第七部 第三章 樹老人(じゅろうじん)
シーサーペントの踊り食いが終わって、残った船も悪用されないように全部沈めさせた。
シーサーペント達は本当にうれしそうにこちらを見てぺこりと頭を下げた。
そして、海の中にまた姿を隠して行った。
勿論、俺達の豪華高速帆船に遅れてついて来てくれるみたいだ。
それと、ミヤビ王女が気を遣ってくれたおかげだ。
お客だけでなく、船員や船長も船室に戻してくれたおかげて、皆に冷たい目で見られずに済みそうだ。
「これで、とりあえず終わったね」
俺が皆に笑顔を見せた。
「とりあえず、船長に報告してきますね」
アオイが船室に向かって駆け出して行った。
「ほう、なるほど、こりゃあ、あかんな」
突然、目の前に樹で出来たような光り輝く小人のような老人が浮かんでいる。
もしも、コロポックルとかいればこのサイズなのだろうか。
その小人の老人が俺を浮かびながらじっと見ている。
「本当にいかんな。幻覚が見えるわ」
俺がムラサキに言った。
「いや、なんか小さな老人が浮かんでますよ」
ムラサキが俺に答えた。
「それ気のせいだから」
俺が皆を押して船室に帰ろうとした。
「待て待て待て、おぬし、話しかけておるだろうが」
樹で出来た小さな老人が話しかけてきた。
「残念だけど、俺には聞こえません」
俺が答えた。
「聞こえてるじゃないか」
樹で出来た小さな老人がちょっと怒ったようだ。
「すいません。もう、厄介事はごめんです」
俺が祈る様に答えた。
「厄介事では無いと言うに」
樹で出来た小さな老人が右手に暖かい金色の光を出して、体育座りをしたままのアポリトに浴びせた。
「あ、あれ? 」
アポリトが突然立ち上がった。
「あれ? 落ち込んでたのが……あれ? 」
なんか、目が覚めたようにアポリトが見回した。
「もう一人もだな。ほれ」
樹の老人がクニヒト大佐にも同じように浴びせた。
「あれ? 今までのは? あれ? 」
クニヒト大佐が池田〇一さんの声で無くなった。
むう、それはそれで残念だが。
「抗鬱剤かなんかか? 」
「何じゃ、それは? 」
俺が聞くと樹の小さな老人が聞いてきた。
「元居た世界の薬で精神の暗くなった部分を抑えると言うか……」
「そういうもんでは無いわ。心を治したのじゃ」
「心? 」
「抑圧していたものを浄化したんじゃよ」
「貴方は一体? 」
ミヤビ王女が聞いた。
「樹老人と呼んでくれたらええ。<終末の子>の教育係みたいなもんじゃ」
樹老人が笑った。
「き、教育係? 」
なんでしょう。
嫌な響きだな。
「本来はもう少し後でお前につく予定だったんじゃが、なんか<終末の子>がえらい育ち方したせいで、えらい事になってると聖樹達が騒いでの。仕方ないから、早く来ることにしたんじゃ」
樹老人が俺を見た。
「そうですか、ありがとうございました。結構ですんで、失礼いたします」
そういって、俺は急いで自分の貴族や王族御用達の特等船室に逃げた。
もう面倒な話はごめんです。
お腹いっぱい。