第四十七部 第六章 綺麗なファウロス
「あれから、いろいろあったんだ」
お洒落な男……ファウロスが優しい笑顔で笑った。
あり過ぎだろぉぉぉぉぉ!
何だよ、その姿はいろいろありすぎじゃねーか!
お前はばっちい服着て、路地裏でゾンビと一緒に残飯あさるような男だったはず。
そんなお前は何処へ行ったんだ。
こんなのファウロスじゃねぇぇぇぇぇ!
「ヴァンパイアとしてもゾンビとしても、まず恥ずかしくない身のこなしと清潔感、そこからやり直したんだ」
ファウロスが良い笑顔だ。
「ふむ、 男子、三日会わざれば刮目して見よだな」
横で親父が意味深に笑った。
ふざけんじゃねー。
こんなの呉の呂蒙もびっくりだよ。
「全部見直したんだよ。まずは清潔感、そして衛生、さらに進んで鮮度だな。勿論、熟成も忘れてはいけないが、何よりもまな板など常に滅菌して食中毒を根絶し、お客様に失礼と不快な事が無いようにする事などだ」
ファウロスが爽やかに話す。
何ですと。
ゾンビ食材とか、まさか使わないのか?
「はははは、やっぱりびっくりしてるな。そうだよ、昔は変な食材を使って恥ずかしい限りだ」
ファウロスが照れくさそうだ。
「見てくれ、この魚を」
ファウロスが鮮度の良い目の濁っていない新鮮な魚を出した。
「専門の漁師に血抜きして貰った、こちらの特上の魚だ。刺身にしたら王族でも震えるような美味さがある。それを君の故国のヤマトの特選醤油と新鮮なわさびを使って、まずは刺身盛りを食べてもらいたい」
ファウロスの目が真剣だ。
まずい、ガチの料理だ。
本物の料理だ。
「後。一部の魚からわずかしか取れない、極上のエラの近くのコリッとした旨みを残したギリギリのとろけ具合を味わってもらう煮付けと、特上のアラの血抜きを徹底的に行って、旨みだけを引き出したものをベースにしたスープだ」
ファロウスが意味不明な言葉を話している。
何だ、これは?
何があったのだ?
「あ、あの、試食を撃破って……」
俺がオロオロと聞いた。
「え? 撃破? 」
「ああ、すいません。出した後に気が付いたんですが、高揚しすぎちゃって、美味で轟沈って書けばよかったですね。ちょっと、料理勝負と言うので表現が過激でした」
ロウが屈託のない笑顔をした。
あんぎゃーーーー!
一撃必殺料理をご用意してしまった。
「だからさ……、俺の……いや、俺達の料理を味わってほしいんだ。グリルとグリラの料理の兄弟神さんにも鍛えられたおかげて、俺達は変わったんだ。俺達の本気の料理を味わってほしい」
ファロウスの目が真剣だ。
「えええ」
「だから、先に出させて欲しいんだ。本当に馬鹿な底辺の人間で終わるはずが、君の応援でどれほどの人間に俺がなったか、ライバルと言ってくれた君に見てもらいたいんだ」
ファウロスが照れくさそうに俺に話す。
本気だ。
本気で綺麗なファウロスになりやがった。
綺麗なジャイア〇も驚きだ。




