第四十九部 第十一章 マッチポンプ
孔明が羽根で出来た扇子で口を隠しながら、勝ち誇ったように俺を見た。
いや、でも、仕方ないかもしれない。
許嫁のブチキレを止めたのは間違いないからだ。
俺には無理だ。
凄すぎる。
「そうやって信用を勝ち取るためにわざと全部仕組んだんじゃなくって? 」
ムラサキがいきなり、呆れきった顔で突っ込んだ。
「おやおや。何という事をいいますか? 」
孔明が笑った。
「と言うか、たまたま人魚姫が嵐の中で泳いでるのがおかしいと思うんだけど、何で泳いでたの? 」
ムラサキが疑い深い目を孔明に向けながら、人魚姫に聞いた。
「誰かがダーリンが危ないって教えてくれたの」
人魚姫が答えた。
「へー。それ、あんたの鬼神を使ったんじゃないの? 」
ムラサキが冷やかに孔明を見た。
「ははははははは、なるほど。でも鬼神が教えたとは決めつけ過ぎでは無いですか? どこにも証拠など無いでしょうに」
孔明が羽根で出来た扇子で口を隠すように答えた。
「あんた、口に出るもんね」
ムラサキが言って、扇子を手で下げさせると、口が微妙に曲がってる。
マジで微妙に口が吊り上ってた。
え?
マッチポンプなの?
やらせだと?
何という事だ。
俺が驚いた顔をして孔明を見た。
「ははははははは、困りましたね。随分とムラサキに疑われたものだ。我が君。我が君はどちらを信じますか? 」
孔明が大仰に笑いながら答えた。
「ムラサキ」
俺は即答した。
当たり前だ。
「え? 私は十二使徒筆頭でございますよ? 」
「普通、嫁を信じるだろう? 」
まして、最初に誰もが俺を避けた時に、役目とは言え、常に居てくれたのはムラサキだ。
「ははははは、これは一本取られましたな。我が君と皆様は熱々の御様子。臣は安心しましたぞ」
孔明が凄く良い笑顔で答えた。
「ほほう、言う事はそれだけか? 」
俺が優しく笑った。
「ははは、我が君と許嫁の皆様の愛の深さを知りました。本当におめでたい事です。これにて一件落着ですな」
「「「「「「「「「「「「「「で? 」」」」」」」」」」」」」」」」」」
許嫁達が凄い顔してるんで、目を伏せて見ない事にする。
アホがまた一人増えただけでした。
どこまで続く、この谷底が……。
「ダーリン、元気出して」
半魚人が抱きついてきた。
引き攣った笑いが止まらない。
お前もだよ。
目の前で許嫁にサンドバックにされている孔明を見てから、横の半魚人を見て、そう思った。




