第六部 第八章 叔母
「あらあら、間違えちゃったわね」
リンドブルムに乗っているヒトミ叔母さんが、捕まえたアポリトを見て困ったように答えた。
「でも、恋だから仕方ないと思って、甥にも手を出そうと思ったけど本当は良くないから……。でも、この子ならほら、結構なハンサムだし長身だし、何より筋肉質よ」
アイ叔母さんがアポリトの裂けないはずの革製の鎧を手で引き裂いて胸をはだけ出す。
恐ろしい事に強力な膂力で抑えこんで、あのアポリトですら逆らえないようだ。
「その子、多分、元海賊で今はパトリダの貴族の子よ」
ルイ叔母さんがヤマタノオロチの頭の上でニッコリ笑った。
「あら、海賊なんて、当たりじゃない」
ヒトミ叔母さんがうれしそうだ。
「本当! そういう男が組み敷かれてって、最高じゃない! 」
アイ叔母さんも笑った。
ヒトミ叔母さんとアイ叔母さんが平気でアポリトの革の服をビリビリに裂いていく。
「いやぁ! いやぁ! 助けて! 」
アポリトが少女の様に叫ぶ。
やばすぎる。
それにしても、ルイ叔母さんにヒトミ叔母さんにアイ叔母さんか……ってあれ?
「ひ、一つ聞いていいですか。あの、貴方方のお父さんは私の祖父ですよね」
俺がルイ大叔母に聞いた。
「そうよ、先代国王よ」
「あの……豆柴が好きだった先代国王もアニメオタクなんですか? 」
俺が恐る恐る聞いた。
「ああ、私達の名前ね。私の叔父で先代宰相だった人が、日本の漫画から取ったと言ってたわ」
ルイ叔母さんが笑った。
嘘だろ。
先代宰相も重度のアニメオタクかよ。
名前がキャッ〇アイですがな。
あれ?
作品的に逆算すると、叔母さんだけど、まだ三十代なのか。
「あの。別にそんなことしないでも、綺麗だし、結婚できるんじゃないんですか? 」
三十半ばくらいなら、まだ行けるんじゃね?
「馬鹿ね。嫌がる相手を力ずくで奪ってこその恋よ」
ルイ叔母さんが笑顔だ
あかん、壊れてる。
「駄目だ。この王家は駄目だ。誰かが滅ぼさないと……」
うわ言のように俺が呟いた。
「どうでもいいが、リンドブルムの上で、お前の義兄弟。やられてしまうぞ」
隣の赤い甲冑を着たワイバーンに乗ったシ〇アのクニヒト大佐が教えてくれた。
「はぁ? こんなとこで? 」
少し薄暗くなってるけど、こんな丸見えの場所でか。
「あああああ! 駄目だ! 」
アポリトの声が泣いている。
ほんまにやられかかっとる!
「ねぇ、マジな話。叔母さんだけど、全部やっちゃっていいかな。これ、何もかもぶっ壊していいかな。叔母さんだろうが関係ないよね」
俺が怒りで震えた。
「私もついて来ます。やっちゃいましょう」
ムラサキも同意した。
アオイやミヤビ王女も頷いた。
俺が右手の紋章を掲げた。
「あ、聖樹装兵は無理ですよ。聖樹様が手伝わないはず」
「いや、俺が決めた! 俺に従え! 力を貸せええええええっ! 」
ワイバーンの背中から俺が飛び降りて叫んだ。
右手の紋章から大量の植物が出て、全身を包むと五メートルくらいのドラゴン型のハワードスーツのようなものに変わった。
そのドラゴン型のパワードスーツが羽を開いて空を飛ぶ。
「聖樹装兵? あの子、もう覚醒してるの? 」
ルイ叔母さんが震えた。
「力を貸せっ! 」
俺が叫ぶと、樹からライフルのようなものが出来て右手に握られた。
それを俺が構えて撃った。
生体レーザーがほとばしって、ヤマタノオロチの後ろの山が吹き飛んだ。
凄まじい破壊力だ。
「ちょっと、これはまずい! ルイ姉さん逃げるよ! 」
アイ叔母さんが叫んだ。
リンドブルムが凄まじい動きをして、アポリトを大型のワイバーンの上に落とすと、そのまま逃走した。
「くそっ! 初めての武器なんで、うまくいかない上に、微妙な聖樹の邪魔が入る! 」
再度、聖樹装兵のライフルを構えると、すでにリンドブルムの姿は無い。
「流石、早いな! だが、ヤマタノオロチは始末させてもらう! 」
俺がヤマタノオロチとルイ叔母さんの方を向き直ると、すでに、ヤマタノオロチの姿が無い。
「はああああっ? どこだ? どこへ逃げた? 」
アオイに聞いた。
「凄いスピードで、そこの山の下にある洞穴の中に逃げました」
俺がアオイの指差す洞穴のあたりにライフルを向けて撃った。
洞穴の周辺がすべて大爆発を起こして、消滅する。
「こ、これは逃げましたね」
ムラサキが困ったような顔をした。
「くそっ! 」
俺が聖樹装兵のままアポリトを見た。
「汚されちゃった……汚されちゃった」
なんか、やばい。
とりあえず、ムラサキが大きな布を出して、半裸のアポリトに被せた。
見てられん。
「もう、ここにいたら、何をされるか分からない。大型のワイバーンに乗ってるうちの二人は俺が運ぶから、このまま海上に行って、パドリダ行きのすでに港を出航した帆船に乗ってヤマトを出よう」
俺が聖樹装兵のままで皆に提案した。
俺は聖樹装兵でぶつぶつ言ってるアポリトとムラサキを抱えると、そのまま海に向かって飛んだ。
「本当にヤマトって悪役ですよね」
ムラサキがしみじみ言った。
すいません。パソコンの調子が悪くて間が空きました。
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