第四十九部 第九章 許嫁
今度は島自体が揺れるような地響きがする。
「村長! 何か、上空からいくつもの光の矢が! 」
村民の動揺がハンパ無い。
「光の矢だと? 鳳凰では無いのか? 」
はい、うちの許嫁でございます。
オウさんの動揺に答えてあげたいが、それをすると矢面に立たされるだろう。
それは避けねば。
獅子の群れに一人の人間が何が出来る。
しかも、横には半魚人しかいない。
「ダーリン、怖い」
半魚人が抱きしめてきた。
はははははは、俺はこれからが怖いわ。
強姦されたって許して貰えるのかな?
無理だよね。
前にアオイとかミツキとかキョウカさんとか怖い事を言ってたんだよな。
なんか、すると感覚が一部共有されるらしくて、浮気したら一発でわかると。
脅しだと良いな。
脅しなら誤魔化せるけど、脅しじゃないなら、命に係わる。
これで、どうすればいいのか。
「こ、こんな時こそ、孔明だろうに! 」
俺が腹立って怒鳴った。
「お呼びですか。我が君」
いきなり、孔明が現われた。
オウさん達の動揺がハンパ無い。
「いやいや、何で? 」
「ご覧ください」
孔明が言うと、毘沙門天のような鬼神が隣に現われる。
周りがどよめいた。
「もしもの事があろうかと、私の配下の鬼神をつけておきました」
「は? なんで、すぐに助けに来ないの? 」
「勿論、それは我が君がお呼びになられないと」
「ふざけんな! すぐ助けに来いよ! 」
「いえいえ、我が君の恋路を邪魔などできませんから」
孔明が羽根で出来た扇子で口を隠して笑った。
「はああああ? 」
「男女の交わりの最中に声などかけれませぬ。まして、我が君なのですから」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
止めろやぁぁぁぁぁああ!
憤怒が止まらん!
「もぅ、ダーリンだら」
半魚人がうふって顔をした。
ふざけんな。
「安心してください。許嫁様方にはその旨お伝えしてあります」
固まった。
俺が固まった。
何してくれるの?
「だから、攻撃してんじゃないの? 」
俺が震えながら答えた。
「はははははははは、仲良きことは美しきかな」
孔明が笑ったんで渾身の力で蹴りあげた。
ふざけんじゃねー。
これ、命がけじゃないか。
「とりあえず、君は逃げなさい」
俺が半魚人に言った。
とりあえず、この子が居なければ、誤魔化せるかもしれない。
さらに、獅子の群れに半魚人一匹など勝てるわけがない。
「嫌です。私は旦那様と一緒に居ます」
うおおおおおおおおぉ!
わかんねぇかな?
「命が危ないんだ」
「死ぬなら一緒に死にます」
半魚人が更に抱きしめてきた。
「はははははは、良い許嫁様では無いですか」
孔明が全く動じずに羽根で出来た扇子で口を隠して笑った。
こいつ蹴っても効かないのか。
悪い意味で最悪じゃないか。
どうすんだ、俺。
くくくっ、このままでは終わってしまう。




