第四十七部 第二章 ゾンビ・ホッタ
「ゾンビ・ホッタだと? 」
俺が呻く。
まさか、俺が<終末の子>などと言う雑用のカスの仕事に手間を取られているうちに、いつのまにかファウロスがここまで力をつけているとは。
<終末の子>なんてウンコの子なんか早く辞めてしまわないと。
「おい、また、口に出してるぞ」
カルロス一世が横で肩を落とす樹老人を見て教えてくれた。
しまった。
だが、本音だしな。
軽空母が止まってると、ゾンビ・ホッタの旗を立てた食べる場所もある料理船が近づいてくる。
「ああ、俺がやりたかった船上レストランかよ! 」
俺が悔しくて泣きたくなる。
くそう、ファウロスはやる。
やる男だ。
方向がずれてるから失敗してるだけだ。
人件費タダのゾンビスーパーとか新機軸は侮れない。
「驚いたな」
アポリトがそれを見て感動してる。
いろいろとあり、味方としても敵としても殺しあった事もあるので、より感慨深いのだろう。
「辺りを見るとあちこちにゾンビ・ホッタの船がある。成功しやがった」
ちょっと悔しげに俺が言いながらも嬉しかったりする。
「あいつがなぁ」
横でカルロス一世が驚いたような顔をしている。
昔は部下だったわけだし、これまた感慨深いのだろう。
そこへ、高速船がこちらに向かってくる。
勿論、ゾンビ・ホッタの旗を立てている。
「おや、誰か来たぞ」
アポリトが高速船を指差した。
煌びやかに金箔で装飾された高速船が軽空母の近くに来ると、豪奢な貴族のような煌びやかな服を着た男が一礼した。
「お久しぶりでございます」
その男は間違いない、ファウロスと一緒に居た異教のロウだ。
「おおお、ロウさんじゃないか」
俺が親しげに声をかけた。
「覚えていただいたとは光栄です」
ロウが嬉しそうに一礼した。
「俺は覚えてなかったのに」
横で和真が小声でグチグチ言った。
「おめでとう。ライバルとして嬉しいよ。ファウロスに伝えておいてほしい」
俺がロウに笑顔で答えた。
「いえいえ、ライバルだからこそです」
ロウが真剣な目でこちらを見た。
「と言うと? 」
「主はライバルとして料理勝負をしたいと申しております」
ロウが言うと、甲板にいる事情を知ってる連中が一斉にブーって吹いた。
「なるほど、機は熟したと言う事か」
「そのとおりです」
俺とロウがごうごうと燃える。
「よし、やろう。勝負だ」
俺が深く頷いて答えた。
カルロス一世とかヨシアキ大佐とかがぶんぶん首を振ったが無視した。
これこそ本当のライバルとの勝負だ!
やる気が止まらない。




