第四十九部 第七章 神殿
パチパチと熾火で魚の串が焼ける香ばしいにおいがする。
「本当に最近は<終末の子>が現われたとの事で、いきなり鳳凰達の卵がかえったようで、それらが我らの船を沈めて困っていたのです」
「ほう」
つまり、あの衝撃波は鳳凰の卵から孵ってきたものが暴れていると言う事か。
「それで漁にも行けず困っていたら、この間の不思議な嵐です」
「なるほど」
思わぬ接点だな。
なんとなく、関係してると思ってたが。
「皆が飢えて困ってる所に、この人魚姫様が現われて魚を呼んでくださったのです」
「ほほう」
眷属を食わせるとは、自分なら「捨身飼虎」で素晴らしいけど、どうなんだ。
まあ、ヒモ・モードで産まれたイクラさんを食べた俺に言える立場ではないが。
オウさんが良く焼けたアジの大きそうなのを渡してくれた。
「美味い」
驚くほど美味い。
「ここの辺りは海の水流のせいで身が締まっておりますから」
「なるほど」
これは良い。
ひょっとしたら、商売に使えるかも。
「お腹が満ちましたら、一応、神殿の方にご案内します」
「え? 」
「客を受け入れる時は、我らの神様にご報告するようになっておりますので」
オウさんが笑った。
「なるほど、しきたりと言う事ですか」
「はい」
オウさんが少しすまなさそうな顔をした。
「いえ、食事もいただきました。ご挨拶をしないと失礼に当たりますので……」
俺が頭を下げた。
「旦那様、じゃあ、一緒に行きましょう」
人魚姫が俺の腕に身体を絡めて預けてきた。
ヒモ・モードもあってメロメロだが、それ以上にならない。
やはり、俺とやっている。
間違いなく俺は強姦されてはる。
あのティッシュの山からすると随分したのだな。
笑えねぇ。
くくくっ、四十二歳だっけ?
これで、鈴の初代も断れなくなった。
どんどん谷に落ちていく感じだ。
ぶつぶつと考えて朦朧となりながら地下の神殿にオウさんの案内で降りていく。
随分、思ってたより深い。
手入れがちゃんとされてるのは、ちゃんとかがり火が整備されてるので分かる。
奥の奥に来ると壁が岩じゃ無かった。
何かの金属だ。
一体、ここは。
そこに大きな広間があった。
中央に一面十二臂の巨大な神像がある。
その顔に覚えがあった。
「これが我らの神である、<並び立つもの>です」
「<並び立つもの>? 」
「ええ、光と闇の創造主とともに並ぶものとされてます」
オウが畏まって答えた。
だが、あの顔は。
間違いない。
「シャルブ……」
俺の前世の名だ。
「な、なぜ、その禁忌の名を! 」
オウが驚いてる。
「いや、昔、ちょっと」
それしか言えない。
なぜ、ここにそれがあるのか。
「何なの? ダーリン? 」
横で人魚姫が胸を擦りつけて来るので台無しになった。
「いや、何でも無いよ」
もうちょいで乳首が見える。
そんな擦り付け方をするので、オウさんも顔を伏せた。
台無し。
まあ、誤魔化せたから良いか。
 




