第五十三部 第四章 異教(イジャオ)
「ああ、すまん」
チアンウェイが食堂にやって来た。
ちょっと、色っぽい。
と言っても、まあ、許嫁だが。
「どうした? 」
「とりあえず、コンチュエに行けないか? 」
「はぁぁあぁあぁああぁあああああああ! 」
一番避けてた言葉を言われた。
「いや、女帝をこのままにしておれん。それと、さっき聞いた正義の味方ファンドの傭兵の話だが、こないだ東西対立したせいで、そういうあぶれ物の元兵士が増えてるんで、それを雇って貰えればありがたいし」
「ほほう、それはトントン拍子で良い話だな」
親父が嬉しそうに笑った。
「それと、グォクイ将軍も懸念してたのだが、また、異教の連中が脈動してるらしい」
「異教? 」
何だっけ?
思わず首を傾げた。
「お前が共工と戦った時に、いろいろとやってた連中だ」
「親父か? 」
「ああ、俺か? 」
親父が驚いたように自分を指した。
「何でだ! 」
「覚えてないな」
「お前がゲロとかゲリとかでコンチュエの王都をぐちゃくぢゃにした話だよ」
「ああ」
そんな事もありました。
「見事に忘れるんだな」
「綺麗なファウロスが辛かったんで、関わってた話は忘れる事にした」
俺が真顔で言ったら、チアンウェイが頭を抱えた。
「まあ、気持ちは分かるな」
「兄弟、実は俺もだ」
「だよな。俺と同じドブ水の中で暮らしてたら、急に輝いて天使になって空に行ってしまったような気持ちだ」
俺が苦々しげに答えた。
「分かる。弟子が、いきなり自分を置いて光り輝く未来に飛び立って行った様な感じだな」
イジュウイン大公が悲しい顔をした。
「いや、友人や弟子が成長して立派になったんだから、それは良い話じゃないの? 」
自分のフリゲート艦から暇つぶしに来ていたニコライさんが呆れたように言った。
やっぱり、この人はリア充だな。
この陰キャのふつふつとした情念がわからんとは……。
これは仲間になって貰うしかないな。
そう思ってたら、親父とカルロス一世と和真とクニヒト大佐とかと目が合う。
ふふふふ、皆、同じ意見か。
皆で、泥沼であがこうよ。
これが俺の仲間達の姿のはず。
「何ですかそりゃ? 」
ニコライさんがさらに呆れたような顔をした。
おや、喋ってましたか。
困ったな。
「お前。そもそも<終末の子>じゃろ? 」
「そう、お金はかかるし、変な人ばかり来るし、変態水滸伝みたい」
俺が首を振りながら答えた。
「変態水滸伝とは、良い名前だな! 」
親父が喜んでる。
「むう、それを我々の合言葉にするか」
国王も笑顔だ。
ああ、余計な事言った。
何で、喜ぶんだ?
理解できない。




