第四十九部 第三章 天候
「なるほど、姿は隠蔽しているようですね。面白い。この孔明が我が君に力を見せる時が来たようだ」
孔明が胸を張るとずずいと船首に向った。
自信満々だ。
流石は孔明。
「おおお、孔明が動くか」
俺が感動して見た。
「むう、何をやる気だ」
親父も期待してるのが分かる。
何と言っても諸葛亮。
偽物でも孔明なのだ。
只者ではあるまい。
「はははははは、恐らく、姿は隠蔽してても、空を飛んでマッハで衝撃波を与えてる事からして、こちらの船に向って何かが飛んできているのは分かる。それゆえ対策は一つです」
孔明が両手を合わせて胸の中央で堅く握った。
「対策とは? 」
「嵐を起こすのです」
孔明が手を合わせると同時に凄まじい黒雲が湧き上がり、暴風が吹き始めて、豪雨が始った。
「ははははははは、この嵐の中、攻撃が出来るかな? 」
孔明が高らかに叫んだ。
凄まじい嵐だ。
超強力な台風レベルだ。
馬鹿じゃねーのか?
本当に馬鹿じゃねーのか?
本当に孔明って名乗って良いのか?
本物の孔明に怒られるぞ!
確かに、敵の攻撃は無くなったが、船が沈みそうなくらい荒れた海で激しく上下に揺れている。
「お前、沈むじゃねーか! 」
俺が呆れて叫んだ。
「大丈夫です。この船は御母堂対策なのか、沈まない設計になっておりまして、船は大丈夫です。ただ、甲板に居るとヤバイかもしれません」
孔明が笑顔で答えた。
「馬鹿なの? 馬鹿なの? 」
あふれるような波で皆が海に攫われそうになるのをムラサキが金色のイバラで片っ端から捕まえて格納庫に放り込んでる。
「おやおや、こういう時こそ、動かざること山の如しですよ」
孔明が笑った。
そして、そのまま海に攫われていく。
大きな波の後、孔明の姿が消えていた。
「おおおおおおおおい! 波に呑まれたぞ? 」
俺が叫んだ。
「大丈夫。殺しても死にませんから」
ムラサキが笑った。
ひでえ。
ふと見ると、艦橋の中から窓を通して親父と国王達とカルロス一世がこちらをじっと見てる。
何で、そんなに早いんだよ。
もう、並みのベテラン兵士じゃないじゃねーか。
超ベテランだよ。
まあ、でも孔明が波に呑まれたので、次期に嵐も収まるか。
そんな風に思ってた時が私にもありました。
次に特大の波が来て、俺も呑まれました。
やばい、この波じゃ泳げない。
くくくっ、こんな所で終わりかよ。
ぐはっ。
海の中で、閉じていた口から空気が出た。
駄目だ。
沈む。
そのまま意識が遠のいた。




