっちを人類の希望にする自体、終わってませんか? 」
俺がいい笑顔で笑った。
「誰なん? こんな風にしたの? 」
樹老人が本当に困ったような顔をした。
「それは世間です」
誰かが答える前に自分で答えた。
「いいか? 人と言うのはな、いろいろな苦しみを受けて、それで磨かれていくんだぞ」
樹老人が必死だ。
「肥料も与えすぎると腐りますよ」
俺がさらにいい笑顔で答えた。
「お前は皆の希望であることを理解しなければならない」
樹老人がさらに続けた。
「別に皆の希望になりたいなんて言った事無いんですが」
俺が答えた。
「それは運命と言うものだ」
樹老人が断言した。
「では、他の人にパスと言う事で」
俺が答えた。
「……本当だ。どうしょう。えらいのが育ってるわ」
樹老人が頭を抱えた。
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