第五十部 第七章 君臣相和
「ふふふふふふふ、お気づきになりましたか。流石は我が君」
孔明が羽根のついた扇子で口を隠しながら笑った。
「やはり、罠だったのか? 」
「罠ではありません。ただ、ヤマトと同じく、ここは修羅のように嫁が強いのです」
「な、なんだと? 」
「そのとおりでございます。恥ずかしながら、我らもヤマトと同じく嫁には逆らえません」
亜龍人達が自嘲のように笑った。
「ふふふふふ、自慢ではありませんが、私も長老ですが、嫁が生きてる間は生きている心地がしなかった」
ビグルさんがはらはらと涙を流す。
「分かりますな」
国王達が深く頷いた。
「我らには卵が出来たら終わりとか、そう言うことわざがあるくらいなのですよ」
ビグルさんの息子らしい亜龍人が寂しそうに笑った。
「特にわしの孫は最強クラスでな。どうしょうかと悩んでいるうちに、孔明殿から剣聖ダグダ様がこの世界に現われたと聞いて、居てもたっても居られず。お願いしたと言う訳です」
「もしも、行き遅れて家に残られたら、我らの身が危ない」
ビグルさんの息子さんらしい亜龍人が険しい顔をした。
「まあ、ビグルさんのお孫さんが美人なのは間違いないので、耳聡い許嫁様に凄い美人と聞こえるように話を流したわけです」
孔明が羽根のついた扇子で口元を隠しにやりと笑った。
「いやいや、分かるけど、これはどうなの? 」
ヨシアキ大佐が流石に苦言を呈した。
「何をおっしゃいますやら、我々はこれから大望に向けて、<終末の子>である我が君と皆で頑張らなければならぬ状態。そんな状態に我が君の仲間を見ると一人だけ陰キャの中にリア充がいる」
「それが、ダグダ君だと言う事か」
親父が孔明に聞くと孔明が頷いた。
「しかし、やり過ぎじゃね? 」
俺も流石に注意した。
ダグダ師匠は良い人でいつもお世話になってるし。
「ははははははは、我が君、深く考えなさるな。これはつまり、我が家で料理を作り過ぎた時にご近所にタッパーウェアで配る。そんな事が昔の日本では良くありました。古き良き時代の地域社会の結びつきみたいなものです。これは、それと同じです。つまり、不幸のおすそ分け。それだけですよ」
不幸のおすそ分けだと?
孔明が驚くことを言った。
しかし、何故日本文化を……。
「なるほどな。古き良き日本には遠くの親戚より近くの他人と言うことわざがある。それと同じ事だと言う事か」
親父がなるほどと言う顔をした。
「その通りです。君臣相和する為には、不幸と変態の共有化がかかせません。ここは一つ、ダグダ師匠にもおすそ分けをして不幸を分かち合わねば」
孔明が分かった事を言う。
「なるほどな」
国王達が深く頷いた。
「師匠にも私の状況を理解して貰えるわけか」
カルロス一世も頷いた。
「「仲間が増えた。仲間が増えた。仲間が増えた」」
クニヒト大佐と和真が小声で囁く。
「そう言う事なら仕方ありませんな」
ヨシアキ大佐も頷いた。
「では、意義はありますか? 」
「「「「「「「「「「「「「「「「異議なし」」」」」」」」」」」」」」」」
今まで居た仲間達と亜龍人の心が一つになった。
素晴らしい。




