第六部 第五章 クニヒト大佐
「ありがとう助かったよ。ゲロじゃなかった、えーと、クニヒト少佐じゃないやシ〇ア少佐なのか? 」
俺がすまなさそうに、俺達と並んで飛ぶ、赤い甲冑を着たワイバーンに乗ったクニヒト少佐に声をかけた。
「私はシ〇ア大佐だ」
シ〇アであるクニヒト少佐が答えた。
「あれ? まだ洗脳解けてない? 」
「救世主が大佐だったんで、クニヒトも少佐から大佐に昇進したの」
俺の前で大型のワイバーンを操るミヤビ王女が教えてくれた。
「え? そうなの? 」
軽いっ、出世って本来功績がともなうだろうに。
まあ、昔の俺も人の事言えないが。
「そうなると中尉から一気に少佐を経て大佐か。凄いじゃないか」
と言いつつもいろいろおっ被せてるし、このくらいの出世は当たり前だよな。
シ〇アことクニヒト大佐は無言だ。
「その、なんだ、いろいろおっ被せて悪かったな。助けてくれて本当にありがとう」
俺がシ〇アことクニヒト大佐に頭を下げた。
「気にするな。猛禽の恐ろしさは私も身で味わった」
シ〇アことクニヒト大佐がほろ苦そうな顔をした。
やばい、池田〇一さんの声なんで、すげぇしみじみ感じるわ。
しかも、我が身だと?
「やっぱり、救世主役に選ばれたから、襲われたのか」
俺が言いながら、今回の件で猛禽の怖さを知って、本当に悪い事をしたと思った。
すまなかった。
「俺、パパになるんだ」
池田〇一さんの声でとんでもない事言ったぁぁぁぁぁぁぁ!
「はあああああああああ? 」
俺が驚いて変な声を出す。
「何度も、何度も襲撃されたのよ」
ミヤビ王女が悲しそうな顔をした。
「マジか! 」
アポリトが横で身震いした。
「ちょっと、何だか、信じられないんだけど」
ミツキが困惑した。
「一見は優しく普通に接してくるからね。それで、ある日突然豹変するのよ」
ミヤビ王女が恐ろしい顔でミツキに答えた。
「都市伝説かと思ってたわ」
ミツキが驚いた顔をした。
「いいえ。どちらかと言うと昔からの伝統行事みたいなものよ。勿論、私みたいにそういうのはちょっとって女の子もいるけど、まあ、昔から女性の二割から三割は猛禽かな」
「まあ、王家や大貴族は猛禽の割合が、もっとずっと多いですけどね」
アオイが答えた。
「先先代の国王なんか、貴族が開く誕生パーティを毎年やって貰ってて、十五歳までは普通の誕生パーティーだったの。でも、十六歳の誕生日に今まで仲の良かった貴族の女性達が豹変して、いきなり先先代国王は十七歳で十八人の嫁を娶る事になったわ。つまり、安心させてぐっと食いに来るのよね」
ミヤビ王女が真剣な顔だ。
「伝統行事ってなんだ? 」
聞いてて呆れ果てた。
「もともと、聖樹様はこの星が駄目になり、人が減り過ぎたのを防ぐために昔の神族がお作りになったの。だから、聖樹様からしたら、これは良い事なの。子供が増えるから」
ミヤビ王女が困ったような顔をした。
「おかしいでしょ? 」
俺が答える。
聖樹様の少子化対策ですか。
めまいがする。
「聖樹様からしたら、おかしくない事になっちゃうの。滅びかけたこちらの人間を復活させる為だから。基本が産めや増やせやだし。それと、多分、貴方のスキル逃亡は全部使えないわよ。聖樹様が逃げるのを手伝わないから」
「はああああああああああああああ? 」
なんだよ、その日本の戦前の標語みたいなやつ。
それより、スキルで逃げれないのか。
さっきのゾンビの時使わなくて良かった。
「あー、と言う事は彼女は大丈夫なのかな? 」
目がキョドった感じでアポリトがミヤビ王女を見た。
「大丈夫よ、猛禽なら婚約して、これだけ時間が経てば、普通なら一人くらい産んでるし」
アオイが答えた。
「いやいや、彼女、俺のこと避けてたし」
「いえ、猛禽にはそんなの関係無いわ」
アオイが怖い顔で言った。
「こわっ! 何なの? こわっ! 」
あのアポリトが身震いしてる。
ヤバイな。
このままいるとアポリトまで変になっちゃう。
あ、変になっちゃうと言えばクニヒト大佐もやばいか。
「なあ、シ〇アことクニヒト大佐。 もしよかったら、お前も一緒に来るか? 他所の国なら結婚しても一日三回なんて言わないみたいだし、このままだと、もっと猛禽に襲われてしまう」
俺が心配そうに聞いた。
「大丈夫、私はもう立たないから」
シ〇アことクニヒト大佐が少し悲しそうに答えた。
お前、池田〇一さんの声でなんてことを!
「え? 立たなくなっちゃったの? 」
俺が聞いたらミヤビ王女が目を逸らした。
知ってたんかい!
こ、怖すぎる。