第四十七部 第七章 アオイとミツキ
結局、料理はファウロスに先に出して貰うことになった。
さらに悪い事に、試食は皆ですることになった。
テーラのサンシュ一世国王とウラカ第一王妃とマリナ第二王妃とフレイタス公爵とペドロ王太子も食べるのだ。
眩暈が止まらない。
テーラ王家毒殺事件になっちゃう。
早速、その場をとりつくろって、アオイとミツキのいるオープンキッチンに向った。
アオイもミツキも満面の笑みだ。
「どうだった? 」
ミツキが笑う。
「いや、ガチの料理だ。特上の味みたい」
声が震えてしまう。
「なるほど、これは良い勝負になりそうですね」
アオイが笑顔なのが辛い。
「ゾンビじゃ無くて新鮮な魚を用意してるみたいだ」
俺がオロオロと本音で話してしまった。
「やっぱりね。テーラは魚が美味いらしいから、そう来ると思ったんだ。でも、安心して。私達も特上で究極の魚を用意したから」
ミツキが笑顔で二つのクーラーボックスを出した。
親父も気になってるのか、見に来た。
「見て、ワイバーン達に聞いたんだけど、これが美味いらしいのよ」
ミツキが言って、クーラーの蓋を開けた。
なぜ、ワイバーンに聞いたんだろう。
普通に人間に聞くだろ?
蓋を開けると、ハゼをさらにグロくしたような四つ足の不気味な魚がいた。
しかも、俺を見るときょきょきょきょきょきょって鳴いた。
魚なのか?
これ、魚なのか?
「ワイバーンが言うには、たまに、海から上がって岩の上に居たりするんだって、それを生け捕りにして貰って来たの」
何故、ワイバーンに。
しかも、岩の上?
魚って岩の上に登れたっけ?
何の為に、俺はカザンザキスさんに専門の漁師さんや市場の人を一緒に紹介して貰ったのか……。
横にカザンザキスさんとかアポリトやヨシアキ大佐とかまで来た。
カザンザキスさんの凄い顔が見てられない。
「もう一つあります。これはサプライズですよ」
アオイが凄い笑顔でクーラーの蓋をあけた。
人面魚がいた。
「何だお前、ふざけんなよっ! 」
人面魚が叫ぶ。
アオイが慌てて、秘密にする為にいたずらっぽく蓋を閉じて、シーって感じで俺にやった。
可愛いけど、どうしょう。
「後でドラゴネット達を褒めてやってください。彼女達が旦那様の為に、もう本当に本当に滅多に取れない人面魚を取って来てくれたんです」
アオイの笑顔がまぶしい。
今度はワイバーンじゃなくてドラゴネットかよ。
何故、人間に聞かない?
滅多に取れないだろうけど、食えるのか?
カザンザキスさんが紹介してくれたのはテーラで一番の仲買人さんらしいのに。
人間の魚市場の人の知恵はどこいったんだよ。
特別に紹介して貰ったんだぞ。
しかし、まさかアオイとミツキを貶すわけにもいかず、止めるのも不可能なので、ふらふらとオープンキッチンを離れた。
まずい。
一撃必殺を追求しすぎたか。
もはや、逃げる事もかなわない。
進退窮まった。




